表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
味方を殺した罪で事実上追放された私は、死んだと見せかけて旅に出ることにしました 〜生きているとバレて戻ってくるよう命令されてももう遅いです〜  作者: 横浜あおば
第4章 旧連邦圏の国

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/86

第69話 少女の覚悟

「カタリナさん!」

「カタリナ……!」


 基地の管制塔に二人の悲鳴が重なる。


 カタリナが落ちた。


 この距離からでも分かる。彼女はもう助からないと。

 やはり、カタリナ一人で勝てる相手では無かったのだ。

 美空みくは茫然となりながらも、何とか冷静さを保ち次に取るべき行動を考える。


「こうなった以上は、ヴィーカちゃんは私が守らないとですね。カタリナさんは、そのために一人で立ち向かったのですから……」


 彼女が無謀な戦いに挑んだのは、まだ幼いヴィーカを死なせないためだ。

 ならば、その遺志は尊重せねばなるまい。


「ヴィーカちゃん」


 向き直った美空は、ヴィーカの両肩に手を置いて目を見つめる。


「あの敵は、私が全て殲滅します。だから、ヴィーカちゃんはここで待っていてください」


 自分なら、あの程度の無人機はいくら数が多かろうが容易に撃滅できる。

 

 カタリナの制止を無視してでも、最初からこうしていれば良かったのだ。

 これは、ヴィーカに対してのせめてもの贖罪。もちろん許してもらえるとは思っていないし、許されなくて構わない。


 しかし、ヴィーカはゆっくりと顔を上げると首を左右に振った。


「ううん、ジェーブシカは戦わなくていいんだよ。カタリナはこの国を守るのが仕事で、それが務めだから」

「それは私もよく理解しています。ですが、カタリナさんはもういません。ならば、私がヴィーカちゃんを守ってあげなければ……」


 その言葉を受け、ヴィーカが再び首をふるふると動かす。


「違う、ジェーブシカはずっと間違ってる。わたしもカタリナと同じ、この国を守るのが仕事。だから、守られる立場じゃないんだよ」

「っ……」


 ヴィーカから向けられた目に、美空はハッとした。

 十三歳の時からずっと護衛隊で戦ってきた自分と、今のヴィーカの姿が重なって見えたから。


 そして、少女の真っ直ぐで真剣な眼差しには、軍人としてのプライドと覚悟が込められていて。


「わたしは大丈夫だよ。……ジェーブシカ、ここから動かないでね」

「ま、待って、ください…………」


 止めなければいけない。そう分かっているのに。

 管制室を出て行こうとするヴィーカを止める声は、ほとんど音にならなかった。




 バタンと扉が閉まり、管制塔に一人取り残される。


 心理読解魔法が使えない美空にも分かる。

 ヴィーカは最終国土防衛装置を動かそうとしている。命と引き換えに。


 今から追いかければきっとまだ間に合う。

 ここから動かないでと言われたが、そんなの関係ない。

 とにかく、自分の目の前でこれ以上の犠牲を出したくない。


 駆け出した美空は、扉に手をかける。

 だが、なぜか扉が開かない。


「まさか、ヴィーカちゃんは鍵を?」


 いくら押そうが引こうが、施錠された扉はびくとも動かない。

 早くここを出なければいけないのに。

 焦りだけが募っていく。


 やがて、全力を振り絞って抵抗を続けていた美空は、脱力したようにその場に座り込んだ。

 そして、悔しさに表情を歪めながらぽつりと呟いた。


「大切なものを失うのは、もう嫌です……」


 直後、全身が震えるような衝撃波が美空を襲う。

 その数秒後、基地のすぐそばまで接近していた連邦軍の無人機は一斉に推力を失い地上に墜落した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=550432391&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ