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味方を殺した罪で事実上追放された私は、死んだと見せかけて旅に出ることにしました 〜生きているとバレて戻ってくるよう命令されてももう遅いです〜  作者: 横浜あおば
第4章 旧連邦圏の国

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第68話 死んでほしくない

「でもどうして、マルファは連邦側に与しているんだい?」


 これは敵であるディクタテューラ連邦軍のドローンだ。いくらマルファが理系の秀才だったとしても、向こう側に関わっているというのはおかしい。

 カタリナが疑問を口にすると、彼女は数秒の沈黙の後にぽつりと答えた。


「……私ね、国立大学に進学したでしょ? その時に軍の人に言われたの。『技術者として連邦軍に忍び込んで、ユークスタンの最終国土防衛装置が最強であると示せ』って」


 まさか。マルファがスパイとして敵の無人機開発に参加していたなんて。


 驚きを隠せないカタリナだったが、今は悠長に話している場合ではない。

 せっかく彼女が会話プログラムを仕込んでくれたのだ。現状を打開する方法を模索しなければ。


「それはつまり、このドローンにこちらが有利になる脆弱性を残しているってことかい?」

「うん。もう少し正確に言えば、最終国土防衛装置だけが通用するように設計したって感じかな」

「それ以外に方法は無いのかい? それだけは絶対に使いたくないんだ」

「残念だけど、私が作った穴はそれだけ。もちろん誰も気付いていないような欠陥が無いとは言い切れないけど、戦闘しながら見つけるのは難しいと思うよ」

「そうか……」


 やはり最終国土防衛装置を発動するしかないのか。

 しかし、それはヴィーカの殺すことと同義だ。


 自分に、その決断が下せるのか……?


「弱いな、ボクは……」


 呟き、カタリナは頭を左右に振った。


 ヴィーカの未来を奪うなんて、そんなことは出来ない。

 いつかこんな日が来るかもしれないと、理解していたはずなのに。肝心なところで冷酷になれなかった。


「優しいね、カタリナは」

「え?」


 突然投げかけられた言葉に、首を傾げるカタリナ。

 すると、マルファは「ふふっ」と笑ってから穏やかな柔らかい口調で続けた。


「確かにそれは、軍人の判断としては間違ってるかもしれない。でも、一人の人間としてはそれが正しいって私は思うなぁ。だって、会ったこともない誰かのためなんかより、目の前にいる大好きな人のために行動する方が普通でしょ?」


 その考え方はいかにも彼女らしいものだった。

 昔から変わらない、マルファの温かい笑顔がカタリナの目に浮かぶ。


 それから、マルファは真剣な声音で告げた。


「だからこそ、私も言うよ。私はカタリナに死んでほしくない。……お願い、早く最終国土防衛装置を使って」

「それは……」

「分かってる。酷いことを言ってるなって、自分でも思う。でもね、私はカタリナに、また会いたいんだよ……」


 また会いたい。

 彼女と離れ離れになってしまってから、カタリナはずっと淋しかった。


 それと同じくらい。いや、それ以上に。マルファもまた淋しい思いをしていた。それも、敵だらけの遠い異国の地で。


 心理読解魔法のせいで、その苦しさが痛いほど分かってしまう。

 プログラム越しでも伝わってくる彼女の心情に、カタリナの胸は今にも張り裂けそうだ。


 どうする。どうすればいい。

 ボクは、何を選べばいい……?


 究極の選択を迫られ、心臓の鼓動が早まっていく。

 考えれば考えるほど混乱し、頭が真っ白になる。


 だが、それが命取りだった。


「カタリナ、避けて……!」


 マルファの叫び声が耳に届き、思考が目の前の戦場に引き戻される。

 直後。


「うああっ!」


 全身に激しい衝撃と痛みが走った。


 身体が熱い。力が入らない。魔法も、維持出来ない……。


 急激に高度を下げながら、身体の状態を確認する。

 そこでようやく、自分の身に何が起きたのかを把握した。


 カタリナは背後から機銃で撃ち抜かれたのだ。

 マルファと通じ合わせてくれた無人機ごと。


 でも、あのドローンは確か同士討ちをしないんじゃなかったのか?

 そんな疑問が頭に浮かんだが、すぐに納得のいく答えを見つける。


「ああ、そうか。さすが、マルファの作った人工知能だな……」


 博学で才能溢れる彼女なら、敵の隙を見逃さないようなプログラムを余裕で組めるだろう。




「ごめんマルファ。最後に話せて、本当に嬉しかった…………」


 呟いたカタリナは、微笑みを浮かべたまま海面へと落下。

 そのまま深い海の底へと沈んでいった。

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