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味方を殺した罪で事実上追放された私は、死んだと見せかけて旅に出ることにしました 〜生きているとバレて戻ってくるよう命令されてももう遅いです〜  作者: 横浜あおば
第4章 旧連邦圏の国

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第48話 無人の前線基地

 滑走路を横目に、美空みくはこの基地の関係者と思われる女性の後ろをついていく。


「ねえお嬢ちゃん? この辺の人には見えないけど、どこから来たんだい?」


 低めの美しい声で問いかける女性に、美空は簡潔に答える。


「皇国です」

「皇国というと……。東の果ての島国だったかな? 二十五年の人生の中で、皇国の娘に会うのは初めてだよ」


 今の発言から推測するに、どうやら彼女は二十五歳らしい。


 女性の髪はショートヘアで、毛先が軽くはねている。そして身体は細身で、かなり鍛えられているように感じられる。もしかすると戦闘機のパイロットだったりするのだろうか。


「あの、あなたは?」


 美空が首を傾げると、女性は「ああ、自己紹介がまだだったね」とはにかんでから口を開いた。


「ボクはユークスタン共和国空軍魔法部隊のカタリナだ。空軍の人間ではあるけど、戦闘機には乗ったことすらないよ」

「カタリナさん……。魔法部隊所属ということは、魔法能力者なのですか?」

「ああそうだよ。それで、君の名前は?」


 名前、名前……。

 その質問に、美空は一瞬戸惑ってしまった。

 本名を名乗れば指名手配犯であることがバレる。何か適当に偽名を答えなければ。


「えっと、私は……」


 しかし、偽名なんてそう咄嗟に考え付くものでもない。

 不自然に言葉に詰まる美空。


 その様子を見て、カタリナは前屈みになってぐっと顔を近づけてきた。

 数センチの距離で見つめられ、目が泳いでしまう。


「何か名乗れない事情でもあるのかい?」


 小さく囁いた彼女に対し、美空は黙ることしかできない。


 事情があると答えたら、それこそ怪しすぎる。

 だが、今更名乗ったとしてもなぜ最初から答えなかったのかと怪しまれてしまうだろう。

 この状況、完全な詰みだ。


 美空はカタリナの視線から逃れるように目を逸らす。

 すると彼女は、苦笑いを浮かべながら屈んでいた姿勢を戻した。


「いいよ別に。可愛い娘を困らせるのはボクの趣味じゃないからね。でも、呼び名が無いのは何かと不便だし、『コーシチカ』って呼んでもいい?」

「ええ、構いませんが」


 どんな意味かは知らないが、一時的なあだ名ならどう呼ばれようが問題は無い。


「よし、じゃあコーシチカ。早速だけど、君に会ってほしい人がいるんだ。こっちだよ」

「中に誰かいるんですか?」


 基地の敷地内に入ってからは誰ともすれ違っていなかったので、てっきりカタリナしかいないのかと思っていたが、まだ建物内に人がいたようだ。


 カタリナが扉を開け、食堂のような施設へと入る。

 続けて美空も中に入ると、そこには軍服に身を包んだ八歳ほどの少女の姿があった。

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