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39話目

 静かな夜、武器を握り締めて立ち上がり俺は叫んだ。この状況を切り開く、技の名前を!


 ハイクラッシュ!


 俺は両手に持った鈍器、討ち入りハンマーDXで大きく振りかぶり力を込めた強力な一撃で”騎士団本部の記念館の窓”をぶち破った。破った窓から即座に侵入、ミスリル製のプレートアーマーを俺のアイテムブラックホールに押し込んだ。

 騎士団らしき集団がすぐにやってきたがもう遅い。


魔法カード【瞬移(テレポート)】使用、GO、バルドシークへ!


俺は魔法カード【瞬移】を使用しバルドシーク村に瞬間移動した、さらば首都よ、もう多分戻ってこれない。

 バルドシーク村に着いても安心はできない、なぜならどういう連絡体制なのか分からないがこの村の憲兵が俺を捕らえようと追いかけてくるのだ。

 しかし俺を捕らえるのは至難の業、ダッシュスキルを使用すれば彼らは俺に追いつくことはできない。更に俺は逃走技術スキルがある、逃走という行為において様々な補正が入るので村から逃亡することにおいて何一つ難関などはない!

 憲兵は村から遠ざかる俺を完全に見失い無事に逃走完了、後は釜のある広場に野宿してイザックに渡すだけだ。朝が楽しみだな、これで皆俺の見る目が変わるだろう、役に立つ男だと手のひらをクルッと返すことだろう、今から笑いが止まらないな。



 説明しよう、俺のプランDは騎士団本部の記念館にあるミスリルプレートアーマーを盗みミスリルをリサイクルするという犯罪、じゃない裏技だ。

 思いついたのは皆と別れた後、どうにかして記念館にあるミスリルプレートアーマー盗めないかなと考えていたときだ。盗む発想は会議中に出ていたが盗む手段が思い浮かばなかったし、騎士団メンバーの多くは犯罪臭のする行動を嫌っている、不興を買いそうなので言わなかった。

 でも俺は今回の盗みを行うことにさほど抵抗はなかった、現世では生死に関わるほど困ったことは無いので万引き一つしたことはないが、大多数の人の命が絡むなら話は別だ。今回は特に他人の命を救うためだ、どこかに神様がいたとしてもきっと許してくれるでしょう。


 というわけで盗むプランを思案、そこであの時ミスリルプレートアーマーの近くで直感か違和感察知スキルが発動したことを思い出し、アレは何だったんだろうと今更ながらに考えた。

 その正体を探るためもう一度記念館に行きミスリルプレートアーマーを観察していたところ、ついに違和感の正体に気づいた。

 他の場所に比べてこの場所だけ光が多く入ってきている、ガラスがこの一枚だけ違うのだ。

 記念館のガラスを鑑定スキルで調べたところこの1枚だけ物理耐性がかかっていないことが判明、そういえば以前別のサーバーで情報NPCサンドラの家の窓を破壊して侵入したプレイヤーがいたことを思い出す。

 強度が同程度ならばいけるんじゃないか?サンドラの家の窓を調べた後、俺の作戦は決まった。

 誰かに頼んでもいいかなとも思ったが、汚れ仕事は俺の仕事と判断し実行し、成功を収めたわけだ。



《285日目(1月11日)午前7時45分 残LP16》

 皆の見る目が変わった気がする、良い方向、一部は悪い方向に。大半のメンバーからは多大なる賞賛を受けたが、一部メンバーから一応賞賛の言葉はあったものの、なんとも言えないような、そう、極めて危ない人物を見るような表情で見られた、何故だ。


 何はともあれ、花瓶製作に必要なミスリルが揃ったのでさっそく作業にかかってもらい、2週間後無事完成した。

 さて、あとはラストダンジョンをクリアするだけだ、頼んだぜ戦闘員の皆。俺は護衛を兼ねてラストダンジョン前まで一緒に行くことになっている、せめてラストダンジョンの扉が開くところくらいは見たいからね。


《299日目(1月25日)午前11時10分 残LP2》

 ダンジョン:黒き羊の決闘場

 制限人数:10人

 制限時間:なし

 クリア条件:デスバフォメットの討伐

 特殊事項:特定アイテム3種を祭壇に捧げ、光溢れる喜びの歌を歌うことで扉が開く

 現在の参加パーティー:0組


 デスバフォメット……ねぇ、これも何かの因縁か?何故この世界は俺を的確に殺そうとする存在ばかり出てくるのか。

 そんな俺の心情を誰も気にすることなく、ラストダンジョンである黒き羊の決闘場の入り口前の祭壇に3つのアイテム、ミスリル製の国宝級花瓶、ラスピラズリ製の獅子の像、大吟醸悪魔殺しを置いて、ショーネさんが光溢れる喜びの歌を歌い終わったところでで入り口が開いた。

 今回挑戦するのはベストメンバーではないパーティーだ。図書館のモンスター図鑑にもコイツの情報は載っていなかったため情報収集が必要と判断し、デスペナ回避を所持しているメンバーに挑戦してもらい、情報を集めてからベストメンバーが挑戦するという流れだ。俺は今回参加しない、強くないし、仮にアレが中にいたとしても会いたくないし。


 情報収集パーティーが中に入ったことを確認し、首都の復活ポイントに集団転移魔法で帰宅。この情報収集パーティーもけっこう豪華なメンバーなので案外倒せるかもしれない、情報収集するのは構わんが、倒してしまっても構わんのだろう?みたいな感じで倒してくれるとすごいありがたいんだがなぁ。


 そんな願いは叶うことなく皆復活ポイントに帰ってきた。さて、ボスはどんな感じでしたか?


「あー、まずボスまでは雑魚モンスターもいなかったぜ、扉を開けるとコロシアムみたいな広い会場になっててな。全員が入ると黒い羊が召喚されて闘いが始まったんだ」


 雑魚モンスターは無しか、あと予想通り黒い羊がラスボスなんだな、意表をついてまったく別のモンスターが来る説はあったがハズレたな。


「それで敵の武器だが大きな鎌だったな、タンク役でも通常攻撃一発で3割くらいHPは減るぜ。でも本気でやばいのは魔法だな、黒い雷の全体攻撃はマジックバリア張らないと後衛が即死するくらい強烈なのが来たぜ。あと黒い炎は単体攻撃だが、食らうときに爆発して近くにいるとまとめて燃えるから注意だな、連鎖するほどダメージがでかくなっていくと思う。黒い氷は全体攻撃だが威力は低い、その代わり持続時間が長くて視界制限もかかるんだが、羊は関係ないみたいで鎌で攻撃してくる。あとメテオストライクみたいな魔法も使ってきたな、空から黒い岩が降ってきた、軌道は読みやすいが当たったら死ぬぞ、ありゃ」


 魔法中心なのか、羊のくせに。


「……さて、だいたいこんなところだが何か聞きたいところはあるか?」


 ふむ、とりあえず強いことは分かった。にしても黒い羊でデスバフォメットか……まさか、まさかなぁ。一応聞いてみるか、名前も一緒だったんだ。もしかしてその羊、最初普通の白い羊っぽいけど雄たけび上げて黒くなったりしないよね?2本足で立ったあと毛の中から鎌出したりしてないよね?


「ん、ああ、そうだったな、あれ、そのこと言ったか俺?」


 ……マジで?誰か後頭部とか見てない?毛の中に光ってる角とかなかったか?


「……誰も見ちゃいねぇな、何か関係あるのか?」


 俺の推測だけど、もしあればその光ってる小さな角が力の源だ。その角をへし折れば弱体化するぞ。


「推測?確定の情報じゃないのか?どこの情報だよそれ」


 うーん、なんて表現したらいいのか分からないけど、予感というか、知ってるというか。本当は前世で見たからなんだが、そんな発言したら頭おかしい人だと思われてしまうので言えない。


「もう一回情報収集出すか、その内容だけならTELLで伝えてもらえばいいしな。どうだ?」


 それで頼む、当たってればラッキー程度だけど。こんな偶然本当にあっていいのかな、でも今までそんな偶然が続いているんだよなぁ。今回も頼むぜ、俺の前世の記憶さんよぉ。




《299日目(1月25日)午後3時20分 残LP2》

 情報収集2回目、全滅したら連絡が来る手筈になっている。連絡が入り、後頭部に魔法を使う前に光る小さな角を目視したとのこと。それは良い知らせだがこちらは今それどころではない、ベストメンバーのうちの一人がモンスターの強襲により死亡して街に戻ってしまったのだ。LPの都合上彼がラスボスに挑むのは不可能なので誰か代理が必要となった。幸い他の戦闘員も護衛のために来ているのですぐにメンバー交代できるのだが、何故かベストメンバーパーティーのリーダーの横綱さんは俺を指名した。冗談じゃなく本気らしい。理由を聞いてみると


「団長の情報でここまで来ることができたからな、最後くらいは一緒にと思ってな」


 後悔しないか?俺真面目に戦力にならんぞ。


「口には出さないけどこの状況を作ってくれたアンタに皆感謝してる。後悔なんてしないから最後まで付き合ってくれや」


 そこまで言われては仕方がない、腹くくって行くしかないか。

 本当の最後の大仕事、華麗に決めてやりますか。

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