リリィとよく似た背格好
心もお腹も満たされた二人はカフェを後にし、街中をゆっくりと歩いていた。
「リリィ嬢、次はどこへ?」
「次は、わたくしが懇意にさせていただいている『ヴァゴールの店』に行きますわ」
「ヴァゴール?」
「ええ。行ってみればどんな場所かはわかりますわ」
しばらく街並みを歩いていると、その名に似つかわしくないほど可愛らしい雰囲気の建物の前で、リリィは足を止めた。
クリーム色の外壁に、赤茶色のレンガ屋根。二階の窓には洒落たロートアイアンの飾りが取り付けられている。
店先にはプランターがずらりと並び、色とりどりの花が咲き誇っていた。その花々からは、日々丁寧に手入れされている様子がうかがえる。
カイゼルはその二階建ての建物を見上げ、心の中でつぶやいた。
(……雑貨屋か、なにかか?)
手慣れたようすでリリィはドアノブに手をかけ、店内に入っていく。
カイゼルも続いて足を踏み入れた瞬間——視界に飛び込んできたのは壁を埋め尽くすほどの器具、器具、器具たち。
「……トレーニング用品の店なのか!?」
思わず驚きの声を上げたカイゼルに、背を向けたままリリィは落ち着いた声で答える。
「ええ。外観で雑貨屋と勘違いする方が多いですが……こちらは、れっきとしたトレーニング用品のお店ですわ」
「——そういう策略だからな!」
突如、店の奥から朗々とした声が響き渡った。
「ガルド、ご機嫌よう」
リリィがそちらに向かって優雅に挨拶を交わし、美しくカーテシーをした。
「おう!リリィじゃねぇか。久しいな」
カイゼルの前方にはリリィの鍛え上げられた背筋が広がっている。声の主を確認するために彼はその場から三歩ほど横にずれた。
その動きでカイゼルは、ガルドと呼ばれた男の視界に入った。
「おっ?これはこれは、カイゼル殿下じゃないか!」
ガルドは目を見張り、興味津々な様子で身を乗り出した。
彼はリリィとよく似た背格好をしていた。
短く刈り込まれた明るめの茶髪に、大地の息吹をそのまま映したような緑の瞳。
彫りの深い顔立ちは精悍さを帯びているものの、口調は軽やかで笑みを浮かべれば豪胆さが一転して親しみやすさへと変わる。
リリィとガルドが並び立つ姿は、まるで双璧を思わせる光景だった。
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