核心をつく言葉
夕暮れ時の城下町はゆるやかな活気に包まれていた。
通りの向こうからは商人たちの売り声。すぐ近くでは、子供たちのはしゃぎ声が響いている。
リリィは手に持った薄手のショールを軽く揺らしながら、隣を歩くカイゼルをそっと流し目に見た。
彼は何かを言いたそうにしては、言葉を真剣に選んでいる——そんな沈黙が数歩分、続く。
彼の気持ちをほぐすように、リリィが口火を切った。
「カイゼル殿下、騒がしい姉で申し訳ありませんでしたわ」
「いや、その……幸せそうだったな。特に、姉上が」
アンネリーゼの姿を思い出し、カイゼルはふっと目元を和らげた。
ほんの一時の穏やかなやり取りのあと、彼は意を決したように話し始める。
「その……リリィ嬢に、聞きたいことがあるのだが」
彼の表情はわずかに引き締まっていたが、問いかける声には意外なほど落ち着きがあった。
「なんでも聞いていただいて結構ですわ」
「では……一年前、西門が破られたことを覚えているか?」
「ええ、国中が不安に包まれましたわね」
「そうだな。……あの時、俺も前線にいたんだ。自国の兵は倒れ、皆が絶望の淵に立たされていた。そんな時、大きな影が現れたんだ」
「……大きな影」
「そうだ。それは拳だけで敵兵を薙ぎ倒し、国の危機を救ったのだ」
「…………」
リリィはカイゼルの話を、小さく相槌を打ちながら聞いていた。
二人の間に、しばしの沈黙が訪れる。
「……俺はデビュタントで君の姿を見た瞬間、気づいたんだ」
カイゼルはあの夜の影を思い出すかのように遠くを見つめ——そして。
「……あの戦場に現れたのは——リリィ嬢、君なんじゃないか?」
核心をつく言葉をリリィは動揺する仕草さえ一切みせずに静かに聞いていた。
リリィはなんて答えるのでしょうか……
また次回!
毎日が筋曜日!




