第十二話 誘い
お久しぶりです。
これほどまでに意中の相手とのファーストコンタクトで好感触だったことはなかったため、今までにない自信が生まれてきたのであろう、この時の私は彼女を朝からデートに誘ったのだ。
「この後何か込み入った用事でもありますか」
「ないのだけれども、何か私に用かしら」
「二人で朝の白川郷でも回ってみませんか。とても綺麗なんですよ、特に日が出たばかりの高台からの景色は格別で……」
「それは気になるわ」
「行ってくれますか」
「もちろんいいわ。あなたともっとお話ししてみたいもの」
「よかったぁ……」と心の声が漏れたところで
「そんなに喜ぶところかしら、でもいいわ、あなたって本当に不思議ね」
「……」
本当は下心丸出しなんだろうけど、彼女には僕がそんな風に見えたらしい。それから適当に時間を決めて、僕たちは支度をして会うことになる。
「お待たせ」
階段から降りてきた彼女の素足は得も言われぬ美しさで、私の視線をくぎ付けにした。それに見入っている私をいぶかしがるように見つめる彼女は
「何を見ているのかしら、私の足がそんなに気になるの」という。それにとっさに答えようとしたが、嘘をつけない私は何も言えなくなってしまう。その態度に彼女は嫌な顔をせず、
「いいのよ」といったような顔をする。しかし、そんな彼女の余裕かつ、寛大な態度に屈することなく私は彼女の眼を見て
「確かに気になりはしましたが、気づかれてじろじろ見るほど僕はやましくないですよ」
「じゃあ、気づかれなければずっと見てたのかしら、さっきみたいに」この時僕はカッと赤くなって今にも逃げ出したいくらいに恥ずかしくなった。
「いいのよ。私がその程度で怒るような、相手を軽蔑するような女に見えるの、って言ってもさっき知り合ったばかりなのだから知るわけないわよね」
どんどんこの女のペースに巻き込まれていっている気がする。けどそれが不快なわけではなく、もっと飲み込まれて行きたいと思った。
今回は今までと違った書き方にしてみました。短くてごめんよ。ごめんやで




