それから 2
「リハビリ」という名目で武器商人ブルーのところにきている。
ブルーに頼めば、射撃の練習や試し撃ちなど、いつでもやらせてくれる。
「ミシェル、まだ無理しない方がいいよ。頼むから大人しくカルロさんの屋敷に戻って寝ていてくれないかなあ。ミシェルがここで射撃の練習していたなんてカルロさんにバレたら、僕が殺されるんだけど」
ブルーが困り顔でいう。
「まだちょっと痛いけれど、もう元気だし、退屈なんだもん。ボスは仕事中だし、バレないって」
ブルーをなだめ、銃を握りなおす。
まだ実弾を撃つのはちょっと無理かな。
しかし噂をすればなんとやらで。
ボスが青ざめた表情でやってきた。
「ミシェル。急にいなくならないでくれ」
おおっと。どうしてここにいるのがバレたのかな。
ボスはお仕事中のはずでは?
「ここで何をしていた?」
単なるリハビリです。エヘ。
「またこんなものを持って・・・」
ああ~、私のデザートイーグルCAL.357が・・・。
銃をボスに取り上げられてしまった。
「用心棒はもう、許さない」
ボスは私を見下ろしていった。
「ハイ。美人秘書として、ボスのおそばにいます!」
用心棒だろうが秘書だろうが、そばにいれば一緒だもんね!
私はニッコリ笑ってボスを見あげた。
「会社は、クビだ」
けれど、ボスは突き放すようにそういった。
・・・・クビ。
クビですか。そうですか。
この不況に突然解雇ですか。
鬼畜ですね。
・・・って、もうボスのそばにいられないってこと?
「外回りは危険だから、『秘書』はクビにする」
危険だからこそ、そばにいるのに。
ずっとボスのそばにいたいのに。
私はボスのシャツを握りしめていた。
「嫌。そばにいる」
ボスは小さくため息を落とした。
「クビにしたところでミシェルを野放しにすると、すぐ危険な事を始めるのはわかっている。ちょっと目を離した隙にすぐこれだ。・・・心配だからそばにはいてもらう」
ボスはそういって、私の頭に手を置いた。
???
そばにいてもいい。
でも用心棒はダメ。
美人秘書もクビ(もともと秘書業務なんてほとんどやってないけど)。
うーん。
どうすればいいんだろう?
うーん?
本格的に考えてみた。
「もしや、ストーカーしろ、と?」
ボスが呆れ顔になった。
「嫁になれ」
ボスがポツンといった。
嫁。
そうか、その手があったか!!
それならいつでも一緒にいられるし、ボス護り放題だもんね!
・・・って、およめさん・・・?
ボスのシャツを握りしめたまま、見あげる。
「頼むから、しばらく大人しくしていろ。ケガ人なんだから。それから、この前お前を撃った男を雇った奴等を何とかするまで、家を出ないでくれ」
「およめさん」
「うむ」
「ボスのおよめさん?」
「そうだ」
そういうと、ボスは顔を背けた。
おおお。
ボスの顔が赤い。
そのままボスはひょい、と私を抱き上げた。
「ブルー、邪魔したな。ミシェル、帰るぞ」
ボスのおよめさん。
すごくいい考えだ。
私はすごく嬉しくなって、ぎゅ、とボスに抱きついた。
そ れ か ら
ボスが嫁になれというので、嫁になってやった!
ロレンツィオは「嫌になったらいつでもかえっておいで」と、祝福?? してくれた。
お嫁になれば大人しくお家にいると思ったのかもしれないけれど、お生憎様。
リハビリのおかげで腕はだいぶ動くようになった。普通の射撃ならいける。ただ、反動が大きいライフルを使ったり、連射したりすると腕にすぐ痺れがきてしまう。でも、まあ、一撃で仕留めるから連射はあまり必要ないけれど。
ボスには内緒の話だけれど、ブルーやロレンツィオに相談したりして、警備の会社を立ち上げる準備をしている。用心棒は絶対にやるな、とボスはいうし、かといって私にできることで「合法的なこと」はあまりない。それでもボスを絶対に護ろうとしていきついた先が「警備」だった。
とりあえず、武道教師の老師のところで友達になった人を頼りに警備会社にもぐりこんでみた。が、そこで現実の警備会社のぬるさに腹をたて、今に至る。ブルーの所と提携し、裏情報のやりとり、防犯装置なども開発し、渋い顔をするロレンツィオもまきこんで話を進めている。
最近、ボスの部下のアレクが嗅ぎ付け、興味をもったのかやたらと首をつっこんでくる。単なる警備会社じゃなくて、ヘンテコな探偵事務所のようになってしまいそうでコワイ。そのうち転職するからヨロシク~とかいっている。こらまて。アレクはしっかりボスのお守りをしてろ。
・・・そんなわけで、今も愛するボス、じゃない、旦那様の「警備」をいろいろと画策しています・・・内緒でこっそりと!
完結しました。
読んでくださってどうもありがとうございました!