久しぶりのテストを受けます
「……え? 入らないか、って……」
俺は間抜けな声を漏らしたまま、男の顔を二度見した。
「冗談だろ? 俺は中学生だぞ。しかも勉強もできない、学校にも行ってないただの引きこもりだ」
「だから誘っているんだ。我々が今求めているのは、新たに発足する『アンダー18最高部隊』のメンバーだ。その最後の1ピースとなる、圧倒的な戦略を描く頭脳を探していた」
「あ? オッサン勘違いしてるようだから言っておくけど、俺は戦略なんて立てたこともねぇよ。俺が得意なのは、縛りの中に自由を見出すことだけだ。それに、戦略なんて将棋をやってるやつに頼むほうが適任だろ」
「最初は我々もその方向で考えていた。世界最高の頭脳と言われる現役最年少棋士、松村三段も誘ったさ。試験をやらせてみれば100点満点、文句のつけようがない結果だったよ。……だが、それは我々が求める人材が『ただの戦略家』だった場合の話だ。あいつが考えた戦略には、面白さの欠片もなかった」
「……戦略を立てるやつにお笑いセンスでも必要なのかよ?」
「私が言っている面白さは、そんなものではない」
「じゃあ何なんだよ、その面白さって」
「それは、実際に動く側の人間が『興奮するかどうか』だ」
「興奮って……。あのさ、もう一回言うけど、俺は未解決事件の謎を解いてただけだぞ? 正解かどうかもわからないのに、なんでそんなことしただけの俺を誘うんだよ」
「それはだな、君が解いた首吊り事件の内容が、実際の真相とほぼ一致していたからだ」
「……え?」
「それだけではない。君がこれまで解いてきた未解決事件のほとんどが、君の推理通りの結末だったんだよ」
「嘘つくなよ。あれはただの遊びで……」
「私は世界政府の人間だ。そんな嘘をつく意味がない」
「あー……本当に意味がわかんなくなってきた。もう帰っていい?」
「ズコーーッ! なんでそうなるんだよ!……わかった、せめてテストだけでも受けていってくれ」
「あー、さっき言ってたやつか。わかったよ、それさえやれば家に返してくれるんだな?」
「よし、こっちに来い」
男についていくと、そこには一台のワゴン車が停まっていた。
「なぁ、本当に誘拐じゃないんだろうな?」
「だから違うと言っているだろ」
男がスライドドアを開ける。
「乗れ」
車内には机と椅子、そして紙とペンが用意されていた。
「その椅子に座って、テストを解いてくれ」
はぁ、めんどくさい……適当に書いてさっさと帰るか。
配られたテストを見ると、問1から問10まであり、そのほとんどが一般的な常識問題だった。
当然、そんなものが解けるはずもない。問1から問9までを一応埋めはしたが、手応えはゼロ。おそらく全滅だろう。
そして、最後の問題に目が留まった。
『問10:メンバーは5人です。70個の戦略を立てましたが、誰一人としてその戦略に納得していません。あなたならどうしますか?』
ひとつだけ、異質な質問だった。
(なんだこれ……まぁ、とっとと書いて帰るか)
「おーい、終わったぞー」
「早いな、まだ10分しか経っていないぞ」
「うるさいな、ほとんどわかんなかったんだよ」
「そうか。結果はまた連絡する。今日はもう帰っていいぞ」
「うん、ありがと」
車から降りる。
「じゃあな」
「……じゃあ」
俺は「やっぱり後から誘拐されるんじゃないか」という恐怖に駆られ、逃げるように自宅へ走り出した。
ありがとうございました。
さぁテストの結果はどうなのか?
3話を楽しみに待っていてくれたら嬉しいです!!




