ゼロは、レイレイとの、リモート訓練が終わった後は会議にでます。
2本目です
こちらはゼロの視点に、なるのでよろしくお願いします!!
「じゃあな」
「じゃあな明日は遅れるなよー」
「わかってるよ」
レイレイとの模擬訓練が終わり、画面を映していたモニターの電源を落とす。
画面が真っ黒に落ちると、急に部屋の中が静かになった。
コンコン。
「ん? はーい」
「ゼロさん、そろそろ時間です」
扉の向こうから聞こえた部下の声に、ゼロはゆっくりと立ち上がった。
先ほどまでレイレイに見せていた軽快でフランクな表情は消え去り、その瞳には冷徹な光が宿っている。
「……あぁ、今行く」
ゼロが静かに歩き出すと、目の前の自動ドアが滑らかに開いた。
「ゼロ様、ご案内いたし——」
「いや、いい。いつもの部屋だろ?」
「は、はい。そうです」
案内しようとした部下を片手で制し、ゼロは一人で廊下の奥へと向かう。
突き当たりにある、一見すると何もない真っ白な壁の前で足を止めた。
「えっと……確か、このへんだったか……」
ゼロが壁の何もない空間へと手をかざすと、空間がわずかに歪み、青い光の認証スキャンが走る。
『——認証完了。コード:ゼロ』
電子音とともに、何もなかった壁が無音でスライドし、奥へと続く秘密の通路が姿を現した。
さらに少し歩くと、再び重厚な行き止まりにぶち当たる。
ゼロは壁面の隠しセキュリティカバーを押し開き、覗き込むようにして虹彩認証を行った。
『——認証完了。コード:ゼロ』
重々しい駆動音とともに扉が左右に開き、奥から階数ボタンの存在しない、特殊なエレベーターが姿を現した。
中に足を踏み入れ、少し待ってみるものの扉が閉まる気配はない。
「あ、そっか」
自分のド忘れに苦笑しながら、ゼロは壁面のセンサーに手をかざした。
『OK, ZERO. What floor do you want to go to?(ゼロ様、何階に行かれますか?)』
室内を満たすクリアなAI音声。
「"27, please."(27階をお願い)」
『OK, clear.(了解いたしました)』
返答と同時に滑らかにドアが閉まり、エレベーターは静かに、そして猛烈な速度で上層階へと押し上げられていった。
わずか2分ほどの出来事だった。通常ならもっと時間がかかる高層階への移動をあっという間に終え、重厚な電子音とともに扉が開く。
そこには、一人のスーツを着たスラッとした男が立っていた。
男は深く頭を下げる。
「ゼロ様、お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
男の案内に従い、静まり返った廊下を5分ほど歩いただろうか。
やがて、見上げるほど巨大な扉の前へと辿り着いた。だが、扉には取っ手も鍵穴も見当たらない。
スーツの男がはめていた白い手袋を脱ぎ、ドア横のパネルへ静かに手をかざす。
——ゴゴゴゴゴ……ッ!!
地鳴りのような重低音を響かせ、巨大な扉がゆっくりと開き始めた。
部屋の中に広がっていたのは、格式高い重厚な空間。
中央には巨大で高級感あふれる丸テーブルが鎮座し、用意された全六席のうち、すでに五つの席が埋まっていた。
足を踏み入れたゼロに向けて、席の一人から怒気を含んだ声が飛ぶ。
「"You're late, Zero! What were you doing?!"(遅いぞゼロ! 何をしていた!)」
ゼロは全く動じる様子もなく、ポケットに手を突っ込んだまま自分の席へと歩を進めた。
「"Ah, my bad. Just taking care of some personal business."(あぁ、悪かったね。ちょっとした私用でさ)」
「"Personal business...? Are you making a fool of us, being late to a World Government meeting for personal business?!"(私用だと……? 世界政府の会議に私用で遅れるとは、舐めているのか!?)」
ゼロは周囲の視線を意に介さず、用意された重厚な席へ音もなく腰を下ろした。冷ややかな空気が張り詰める中、彼は優雅にテーブルの天板を指先でなぞる。
すると、座っていた正面の男が不快げに口を開いた。
「Easy now, don't get so worked up.(落ち着け、そんなに熱くなるなよ)」
ゼロは呆れたように肩をすくめ、わざとらしく大きく息を吐いた。
「あーーごめん。日本語で話さない? 英語って頭使うから、すごく嫌なんだよね」
室内が凍りついた。隣に座っていた男――ギャンビットが、深い溜息をつきながら、向かいの席の男に向けて声を投げた。
「はぁー、まったく……ギャンビット、ゼロに何を言っても無駄だろう。」
「ふん、相変わらずお前はゼロに甘いな、バーディクト」
すると、いままで沈黙を守っていた幹部の一人が、静かに割って入った。
「それ以上、言葉を交わす意味はあるか? 今日は、この男に聞きたいことがあって全員集まったのだろう?」
「単刀直入に聞こう。アンダー18部隊の最後のピース——『戦略家』はどうなったのだ?」
会議室の空気が一段と張り詰める。一斉に注がれる鋭い視線を受けながら、ゼロはあえて大げさに肩をすくめて見せた。
「カーネルさん、申し訳ないが……まだ見つかってはいない」
ゼロの口から出た予想外の言葉に、幹部たちの間に不穏なざわめきが広がる。
「……見つかっていない、だと? 前に言っていた現役最年少棋士の松村は、ダメだったのか?」
「いや、適性テストなら100点満点だったよ」
「なら、なぜ不採用なのだ?」
「理由は簡単。あいつ、つまらなかったんだよね」
ゼロが当然のように言い放つと、隣に座っていたギャンビットがガバッと身を乗り出してきた。
「おい待てよ! 100点でダメってことは……俺が作ったテスト自体がつまらない、そう言いてぇのかよ!?」
「いやいや、つまらない人間を見抜くテストとしては、最高にベストな出来だと思ってるよ?」
「あぁん!? テメェ、喧嘩売ってんのか!?」
「stop it!!!(やめなさい!!)」
カーネルの地響きのような一喝が、会議室全体を揺らした。ギャンビットはチッ……と打ち捨てて席に座り直し、室内は再び重苦しい静寂に包まれる。
「わかっているな、ゼロよ。あの時の約束を」
「あぁ、わかってるよ」
「期限は2ヶ月後だ。それまでに新たな最高の『戦略家』を連れてこなければ、お前は——」
「……それ以上言うなよ。わかってるって言ってるだろ」
軽薄な笑みを消し、静かな怒りを混じえた冷徹な声でゼロが言葉を遮る。
カーネルは小さく鼻を鳴らした。
「"...Hmph. This meeting is adjourned. Dismissed."(……ハッ、これにて幹部会議を終了する。解散)」
カーネルの宣言とともに、幹部たちは一斉に立ち上がり、各自の出口へと消えていった。
その時——。
「なぁ、ゼロ。一緒に帰らねぇか? お前とは少し話したいことがあってな」
声をかけてきたのは、バーディクトだった。
「まぁ……、いいぞ」
(俺にはわかる。こいつが俺に何を話そうとしてるのか)
部屋を出ると、先ほどのスーツ姿の男に案内されながら、二人は並んで静かな廊下を歩き出す。その道中、バーディクトがぽつりと切り出した。
「なぁ、ゼロ。お前、本当はもう『戦略家』を見つけたろ?」
「え? そんなわけないだろ」
「バカ言え。俺に嘘が通じないことくらい、分かってるだろうが」
「あぁ、知ってるよ。……ちなみに、俺が戦略家を見つけたって確信した理由は?」
ゼロが振り返ると、二人の声が重なった
「「お前の“感情”が動いてたから」」
ピタリと声が重なった瞬間、ゼロは気まずそうにふいと視線を逸らした。
「……チッ、ハモるなよ。」
「ははッ、図星だったか」
ニヤニヤと笑うバーディクトの視線から逃げるように、ゼロはポケットに手を突っ込んで少し早足になる。
「……俺はただ、いつも言ってるお前のの口癖を言っただけだったんだよ」
照れ隠しのようにぼそりとつぶやくゼロに、バーディクトは肩をすくめて後を追う。
「はいはい、そういうことにしておいてやるよ。
じゃあ聞かせてくれよその、戦略家のことを」
お読みいただきありがとうございます。
今日もう1話あげます、お願いします。




