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田舎の山奥でこっそりダンジョンの管理人始めました  作者: わたがし名人


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第34話 田舎の山奥にあるダンジョン



 クロがダンジョンマスターと発覚してからしばらく。


 ダンジョンは少しだけ変化していた。


 第1階層と第2階層の間に新たな階層が追加された。名称はひとまず1.5階層と呼んでいる。


 ここでは野菜などを栽培していた。研究によってダンジョン内だと作物の育成が早いことがわかっている。


 元々は第1階層で行なうつもりだったが、クロが第1階層を気に入っていたので新たに階層を用意してもらったのだ。


 育てている野菜は多種多様で、毎日の食卓を彩っていた。


 これによりイツキたちの生活はまた一歩、自給自足に近づいた。



 ダンジョン内で暮らす動物たちはというと、今日も今日とて働いていた。


 メンバーに変わりなく、イノシシたちとサル。そしてクマ。


 だがその数は増えていた。イノシシ、サルどちらにもベビーブームが訪れていた。


 第2階層での一角に小さな小屋が新たに設置され、その中ではイノシシとサルの赤ちゃんが所狭しと動き回っていた。


 十分な食事とある程度安全な環境が整っているダンジョン内。動物たちは本格的にここを定住地とし、腰を据えることに決めたようだ。



 子育てのため、普段の作業をする数は減ってしまったが問題ない。


 その穴を埋める人材がいるからだ。山のヌシであるクマだ。


 あれ以来、クマにオークキングのタマを与え続けたイツキ。その結果、クマは3メートル近くにまで成長し身体もムキムキに育っていた。


 存在進化とまではいかないが、それでも一般的なクマに比べたらはるかに強くなっていた。今ではクマ単独でオークキングを倒してしまう程だ。


 オークキングを倒す。オークキングのタマを食べる。強くなる。


 今ではこのルーティンがクマの日課になっていた。


 ダンジョン内の間引きの他に山の見回りも継続して行なっており、忙しい日々を送っているのだが、クマ本人は楽しそうに充実した毎日を送っている。


 この感じならあと数十年は元気でいることだろう。出会った時の弱弱しい姿が嘘みたいだ。



「お散歩行ってくるー」


 ニーナは元気よく家を出る。クロと一緒に山を回るのだろう。


 動物たちのおかげでニーナの負担は減り、自由に過ごせる時間が増えた。野菜の栽培など新しく始めたこともあるが、それも動物たちにほとんどお願いしているのでする必要がない。


 イツキたちはそこまで収穫を必要としないので、残りは全て動物たちの取り分としている。そのため動物たちは積極的に野菜の栽培に取り組んでいた。



 時間のできたニーナは最近、アゲハとも出かけるようになった。今までは姿を隠す必要があり外出を控えていたが、その必要がなくなったからだ。


 ニーナはイツキの正式な家族となったのだ。


 家を空けていた時、イツキはダンジョンアタックの他にシルフィーにある手続きを頼んでいた。


 それはイツキがニーナの保護者になること。異世界人にはこちらの身分が存在しない。そのため大抵の場合はダンジョン管理局預かりとなるのだが、ニーナの事情を考えるとそれはしたくなかった。


 シルフィーと相談した結果、イツキがニーナと家族になるのが一番安全だという形になった。

 昔のイツキなら断っていただろうが、今は違う。いつの間にかニーナと過ごす日々はかけがえのないものへとなっていたのだ。


 異世界からの招かれざる客に関しては気にしなくもいいだろう。イツキの家周辺には現れることはないし、スノウが警告もしている。


 それでも教国の関係者が別の場所に現れたとしても問題ない。直接会うことがなければイツキとニーナの正体はバレることがないからだ。その辺りはシルフィーが上手くやってくれるだろう。なのでビクビクするだけ無駄だ。


 ニーナにはこの世界を目一杯楽しんでもらいたい。


 ニーナに無断で話を進めたことについては謝罪してある。話を聞いたニーナは最初は驚いたがすぐに喜んだ。自分がここにいていいという証を得られ、その上イツキと家族になれた。

 嬉しいことが多すぎてパニックになっていたが、それも今はいい思い出だ。



 ニーナと合流して散歩しているであろう神獣ことクロは相変わらずだ。


 元の猫の時と変わらずの生活を送っている。変わったのは尻尾と寿命が増えたことくらいだろう。


 この先もずっとこのままマイペースに過ごすに違いない。



「みんな~、ご飯できたよ~」


 昼食の時間。ニーナも戻り、全員で食卓を囲む。


 アゲハは相変わらずこの家に居着いている。シルフィーからは正式にここにいていい許可をもらっている。イツキたち専属の職員ということになっているが、実際は同居人のようなものだ。


 アゲハについて1つだけ変わったことがる。ニーナを正式に迎え入れて以降、イツキへのアプローチが妙に増えたことだ。スキンシップも態度も変わった気がする。


 イツキには身に覚えがないので本人に聞いてみるが教えてくれない。ニーナもニコニコするだけで教えてくれず。

 まぁ害はないので別にいいが。それも関係しているのかニーナとアゲハはよく出かけるようになった。イツキにはよくわからないが、女子会というやつだろう。なんにせよ仲が良いのはいいことだ。




「いい景色だ」


 山の頂上から景色を見渡すイツキ。


 イツキの現在(いま)は充実していた。


 当初は1人でのんびりと過ごすはずが、今では賑やかな日々を送っている。だが不思議と嫌な気持ちはない。むしろ心地良い。


 今まで1人で生きてきたイツキだったが、ニーナにアゲハ、クロに動物たち。ここでの生活がイツキを変えたのだろうか。


 昔の自分からは想像できないことだ。


 こんな日々がいつまでも続けばいい。


 そんなことを最近は思うようになった。


「まだそんな年じゃないんだけどな」


 年寄り臭い考えをする自分に苦笑する。



「イツキ―、そろそろ晩御飯だよー」


 遠くからニーナの声が聞こえる。もうそんな時間か。


「おー、わかったー」


 返事をしてニーナの元へ向かうイツキ。


 さて今日の夕食はなんだろうな。



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