表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

創作と価値観の話

私にとって創作は「自己の価値観が正しいのか確かめるためのもの」でしかない。


人間は生まれ育った環境で価値観というものが定まってくる。

しかし、年を重ね、経験を重ねていくうちに、

価値観というものがどんどん液体のようになってくる。


そもそも価値観や感情は「固体」ではない。

それに心だってそうだ。

決まった姿・形がないものになぜ私達はそれらを求めるのか。


それは不安から来るものではないかと思う。

確信を持っていたいから

なにかしらの器を無意識のうちに作るのではないかと。


それに気づいたのは四十を越えてからだった。

創作をするにあたり、さまざまなキャラクターの肉付けをするうえで

この人はこういったバックボーンがあり、背骨があり、こんな言動に至っていると

そういったものを作っておかないと、

自分のなかでそのキャラクターの輪郭が崩れてくるのだ。


そのなかには自分の価値観とは真逆なものを持っているものがいる。

というか、まったく異なるタイプが9割9分だ。

私とは違う考えを持つ「彼ら」を生み出す素となっていたのは

自分自身の読書体験だった。


私は好奇心のままにいろいろな本を読んだ。

小学生の夏休み、

母の都合で朝から晩まで図書館にいるよう言われていたから

子供が読む本だけでなく大人が読む本、

小説や画集、それに専門書まで

興味の赴くままに読みあさったものだった。


特に心惹かれたのは神話や伝承。

そこから伝わっている地域の歴史に興味を抱いたものだし、

出来事に関わった人間たちの言動の理由まで調べていたし、

理由の背景にある当事者の感情まで想像していたものだった。

それらが皆、今に繋がっている。


しかし、ただ「読む」だけではない。

それだけだと「やり過ごす」とよく似ている。


じゃあどうしたら「素」にできるか。

それは想像すること、考えることだ。


自分の「好き」だけで本を選んでいたら刺激にはならない。

それに必ず飽きが来る。

その最たる例として取り上げたいのが

いわゆる「溺愛もの」ばかり読んでいたら飽きてしまい

自分で自分が読みたいものを書くようになっていたことだ。


だけどそのためには「語彙」がいる。

文章を組み立てなければならい。

もっと言えば動機の理由をしっかり作らないと

読んでいるうちにつまらなくなってくる。

それに、同じような話を書いていることに気づくまで

実はそう時間がかかっていなかったのだった。


私は飽きっぽい。

興味がなくなると切り捨てるタイプだ。

それなのになぜ、創作を続けているのか。

それは自分自身の価値観や考えを

物語のなかに盛り込むことの楽しさを知ったからだ。


しかもその考えは価値観と整合していないこともある。

きれい事では生きていけない、それをわかっているから、

自分が自分の考えの中で「落とし所」を見つけたように

主人公たちにたどり着いてほしい場所まで案内することで

自分の考えを整理している、というか。


とはいえ、それを仰々しく盛り込んでは興ざめだ。

一滴の滴のようにぽたりとおとし、

うっすら色づく程度に染みこませるくらいで

私の感覚ではちょうどいい。


今せっせと書いている作品がある。

その中には3組のカップルがいて

考え方も状況もさまざまだ。


恋人から結婚にいたる若いカップルは20代。

現在進行形の主人公カップルは30代から40代。

そして主人公カップルを支える夫婦は40代から50代。


彼らに持たせた役割や考えは

それぞれの年代にいた頃のわたしの「考え」だ。


そこに新たに加わる謎の「先生」。

連れ合いを無くし一人で生きる元医師が語る言葉は、

現在の自分の価値観に近い。


物語を書く私の醍醐味は

積み重ねてきた自分自身の考えを掘り起こし

さらに考えることができることだ。


あのときはああ思っていたけれど

今はちょっと違うかな。そう振り返ることで、

自身が歩んだ道のりを振り返ることもまた楽しい。


だから私にとって創作とは

自分自身との対話であり

アルバムを開くようなものなのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ