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せかいでいちばんつよいひと  作者: イカロ
第4章:英雄崇拝
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38/48

38,再会の前に

 クラレットと別れてから、僕らは門番にお城の入口まで連れて行かれた。そしてそこからは、身なりの良い老紳士に案内される事となった。

 恐らく執事とか侍従とか、そういった人なのだろう。どう違うのか僕は知らないが。さておき老紳士は廊下を歩きながら、お城における注意事項を説明してくれた。

「城の中ではくれぐれも私から、はぐれないようお願い致します。ここには王族の方々もいらっしゃいますので、見慣れない者が案内もなしに歩いていた場合、念の為拘束する事になっております」

 さっきのクラレットの件といい随分と物々しいが、王様もいる場所ならこんなものか。

 それからも結構な距離を歩かされて、大分高くまで登ったところで、僕らはようやくその部屋へと辿り着いた。

「お話が終わっても、私がお迎えに上がるまで、決して部屋からお出にならないで下さい。拘束されますので。それでは」

 僕らが部屋へ入ると、老紳士はそう言って外側から扉を閉めた。


 外観の無骨さとは違って、その部屋は随分と煌びやかだった。部屋全体に絨毯が敷かれ、数々の調度品が飾られ、真ん中には大きなテーブルとソファ。どうやら家主が、客の相手をする為だけの部屋のようだ。

 そして今、そのソファに堂々と腰を下ろしていたのはベルではなく、見覚えのない中年男性だった。ここから改めてベルの所まで案内してくれるようには、到底見えない身なりである。むしろこの部屋の主と言われた方が納得の出で立ちだった。

「やあ、よく来たね」

 男は言った。

「いや失礼。実は娘が友人を招いたと聞いたのでね。少々無理を言って、こっそり先に会わせて貰った」

 僕らを呼び出したのはベルであり、そのベルを娘と呼ぶこの男性は、つまり…。

「お、王様!?」

 リラが驚きの声を上げた。

「まあ、そう構えずに。楽にしてくれて構わないよ」

 緊張して固くなるリラに対して、王様はそう言って気さくな笑顔を見せた。

「は、はい!」

 その様子は相手が王様である事を考えると、僕にはむしろ胡散臭く見えたが、額面通りに受け取った彼女は、すんなりとソファへ腰を下ろした。…まあ彼女が警戒していないのなら、多分問題はないのだろう。僕はやや緊張しながらも、彼女の隣に腰を下ろした。

「それでは改めて自己紹介だ。兄上ほど有名ではないが、私はセオドリック。このサウスラントの国王をしている」

 僕はここで、初めて王様の名前を知った。

「ええと、君がライムライト君で、君がライラック君かな?」

 一方の王様は、僕らが孤児院出身である事も、訓練所の卒業生である事も、現在は討伐者をしている事も全て知っていた。

 まあ僕自身は知らなかったとは言え、お姫様と同期だった訳だし、僕らの事は一応調べてあったのだろう。

「良かったらあの子が、訓練所でどんな様子だったか教えてくれないかな? あの子は自分から、あまり話さなくてね」

「えっ、は、はい、そうですね…」

 そう聞かれてリラがした話は、いかにも同性の友人同士といった感じのものであり、まあぎりぎり微笑ましいと言えなくもなかった。

 だが王様が何をどこまで知っているのか分からない以上、僕が知る訓練所での武勇伝は言わない方が良いのだろうな。僕は王様の相手をリラに任せ、黙っている事にした。


 やがてリラの話が一段落すると、王様はふと真面目な表情になって言った。

「なるほど。しかしあの子もそうだが…君たちは、死が怖くないのか?」

 唐突とも思える質問。

 しかしそれ故に僕は、この邂逅もまた運命であったと理解する。恐らくはリラの、英雄としての覚悟を問うているのだろう。

 その質問に対して、リラは特に構える様子もなく答えた。

「怖いです」

 その言葉を聞いて、一瞬とは言え彼女を疑った事を僕は恥じる。

 彼女の言葉には、続きがあった。

「…だから皆を守れるようになりたいと思います」

「!」

 死と聞かれて彼女は、初めから自分を度外視していたのである。

 そしてその言葉を聞いた僕は、訓練所で初めて彼女と出会った時の事を思い出す。あの時も彼女は、そう言ったのだ。皆を守りたい、と。

「フッ」

 今更ながらに彼女が英雄である事を、思い知らされた気分だ。

「ふふっ、そうか…」

 彼女の答えを聞いて、王様も低く笑った。きっと僕と同じ気持ちだったのだろう。

「さて、そろそろ君たちを解放しないといけないな。今日の事は、あの子には内緒にしておいてくれ」

 そう言って王様が呼び鈴を鳴らすと、先程の老紳士が部屋に入って来た。

セオドリック:お前たち英雄志願者どもには人間らしい感情がないのか?(意訳)

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