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21話

「やるじゃねーか、どんどんいくぜ!」


 黒豹が操る人形が2体、3体、4体と増えていく。それに合わせてこっちも増やしたいけど、純度100%のクラフトメタルはもうほとんど無い……


「どうした? この程度か?」


 人形はさらにスピードを上げて襲いかかって来る。もし頭に当たったら次こそ死ぬかもしれない……でも、少しずつ動きが読めてきた。


「ねえ、どうしてこんな事をするんですか? クラフトメタルを悪用して、一体何が目的なんですか?」


 4体の人形の攻撃を避けながら尋ねると、黒豹はニヤリと笑みを浮かべた。 


「いい質問だな実月、そんな事決まっている。このふざけた国を作り直すためさ!」


「作り直す?」


「ああそうさ。お前にもわからないか? 俺やお前みたいな天才は周りからいつも白い目で見られて邪険に扱われる。そうだろ?」


「……………」


 反論しようと思ったけど確かに黒豹の言う通りだ……周りと違ったボクはいつも隅に追いやられてきた……


「この国ではな、ちょっと目立つとすぐに周りから叩かれるんだよ。出る杭は打たれるってやつだな。ふざけやがって! 俺がこのハンマーであいつらの常識を叩き割ってやるよ!」


 黒豹が操る人形はさらにスピードを上げて襲いかかる。


「これで終わりだ!」


 3対の同時攻撃によってボクの人形は粉々に粉砕された。残りの1対がボクに向かってハンマーを振り下ろす。


「クラフト・メタル・バリア!」


 これ以上避け続けるのは難しい……一瞬で半径1メートル程のバリアを展開して攻撃を防ごうとしたが……


「バリアか? でもいつまで耐えられるかな!」


 鼓膜が破れそうな音と共に亀裂が入る。もうこれ以上は耐えられない……

 

「吹き飛べ!」


 ついにバリアは粉々に砕けて、殺気を帯びたハンマーがボクを吹き飛ばした。


 体は宙を舞い重力から解放されたようなふわふわした感覚に包まれる。あぁ……また同じ展開だ……またボクは負けるの?


 薄っすらと目を開くと、オレンジ色に染まった空が広がっていた。もう時間は無い。この一手に賭ける!


「チェックメイトだぜ、実月!」


 黒豹がゆっくりと近づいて来てボクを見下ろしてきた。


「その言葉……そっくりそのままお返しします!」


 バリアを展開した時にこっそり作ったゴーレムが、ボロボロに崩れた鉄クズから出てきて黒豹に襲いかかる。


「だから、それも無駄なんだよ」


 完全に不意をついた一撃だったが、黒豹は慌てる事もなく攻撃を避けると、手に持ったハンマーで人形を叩き割った。嘘でしょ?


「最後に言っておきたい事はあるか?」


「………」


 黒豹はボクの前に座ってあぐらをかく。


「言いたい事がないなら今度は俺から質問させてもらう。実月、お前は今この国に必要な人材はどんな奴だと思う?」

 

「必要な人材……天才ですか?」


「惜しいな、ただの天才じゃダメなんだよ。今この国に必要なのは()()()さ!」


「なっ、何を言ってるんですか⁉︎」


 あまりに突拍子もない考えにハンマーで頭を殴られたような衝撃が走る。


「常に未来を見据え、どれだけ周りに何と言われようと自分の意思を貫く逸材……それが独裁者さ!」


 黒豹は一度言葉を区切ると、鋭い瞳でボクを見下ろして話を続ける。


「何を決めるにも周りの顔を伺っていたら遅すぎるんだよ!」


「でも、そんな勝手なことが許されるわけないじゃないですか!」


「独裁=悪じゃねぇーんだよ。俺はむしろ多数決=最善策とかほざいている奴の方が異常に見える! だから俺がこの国を作り直してやるよ。クラフトメタルは思いのままになんでも出来るからな!」


 黒豹はクラフトメタルをハンマーやナイフに変えて(もてあそ)


「言いたい事は分かりました。確かにこの国を引っ張るような逸材……独裁者の必要性は認めます。ですが、クラフトメタルを使って反乱を起こすのは許せません! クラフトメタルは正しく使えば人々の暮らしはもっと豊かになるはずです!」


「それこそ新たな技術を毛嫌いする奴に邪魔されるぞ」


 ボクと黒豹の鋭い視線がぶつかり合って火花が飛び散る。しばらく睨み合いが続いたが、最初に動いたのは黒豹だった。


「やれやれ、平行線だな。実月、やっぱり仲間になるのはやめだな」


「光栄です。貴方の仲間になるくらいなら死んだほうがマシです!」


 黒豹はどこか悲しそうな顔をすると、クラフトメタルをハンマーに変えた。


「実月……お前は今まであった奴の中で1番面白かったぜ」


 黒豹はそう言うと、ボクの頭に向かってハンマーを振り下ろした。

 




屋上 絵梨香&万丈vs黒豹


「そっちも終わったみたいだな」


「あっ、万丈!」


 ヘビから受けた傷の手当てをしていると、2階から万丈が登って来た。


「どうしたんだその怪我⁉︎ 大丈夫か?」


「平気よ。私たちも一気に屋上まで行くよ!」


「あまり無理はするなよ」


「これくらい問題ないわ!」


 近くにあったエレベーターに乗り込んで屋上のボタンを押すと「上に参ります」とアナウンサーの声が聞こえてきた。


「屋上でございます」


 この先に黒豹と実月くんがいる。ゆっくりとエレベーターの扉が開いていく。そこにいたのは……


「えっ、嘘でしょ⁉︎」


 信じられない光景にあいた口が塞がらない。


「よぉ、遅かったな」


 黒豹が私たちに気づいて手を振った。


「テメェー 実月に何しやがったんだ!」


「何って、見たら分かるだろ?」


 黒豹が余裕の表情でハンマーで弄ぶ。その足元には実月くんが倒れていた。


「よくも実月を……オメェーはオレがぶっ飛ばす!」


「ふん、やれるもんならやってみやがれ!」


 黒豹は万丈の攻撃を全て見切ってハンマーで反撃してきた。


「クソ……強ぇ……」


「万丈、伏せて!」


 私は銃を取り出して黒豹に発砲した。ゴム弾は黒豹の鋭い瞳に向かって吸い込まれるように飛んで行くが……


「無駄だぜ、クラフト・メタル・バリア!」


 黒豹は実月くんがよくやるように、地面に手を付いて鉄の壁を作り出した。ゴム弾はバリアに跳ね返って私たちに襲いかかる。


「クラフト・メタル・チェーン」


 さらに続けて鉄の鎖が私たちに巻き付いてきた。バリアと鎖……どっちも実月くんがよく使う技だ。それを一瞬で再現するなんて……


「クソ、動けねぇ!」


「ねぇ、実月くん、お願い目を開けて! 実月くん!」


 私が何度呼びかけても反応がない。嘘でしょ? 悪い夢だよね? こんなの嫌だよ!

 

「黒豹! あんただけは絶対に許さない!」


「おぉ〜 怖い怖い、でも安心しろ、すぐに実月がいる場所に連れて行ってやるよ!」


 黒豹が私たちハンマーを向けた。何か……何か方法はないの?


「さぁ、お別れの時間だ!」


 体を捻っても鎖はびくともしない……逃げ道は何処にも道ない。


(ごめん実月くん、仇をとってあげれなくて……パパ、ごめんなさい……結局最後まで役に立てなくて……)


 私は心の中で2人に謝罪すると、痛みに備えて固く目を閉じた。

ご覧いただきありがとうございました!

ついに次回が最終回です!

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