19話
第7章 2人の独裁者
1週間後
「いよいよ決戦の日だね。実月くん!」
「はい、やれるだけの準備はしました。後は実行するのみです!」
ボクは気持ちを落ち着かせるために深く息を吐くと、ショッピングモールを見上げた。以前遊びに来た時はなかった威圧感を感じる。
今日は朝から曇り空で、時折強風が吹き荒れる。太陽の光は分厚い雲に防がれて届かない。何だか不吉な予感がする。
「安心しろ、実月! どんな敵が来てもオレがぶっ飛ばす!」
「そうだよ実月くん、私たちの事も頼ってね!」
万丈さんと絵梨香さんがそんなボクの心配に気づいたのか肩に手を置く。学校では友達ができずいつも孤立していた。でも今は違う! もうボクは1人じゃない!
「ところで実月くん、その肩にかけている鞄には何が入っているの?」
「えっと、黒豹を倒すための小道具です。日下部さんに頼んで集めてもらいました」
この戦いに負けたらボクは黒豹の仲間にならないといけない。クラフトメタルを悪用するような人とは絶対に協力したくない。だから必ず勝つ!
「よぉ! 実月、約束通り来たみたいだな!」
「………黒豹⁉︎」
上空から声がして見上げると、黒豹がスピーカーを持って屋上に現れた。
「早速だがルール説明といくぜ、タイムリミットはあと2時間。それまでに俺を倒してみな! もし時間を過ぎたら……」
黒豹はポケットに手を入れると何かを投げ落としてきた。
「あれ? これって……」
ボクが拾うと、横から絵梨香さんと万丈さんが覗き込む。
「それ、ボスに買ってあげたペット用のアクセサリーよ」
「首に付けてやったら尻尾を振って喜んでいたな」
2人の言う通り、これは以前ショッピングモールで買った物と全く同じだ。
「そいつは最近流行りのベット用のアクセサリーさ。でも実は俺がタヌキに頼んで作らせた物さ。だから少し小細工をしてある」
「小細工? まさか爆弾とかですか?」
何となくそんな予感がして尋ねてみると、黒豹はスピーカーを横に置いて拍手をする。
「正解! よく分かったな! もし1秒でも時間が過ぎたら最高の花火ショーが始まる。それが嫌なら止めてみな!」
黒豹さんはそう言い残すと、背を向けて奥に行ってしまった。花火ショー? 嫌な予感しかしない……そんなの絶対にダメだ!阻止してみせる!
「絵梨香さん、万丈さん、行きましょう!」
「えぇ、行きましょう!」
「あんな奴、野放しには出来ねぇ!」
入場口に向かうと自動ドアがゆっくりと開いていく。この先に黒豹がいる。ボクは覚悟を決めると、ショッピングモールに足を踏み入れた。
ショッピングモール 1階
「えっ、何これ⁉︎」
前を歩いていた絵梨香さんがピタッと足を止めた。それもそのはず、1階には12対の黒い人形が待ち構えていた。
一体一体の身長は1メートルくらいだけど、鉄で出来たその体は丈夫そうで簡単には倒せなさそうだ。
「恐らく純度100%のクラフトメタルを使っています。気をつけてください! 使用者の思いのままに動いて襲ってきます!」
ゴーレムたちはボクたちを見つけると、一斉に走って来た。必ず何処かにこいつらを操っている人がいる。
「おい実月、2階に誰かいるぞ!」
「本当ですね! あれは確か……キツネ?」
万丈さんが指差す方を見ると、相変わらず細い目をしたキツネが立っていた。向こうも気づいたようで軽く会釈をする。
「どうする実月くん?」
「絵梨香さん、遠距離から攻撃して数を減らせませんか?」
「やってみる! クラフト・メタル・ガン!」
ゴム弾は吸い込まれるようにゴーレムの頭にヒットした。でもあまり効いてなさそうだ……
「絵梨香さん、この弾を使って下さい!」
ボクは通常のクラフトメタルを銃弾に変えて絵梨香さんに手渡した。
「分かったわ、少し離れていて!」
絵梨香さんが放った銃弾がゴーレムたちにヒットする。それでも決定打にはならない……
「実月くん、このままだと押し負けるよ!」
「大丈夫です。続けて下さい!」
戸惑いながらも絵梨香さんは指示通りに発砲し続けた。ボクが渡した銃弾がゴーレムの足元に散らばる。そろそろ頃合いかな?
「クラフト・メタル・エッジ!」
ボクの想像力によって地面に散らばった大量の銃弾が棘に変化した。鋭い棘はゴーレムたちを貫く。
「凄い! 実月くん、一気に数が減ったよ!」
「今のうちに先に行きましょう。引き続き銃による攻撃を続けて下さい。万丈さんは絵梨香さんが取りこぼした敵の殲滅をお願いします!」
「あぁ、任せろ!」
1階フロアの攻略は順調だ。絵梨香さんが遠距離から攻撃して、万丈さんが近くに来た敵を倒す。無駄のない連携で無事にエレベーターの前まで到達した。
とりあえず3階のボタンを押して降りてくるの待っていたが……
「なぁ、実月、こいつら倒してもキリがないぜ!」
ゴーレムたちは倒してもすぐに復活してしまう。徐々に逃げ道が無くなっていく。もうこれ以上は待てない!
「ボクが道を作ります。その隙に階段で行きましょう! クラフト・メタル・エッジ!」
銃弾が棘に変化してゴーレムたちを貫く。さっきのエレベーターが降りてきたがもう戻れない……
ボクたちは階段を駆け上がり、次の階に向かった。
ショッピングモール2階
「やはり、鉄人形では倒せませんね」
階段を駆け上り2階に着くと、キツネがクラフトメタルを扇子に変えて立ちはだかる。
「実月、絵梨香、ここは俺に任せろ、先に行ってくれ」
「でも、それだと万丈さんが危険じゃないですか? 3人で確実に倒した方が……」
「実月くん、ここは任せましょ、万丈、負けるんじゃないわよ!」
「お前こそ、実月をちゃんと守れよ!」
万丈さんが腕にクラフトメタルを纏わせてキツネに殴りかかる。
「今のうちに行くよ!」
「……分かりました」
不安な気持ちが残るけど時間の余裕もない。ボクはもう一度だけ万丈さんの事を見ると、3階に向かって階段を登った。
3階 ヘビ視点
「さぁ、どっちからくるかしら?」
ヘビは銃弾を装着してスナイパーを構えた。この場所ならエレベーターと階段の両方を狙う事ができる。必ず一発で仕留めてみせるわ!
息を潜めて獲物がやってくるのを待っていると、動きがあった。エレベーターが3階フロアで止まり扉が開く。そこにいるのね!
ヘビが引き金を引くと、発砲音がショッピンモールに響いた。銃弾は吸い込まれる様にエレベーターの中に向かって行ったが……
「えっ? 嘘、まさか囮⁉︎」
どういうわけかエレベーターの中には誰もいなかった……
3階 実月&絵梨香
「ねぇ、今の音聞いた?」
「はい、やっぱりスナイパーも来てるみたいですね」
前回の密室窃盗事件の時は、スナイパーのせいでキツネを取り逃してしまった。
「さっきの発砲音はボクたちがエレベーターで来たと勘違いして撃ったんだと思います」
「なるほどね、じゃあ階段で来て正解だったね」
「そうですね」
もし、エレベーターに乗って上に向かっていたらと思うとゾッとする。
「実月くん、敵の位置って分かったりする?」
「う〜ん……そうですね……さっきの発砲音からして中央の柱の後ろが怪しいです」
「分かったわ、私が囮になるから、その隙に実月くんは上に行って!」
「囮ですか……大丈夫ですか?」
「心配しないで、後で追いつくから!」
絵梨香さんはクラフトメタルをいつもの銃に変えてゴム弾を装着する。
「さぁ、行って!」
「はい、行ってきます!」
絵梨香さんが物陰から出るのと同時に、ボクは最上階に向かって階段を駆け上った。
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