スキー&温泉旅行12
「ょ……ちょ……千代!!!!!」
遠のく意識の中、冷え切った千代の体を揺する、聞き覚えのある声。
「よ、陽平くん……?」
ーーあれ?なんで?ここに居るの?
「お前は、バカか!!!! 雪山で寝るヤツがいるか!!?!」
ーーあ、私……寝ちゃってたんだ。てか、温かい…ここどこ?
「もう! 千代ちゃん、何度起こしても起きないんだから!! 本当に死んじゃったのかと思ったぁ!! 救急隊の人たちが、運んでくれたんだよ?!!」
遠く方に、迷涼と右京が心配した表情でこちらを見ている。
どうやら、旅館の布団の中のようだ。
「今、遥さんと兄さんがお医者さんと話してるよ。もうちょいで、危ないところだったんだってさ」
右京の説明を聞いて、内心バカだな……。と、自分自身呆れていた。
「バカ千代!!!」
「陽平くん……人のことバカバカ言い過ぎッ!」
ーーギュッ
七倉に抱きしめられてると、気付くのにそう時間はかからなかった。
「お前を失ったかと、思ったんだぞ?! ソレが、どんなに怖いことか……お前に分かるか!!? 」
彼が、泣いていることに千代は少しずつ朦朧とした意識が、ハッキリしてきた。
医師との、会談が終わった遥と龍夜も、部屋に戻ってきた。
「俺のこと嫌ってくれても、構わない……でも、もう馬鹿なことすんじゃねぇよ……」
彼の頬を伝う涙に、触れる。
その涙は、とても、暖かった。
「うん……心配掛けて…ごめんね」
彼の手を握り締めると、古びたミサンガが、ちらっと見えた。
ーーあ…私たちの願いはまだ叶ってないんだ。
「陽平くん……」
「なんだ?」
「苦しい」
「あっ!! ごめん!」
慌てて、彼女を離す。
「でもな、俺はお前のこと諦めない。 絶対にだ!」
「あ……えっと……その……」
「なんだよ、気になることがあるなら話せよ」
「後ろに般若が見える」
え?と、後ろを振り向くとそこには腕を組み壁にもたれ掛かり、こちらを見てる遥の姿があった。
「キミ、そないに死にたいん?」
ボキボキ。指を鳴らしながら、七倉に近づく遥。
「やれるモンなら、やってみな。 俺は、逃げも隠れもしねぇわ」
「いい度胸やんけ」
今にも、殴り合いの喧嘩が始まってしまいそうな瞬間だった。
「ハイ!ストップ!」
二人の間に入ってきたのは、迷涼だ。
「今度は、遥ちゃんタイム!! 七倉教授と、私たちは部屋を出ましょ」
「なんでだよ!」
「いいから!」
迷涼に、手を掴まれて七倉と笹木部兄弟は、部屋を後にした。
部屋には、ふたりきり。




