スキー&温泉旅行13
千代は、手首に付いていたミサンガを服で隠した。
それを遥は、見逃さなかった。
彼は、そっと千代に近寄り抱きしめた。
「遥さん?」
「良かった……ホンマに……良かった」
掠れる彼の声を聞いて、たどたどしく遥かの背中に腕を回した千代。
「ごめんね……遥さん……ごめんね」
「千代言ったやんけ……僕から、離れないって……」
「うん……離れないよ」
「絶対やで」
「うん。 遥さわゆ、大好き」
ーーこの愛を歪んでいると、思う人もいるかもしれない。
ーーでも、コレでいいのかな。
一方、部屋の外で待機していた迷涼と龍夜。
話の流れは、一通り聞いてしまっていた。再び哀しそうな、迷涼の表情をみて龍夜が、頭をそっと撫でてやる。
迷涼は、彼のその行為にお礼を言った。
そんな彼女の手を引いて、龍夜は旅館の広間までやって来た。
ここでは、湯上りの人たちが卓球をしたり、マッサージ機で休んでいたりしていた。
そこの自販機で、暖かい緑茶を買って、ソファーに座った。
ラッキーなことに、この時間帯はお客さんがとても、少なかった。
龍夜は、迷涼にお茶を渡した。
「ありがとうございます」
「で?大丈夫なんですか?」
足を組んで、自販機で買ったビールを呑んでいた。
「なにがです?」
「遥さん。でしたっけ? 好きなんでしょ?」
「えっ?!いや、そんな 」
まるで、リンゴのように頬を真っ赤に染めた。
「言わなくても、わかりますよ。あなたの態度を見ていたら、いつから好きなんですか?」
「いつからか分からないです…… でも、私がどんなに好きでも…… 遥ちゃ、遥さんは、私のことなんて好きじゃなくて…… ちぃちゃんのことが好きだから…… でも、こんなに辛いなら…… 遥さんのことなんて、好きにならなければ良かった」
ポロポロ。と、涙が零れる迷涼。
そんな彼女を見て、龍夜は優しく彼女を抱き寄せた。
驚きのあまり、涙が引っ込む迷涼。
「大丈夫だから、今まで抱え込んで辛かったな。 今なら、俺が聞くから…… 迷涼さんの本当の気持ち聞かせて」
いつもは、敬語でやる気のない声を出す龍夜だが、今の彼は違った。
「私なら大丈夫ですから!」
「強がるなガキ。 辛い時ぐらい、泣いたって良いんだよ」
下を向く彼女の顎をくいッと上げた。眼鏡越しの彼の瞳は、とても優しかった。
そのまま、彼は迷涼の唇に自分の唇を重ねた。
ーーんッ?!
「兄さぁーん?どこー?」
広間に現れたのは、右京と七倉だ。
二人の目に飛び込んできたのは、龍夜が迷涼にキスを、しているところだった。
「「あっ!!」」
そのまま、龍夜は迷涼の膝に倒れ込み眠りにつく。
「え?え?」
何が何だか、わからない迷涼。
「兄さん……まさか……お酒飲んだ?」
「え?あ、呑んでました!!」
あちゃーっと、右京は手をおでこにくっつける。
「コイツ、酒に弱くて」
「弱いだけなら、良いよ。 タチが悪いのが、キス魔になるんだよ」
「き、キス魔!!?」
膝で、眠っている彼を見てまるで子供のようにな表情を浮かばせていた。
「ありがとうございます」
あの言葉が、凄く嬉しかった迷涼は、優しく微笑んだ。




