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ソギ編

 気がつけば、真っ暗な中で体がふわふわと漂っていた。


 闇。ひたすら闇。


「僕、何でこんなところにいるんだろう?」


 周りは暗いのに自分の姿は見える。ただの暗闇ではないのは明白だ。


「ここは?」


 走っても走ってもここから抜けられない。それでも不安や疲れはなかった。


「僕はなに?」


 ――るよ。


「え?」


 どこからか優しい声が聞こえた。


 ――……ってるよ。


「ぁ……」


 背後から鳥に似た黒い影が通り抜けた。風の匂いは懐かしい。


 ソギは振り向く。


 ――待ってるよ。


「この声を僕は知ってる」


 それは、とてもとても大切な人の声。僅かに自分の周りが明るくなった。


 ――俺は、ソギを待ってるよ。


「僕は……」


 ナルシスの時も。告白をしてくれた時も。そして今も。彼を心配させ、待たせてばかりだ。大きな羽ばたきが聞こえる。


「僕は目覚めなきゃ」


 遠くに見えた眩しいほどの光。それに向けて一歩踏み出した。


「今帰るよ、ヨハン」


 また、周りが明るくなった――。


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