第四一話 犬、猿、雉
今回は台詞地獄です。
いつの間にか岡山県旅行が一日終えてしまってたよ。後楽園でゆっくりしすぎた!
二日目にはその近く、岡山城に行ったよ。こっちもゆっくりね。
岡山と言ったらあの有名昔話、桃太郎で有名だね。
「メリーは''桃太郎''って知ってる?」
「知ってるわ。あぁ、そういえば、ここが舞台だったわね」
その時に岡山城に着いたけど、凄い行列に吃驚しちゃった。外まで並んでるもん。
まぁ、ゆっくり観光出来るからいいけどね。
「うん。って、結構な観光客だね。後楽園はそうでもなかったけど」
「その時が丁度真昼だったからよ」
「なるほどね」
メリーの言う事は筋が通ってるね。電波になっている時以外。
「メリー、桃太郎の話には裏があるって知ってる?」
「裏?」
「そう、裏だよ」
「どんな裏よ」
「桃太郎に出てきた三匹のお供、犬、猿、雉についてだよ」
「聞かせて」
「勿論。私の知る限りでは二つあるから」
「はいはい」
「''はい''は一回」
長い外まで続く行列に並んで、私は早速話した。
「桃太郎って何で犬、猿、雉を選んだか知ってる?」
「さぁ? たまたま?」
メリーが首を傾げてむーと考え込む。
「例えたまたまでもさ、馬とかライオンとか、強そうなのを探せば良かったじゃん」
「ライオンは探しても居ないと思うけど、確かにそうね。謎だわ」
「それには、あの三匹じゃないといけない理由があったんだよ」
「どういう理由よ」
「メリーは十二支を知ってるよね?」
「知ってるわよ。子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥、よね」
「そうだよ」
因みに今年は辰年だよ。
「それが何なのよ」
「メリー、自分で言っておいて分かんないの?」
「何、その馬鹿にした言い方」
私はメリーのぼそっとした独り言みたいな事を無視して次に進めた。
「実はね、その十二支の中に三匹のお供に出てる動物がいるんだよ」
「あーあー! なるほどね」
「そう、戌、申、酉がいるんだよ」
「それで? その後は?」
「そこで思い出してほしいことがあるんだ」
私は一つおいて、メリーの真剣に見えない顔に向かって再び話し始めた。
「十二支の一つである戌、猿、酉はどれも西を指すでしょ? じゃあその真反対にある動物は?」
「子、丑、寅、卯、だけど?」
「そうだね。じゃあ話を少し反らして、メリー、鬼ってどんな姿か知ってる?」
「角を生やして大柄な感じよね」
「そう。その角ってどんな形?」
「……あー! そういう事ね!」
メリーはさっきよりも大声で言った。周りの人達がメリーの声に反応し、メリーの顔は赤く染まった。
「だから角が生えてて、虎柄パンツなのね」
さっきより小さい声で言った。
「そうだよ。それでね、その鬼を倒すためは鬼の方角、つまり丑や寅の反対の方角にいる戌、猿、酉しかないと踏んだみたいだよ」
「なるほどねー」
「じゃあ、次に移るよ。今度は凄くシリアスな話だからね」
「はい」
私は少し伸びをして次に進んだ。
もう岡山城の近くまで来たけど、まだ入れそうにないね。暑いから早くしてほしいね。
「これも犬、猿、雉を選んだ理由についてだけどね。それを話す前に桃太郎について話さなきゃいけないんだ」
「何?」
「桃って子供の象徴なんだよね。ほら、ひな祭りでも」
「確かにね」
「それで、桃って最初に川から流れてくるでしょ?」
「なるほど、子供が川から流れてくるっていう擬人法ね」
流石メリー、理解が早いから話も早いよ。
「そう。昔って食糧とか乏しかったから、子供を手放す、つまり人減らしがあったんだよ」
「まぁ、そうよね」
「その人減らしの子供の象徴に犬、猿、雉が選んだんだというだよ」
「何で?」
メリーが首を傾げる。
「漢字に表すと……」
私はメリーに分かりやすいように、持ってきてたメモ用紙とシャーペンを出した。
「また紙……」
「紙の方が使いやすいんだよ。犬、猿、雉を漢字に表すとね、居ぬ……去る……帰じ(帰ってこない)なんだよ」
「なるほどねー、だからね」
「だから人減らしの子供の象徴なんだよ」
「へー」
メリーは納得の頷きをした。
「それにね? 吉備団子あるでしょ? あれはね、そんな子供達の悲しい''機微''を表しているんだって」
機微っていうのは表面からは捉えにくい微妙な心の動きとか、事情の趣の事だよ。
「子供達に小さな悲しみ、か……本当にシリアスね」
「でしょ? 可哀想だよね。でもね、子供達は鬼退治に行くんだ。その鬼は多分……捨てた親の描写」
「怒りをぶつけるの? んー、何か分からないわ」
「私はそう思うんだけどな。まぁ、人の勘違いとかで迷信は生まれるからね。 でも、これが面白いんだよね。予想と違ったり、当たったりで」
「まぁ、そうね。あら、もう着いたわ」
目の前には、偉大な大きさの城が立っていた。
「次は岡山城の秘密を━━」
「めんどくさい」
「えー。でも、聞いて?」
私はメリーに無理矢理、自分の知る限りの話を沢山話した。メリー、眠そうだったね。大丈夫かな?
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「あー、もう夕方ね。ゆっくりしすぎたわ」
「もうそろそろ、駅に行こっか」
私は話すのに疲れすぎたよ。リニアでゆっくりしなきゃ。
まだ明るい空には、私にしか見えない白い星があった。今は七時五十六分二十五秒。そういえば、まだメリーに言ってなかったな。言わなきゃね、後で。
私達は切符を買ってリニアに乗った。次は目的の場がある広島県! 観光するぞー!