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秘封倶楽部の天気は現世のち幻想  作者: だみ
第七章 心狂硝子 ~ I Am You,You Are Me
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第一〇五話 中国フェニックス

 蓮子の言ってたのって、ここなのかしら?

 暗い澄んだ紫色の空には星と月が浮かんでいたわ。そこまで時間を読む気にならないから、意識はしていないわ。

「ここ?」

「んー……あの時が明け方だったら間違いないかもね」

 今更になるんだけど、心が入れ替わってもあんまりかわんねーじゃんって思う人、沢山いるわよね? その辺りはうぷぬしも把握してはいるみたいだけど、難しいみたいよ。過去の話を大きく加工するつもりはないみたいだから、今のままで行かせてほしいとの事よ。

 小説にうぷぬしの言いたい事を言うな? それはごめんなさい。思い付いた時に書かないと忘れるみたいだし、あとがきに書くのが面倒なんだって。その辺りは許してね。

 これからはうぷぬしの伝えたい事は私を通して冒頭に話す事が多くなるわ。ごめんなさいね。

 さて、伝言を全部言ったところで本編に進みましょう。

「そうなのね。ここが……ね」

 何もない。あるとしたら、遠くから私の目を突き刺す星と月の光だけよ。

 その時、私の足元で風が通り抜けた。

「……風? エニー、何か分かる?」

 エニーは風の声を聞く事が出来たのよね。久しぶりにこの能力を使う時が来たのかしら?

「えーっと……!? ちょっと……本当ですか!?」

 エニーは風の声を聞いたかと思うと、顔を驚きに染め、顔をしかめさせたわ。何かまずい事が起こるのね。

「どうしたの? エニー……」

 嫌な予感がする中でも、一応訊ねておくわ。

「もう皆さんは検討がついているかもしれないですが……来ますね」

 エニーが言葉に句読点をつけた直後に強い風が私達を押し付けた。

「うわぁーー!! 夢はこんな感じじゃなかったのに!」

「もう少しとの事ですよ! 宇佐見さん!」

「そのもう少しが長いっ!! 後十秒で来てってぇぇ!!」

 せっかちねぇ……。私は急かされても何とも思わないけど、引っ張られるのは勘弁ね。だって吃驚するじゃない。常に吃驚しっぱなしは嫌よ。

 ━━もう少しはもう少しだよう! 折角かっこよく言ったのに酷い……。

「今の声が……?」

 私は蓮子に聞いたつもりだったのにさっきの声が返したわ。

 ━━僕の……鳳凰の声だよ。

 その時、風は一層激しくなったわ。それはまた私達を吹き飛ばすくらいの風だった。そして、次第に緩んでいった。

「さてさて、お待たせしたね」

 声が聞こえてきた時には風は止まっていたわ。

 私達の目の前には鳳凰と呼び難い鳥が居たわ。白、黒、赤、青、黄。恐らく鳳凰なんだろうけど……。

「貴方が鳳凰なの?」

「さっき言わなかったっけ?」

 逆に訪ねられたわ。困るわね。

「そうだけど……姿が相応しくないっていうか……」

「ま、そうだね。仕方ないか。それでえっと、君があの時に会ったんだっけね?」

 鳳凰と言い張る鳥は蓮子の方を向いて真剣になった。

「うん。合ってるよ」

「そっか。それで、途中で君が消えたから話せなかった事があって来た。この解釈でいい?」

 夢が途切れる事は、向こう側では消えた扱いなのね。そうでしょうね。

「じゃ、単刀直入に言おうか。幻想郷にある」

「え、幻想郷……?」

 思っていなかった事はなかったけど、夢は現に変わったと思ったからその考えは浅かったわ。

「何で? 夢は現に変わったんじゃ……」

 つい思った事が零れちゃったわ。でも、もう言っちゃったから取り消しは無効ね。

「確かにあそこは現の対照にある、夢。だけど、変わってなんかない。夢は夢だから、現に変わってはいけないんだ。夢のない世界なんて、もう崩壊状態だから」

「……じゃあ、夢は現に変わったりしないんだ……」

 蓮子は肩を落としたわ。

 今まで、私の能力の事を必死に知ろうとしたり、夢を見て怯えた私を元気付けてくれたのは、他の誰でもない、蓮子なのよ。勿論、エニーもいるけど。

 蓮子は私に''夢を現実に変える!''って言ったわ。


 本当に夢を現に変える事は出来ないの?

 私達よりも偉い位置に立っている人の言葉が信じられなかったわ。


 あー! 身軽勝手な侵入者に心を変えられそうになったわ。自分が自分でなくなるのは時間の問題よ!

 ……勝手に蓮子の思考に乗っ取られるなんて!

「そう言えば……何故貴方は幻想郷の事を知っているのですか?」

 私はポーカーフェイスでいたから、エニーは不思議な目にならなかったわ。

「それはある知人が幻想郷に住んでいるっていう理由と、頼まれ……おっと」

「頼まれ━━で何ですか?」

「言わないように言われているんだ。ごめんなさい」

 口封じねぇ……私達がここに来るように仕掛けた人がいるの?

「じゃあ、取り敢えずは幻想郷に行けばいいと?」

「そういう事」

「でも、幻想郷の何処に……」

「そこまでは僕も知らない。ごめんなさい」

 何でだろう? 本来は気高いと思われる瑞獣の一匹である鳳凰が、丸々としているせいなのか、それとも謝罪を連呼しているせいなのか、カリスマ性が欠けているように思えるわ。

「じゃあ、帰ろう━━」

「ちょっと待って。またいつ会えるか分からないから、一人ずつ言っておきたい事があるんだ」

 その後にどうやって帰るかを聞きたかったけど、どうやら大事な事を言うみたいね。カリスマ性が見えてくるかしら?

「何?」

「まずは、危うい立場である、時と場を見る目。本物の姿は境界を見る目から言おう」

 私だわ。危うい立場って……。

「君は自分の力をまだ全てを知れてない。そのままでいると余計な人物まで巻き込んでしまう。まずは、自分を認めるんだ。そうすれば闇は光に変わり、導くだろう」

 言っている意味がいまいち分からないけど、何故か胸にしっかり刺さったわ。

「次に。あの時に語れなかった事を、境界を見る目。本物は時と場を見る目に告げる」

 きっと蓮子ね。横目で見てみれば、身を少し引いているわ。今の鳳凰と前までの鳳凰のギャップがあるからかもしれないけど、さっき、私に言ったのと同じような事を言うのだろうと、読んでいるのかもしれない。

「君は誰にも通れない未知を歩んでいる。曖昧な道なんだ。分かれ道が目の前にくる時があるだろうから、後悔しない道を辿りなさい」

 よくあるような言葉だったから解釈は大体掴めたけど、誰にも通れない道って?

 最後はエニーね。

「最後に。君はいつか真実と偽りに出会うだろう。真実と偽りに会いたいならば、二人を支えなさい」

 何? 最後のは。未来予告? やっぱり、お偉いさんは違うわね。

 私達は鳳凰の抽象的な言葉に茫然として、後ろに広がる暗闇を遠い目で見ているだけになったわ。



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