第一〇三話 境界線を越えて
第九十七話が二つあったので一話ずれました。
何というミスを……
「何で休みに行かないのよ。隣とは言っても遠いものは遠いのよ?」
今は六時半頃だと思う。やっぱり私の瞳がいいな。結構便利だし。
私が便利って言うんだから、メリーも便利って思っているのかな?なら返してくれるわけないか。そもそも、返せるわけがなかったよ。
「たかが三十分。問題ない問題ない」
「私、思ったのですが、鳳凰と平等院はあまり関係ないのでは?」
私達は宇治駅へと向かっていた。平等院鳳凰堂は宇治にあるんだよ。京都お住まいの方達は、ちょっと違っていてもこの小説オリジナルと思ってくれたら嬉しいね。
「''鳳凰''が付くから大丈夫だよ」
私の言いそうな理由だね。まぁ、実際言ってるんだけど。
あ、私達は他の人に怪しまれないように逆転しているよ。
「それに行ったとして、どうやってその世界に行くのですか?」
「それは行ってからの話。まずは行く事が先」
「何それ……ちょっと羽見せて」
「はいはい。メリー」
''蓮子''なんだけど、もう突っ込まない。何回も同じ事を言っても飽きるでしょ。小説っていうのはそういうものだよ。
「……何処で拾ったの?」
「夢を見る前。一本だけ落ちてきたのよ。だから、折角だからって思って取った。それだけよ」
「それって前に見たビジョンっていうような奴?」
「そうね。そんな感じよ」
あの時、メリーは本当に電波だったなぁ。そしていつも以上におかしかった。今でも持ってるかな? イザナギオブジェクト。まさか桂川に投げ捨てたとかないよね? 勿体ない……。
勝手に決め付けて内心の話を終わらせて、現実に入ろうか。
こう書いてみると、普通に見えるよね。いつも通りって感じ。でも実際違うんだから。
この逆転が嫌って言えば嘘だし、好きって言ったらちょっと違う。何これ、矛盾しているけど。
「へー。間近で見ると綺麗だね。その鳳凰ってさ、どんな形だったの?」
「何か、イメージと全然違ったわ。特徴は似ているのに、丸いのよ。全体的に」
「丸って……見間違いじゃないの?」
「そんな事ないわ。はっきり見たもの」
じゃなかったら、何のために顔に目が二つ付いているのか、と突っ込んでおくよ。制御されてて言葉に出来ないのが残念に思った事だよ。
「凄そうな姿をしているかと思ったのですが違いましたか……でも、優しそうですね。お話を聞いた限りでも、そのように感じられます」
電車ががたがた鳴っていて五月蝿い中、エニーの声が一番耳の奥に入ってきた。口調がしっかりしていていいな。エニーは将来、何になるのかな?聞きたいけど、やはり聞けない。
「最初見た時はよく分からなかったわ。でも、夢から覚めて貴女達に話していたら、だんだん確信付いたのよ」
「つまりは勘?」
「違うわ。色よ。夢の事を話していく内に生物の色を思い出したのよ」
メリーの判断は間違ってはいないと思う。だって、確信付いているって言っても確認はしてないからね。分かる? 分からないか。
「それで、何で鳳凰って分かったの?」
「蓮子だって知っているでしょ? 鳳凰の色」
「鳳凰の色? ……あー! なるほどね」
''流石賢い蓮子''って言いたいけど、残念。蓮子はここにいますー。
私だって何も出来ないわけじゃないんだから。心なんだから発言の制御くらい出来ないと、何でも言っちゃ困るからね。
「確かに、鳳凰の色は白、黒、赤、青、黄でしたよね。中国の四神とも呼ばれている瑞獣の一匹ですね」
エニーは国語だけじゃなくて、歴史的部分もよく知っていたね。
「そこまでは知らなかったわ」
「そうなのですか? ま、私は変な事まで覚えちゃうので、こういった事も知っています」
「へー」
暫く空白が空いてしまった。そんな空気をエニーが変えた。
「そういえばまだ私、二人の今までの活動の事を聞いていませんでしたので、話してくれませんか?」
「今更? ま、まぁ、いいけど」
話していなかったっけね? いつか前に話した気がしたけど、気にしない。
エニーに秘封倶楽部が結成してからの活動を言っていった。どの活動も曖昧に終わっちゃってるけど、エニーは興味深そうに聞いてくれた。
「それで次は衛星トリフネで……あ、もう着くね」
京都駅から三十分で着く宇治駅。最初に五分くらい使ったと思うから二五分しか語れなかったね。
電車に乗った時間を知っているメリーは多分、私の時間を見る瞳で分かったんだと思う。メリーの瞳からは電車の壁に黒い皹割れくらいしか見えないね。未来の姿かな? 物が壊れるのは昔も今も同じか。
宇治駅に着いたら後十分歩く事になる。駅を出たら衛星トリフネの話から話そうか。




