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エデンからの脱出と、誓いのキス

「ここまで辿り着くとは、想定外でしたよ」


重厚な鋼鉄の扉を蹴り開けると、そこは無数のモニターが並ぶ部屋だった。


中央の革張りの椅子に座っていたのは、身なりの良い中年男性――この狂った番組のディレクターだった。


モニターには、あの不気味なウサギのAIキャラクターが映っている。


「君たちのせいで、VIPの視聴者たちがクレームを入れてきてね。愛のために自己犠牲? つまらない。もっと血みどろの裏切りが見たかったのに」


ディレクターは狂気に満ちた笑みを浮かべ、机の引き出しから鈍く光る拳銃を取り出した。


「お前が……姉さんを!」


湊くんが怒りに任せて飛び出そうとする。


「ゲームオーバーだ、少年」


銃口が湊くんに向けられた。


その瞬間、私の体は勝手に動いていた。


「湊くん!!」


バンッ! という鼓膜を破るような銃声。


私は湊くんを突き飛ばし、鋭い痛みが私の左腕を掠めた。


「結愛!!」


「だ、大丈夫……かすっただけ……」


焼けるような痛みに顔を歪めながらも、私は湊くんに微笑みかけた。


もう誰も死なせたくない。


湊くんだけは、絶対に守る。


「チッ、邪魔な小娘が……次で確実に仕留めてやる」


ディレクターが再び銃を構えたその時。


「……あんたのくだらない台本には、もう飽きたよ」


背後から忍び寄った影――ジョーカーである怜くんが、ディレクターの背中に強烈な蹴りをお見舞いした。


「ぐあっ!?」


拳銃が床に滑り落ちる。


「怜……お前、裏切る気か!」


「俺は俺の命を守るために動いてるだけさ。今は、こいつらに賭けた方が生存確率が高いって判断したんだよ」


怜くんが不敵に笑う。


「今だ、花音!」


湊くんが通信機越しに叫ぶ。


『……エンターキー、ターンッ!!』


イヤホン越しに、花音ちゃんの力強い声が響いた。


次の瞬間、コントロールルームのモニターが次々とブラックアウトし、『SYSTEM ERROR(システムエラー)』の赤い文字が画面を埋め尽くした。


カチャッ……。


私たちの首に巻かれていた『キューピッド・チョーカー』から、小さな電子音が鳴り、ロックが外れた。


重たい首輪が、音を立てて床に落ちる。


「……終わった」


湊くんが、安堵の息を吐いた。


ディレクターは、駆けつけた湊くんと怜くんによって完全に拘束された。


花音ちゃんが発信したSOS信号により、島には警察の救助ヘリコプターが向かっているという。


洋館の外に出ると、空はすっかり白み始めていた。


エメラルドグリーンの海が、朝日に照らされてキラキラと輝いている。


「結愛」


海風に髪を揺らしながら、湊くんが私を呼んだ。


「怪我、痛むか?」


「ううん。湊くんが無事なら、これくらい平気」


私が笑うと、彼は少し困ったように眉を下げて、そっと私の頬に手を添えた。


長いまつ毛の奥にある黒い瞳が、私を真っ直ぐに見つめている。


「……お前は本当に、バカみたいにお人好しで、無茶ばかりする」


「もう、褒めてるの? けなしてるの?」


「……惚れてる」


えっ、と私が息を呑む暇もなかった。


湊くんの顔が近づき、彼の唇が、私の唇にそっと重なった。


ラブ・ミッションの時の強引なキスじゃない。


温かくて、優しくて、大切に想ってくれていることが伝わってくる、本当のキス。


「これはミッションじゃない。俺の、お前への誓いだ」


唇を離した彼は、今までで一番優しくて、かっこいい笑顔を見せた。


私の顔は、きっと朝焼けよりも真っ赤になっているだろう。


デスゲームから始まった私たちの恋は、ここからようやく、本当のスタートを切るのだ。


<了>

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