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  作者: 六木 正道


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爪はきちんと綺麗にしないとね

私は爪を切る。いつも、いつも丁寧に、私はこの時間がとても好きなのだ。私は切った爪は切った日付を書いた瓶に収集し、棚に並べ保管する。

私は爪を切る。いつものように早朝の時間帯、必ず朝の5時半には起床する。私はその後一杯の塩水を飲み干しそのまま団地の周りを20分ほど散歩する。これが私の日課なのである。帰ってくると年中関係なく冷水でシャワーを2分ほど浴びる。今ではだいぶ慣れたが最初の方は少し冷たい。私は咆哮する。反射的に少し叫びたくなるのだ。この瞬間がとても気持ちいい。私は爪を切る。

 そしてゆっくりとコーヒーを淹れる。ゆっくりを流れるこの時間この手間がたまらないのだ。もちろん豆から挽く。豆から挽いた方が香りが違うのだ。私は毎朝このコーヒーを二杯とパンの上に納豆をトッピングしたトーストを必ず毎朝食べる。昔から洋食を食べるのが習慣となっていたが、和の心を忘れてはならぬ。大和魂。だから私は、パンの上に納豆を乗せて食べる。納豆を食べれない日本人など日本人とは認めない。私は西洋と和の心を持ち合わせているのだ。

 朝食を済ませた後は私はスーツに着替え朝の7時ごろには家を出る。「いってきます。少しの辛抱だ。」私は会社までは歩いていく。電車や自転車などの交通手段は使わない。みんな自分の足があるのに。そのありがたみ歩けることの幸せに気づいていない。また私は、朝の閑静な時間を一人ゆっくり歩くのが好きなのだ。私は会社にも友人や知人などといった上辺だけの関係を築くのはまっぴらごめんだ。周りの人間は私から言わせればただの喋るだけのロボットにしか過ぎない。なので業務以外の会話は決してしない。干渉すらもしないのだ。私はひっそりと静かに暮らしたいのだ。

 お昼になると会社から離れたいつものパン屋に行く。私は決まってそこでベーコンサンドを必ず2個買う。「持ち帰ればきっと喜ぶに違いない。」私は胸を昂らせ公園のベンチで一人昼食を済ませる。昼食を済ませると昼の業務に取り掛かる。私の会社は給料が良いとか福利厚生が良いベンチャー企業などではなく、必ず定時で帰れる中小企業なのだ。私は定時で帰ることができ、家から近いこの会社を気に入っている。

 私は必ず5時半には会社を出る。同僚たちはまだ残業で会社に残るらしい。私はそんなことはしない。颯爽と家へ帰るのだ。待っている人がいるのだから。「ただいま。帰ったよ。」返事はない。まぁいい。少しご機嫌斜めなのであろう。私は夜ご飯を作る。買ってきたベーコンサンドは夜食に食べれば良いだろう。夜はパスタである。私の作るパスタは周りから見れば一見変わっているがこれが一番好きなのだ。まずはキャベツを千切りしていく。包丁から伝わるザクザクとしたキャベツを切る感覚が手に伝わる。たまらない。切るという行為は私のむしゃくしゃした気持ちを抑えてくれる。おっと忘れていた。いつも料理をしている間は音楽をかけるのだった。つい私としたことが、切る手を止めてレコーダーにCDを入れる。私がいつも聴くのは決まってヴィバルディの「四季」である。音楽はこれに限る。料理の再開だ。私の包丁の切るスピードはまるで指揮者のようにメロディをなぞっていく。気づけばキャベツは無くなっていた。その後パスタを茹で、切ったキャベツとと絡ませる。その上に決まって納豆を2パックと卵の白身だけをかける。これが私のいつもの夕食なのだ。卵の黄身は私はあまり好まない。なぜなら、卵もそういう用途で消費者の私に買われているわけではないと感じると興奮するのだ。命の塊の黄身を食べるより、周りの白い白濁したものに私はとても惹かれる。そう言う癖みたいなものだ。私はこのパスタを一度も噛まずに赤ワインで流し込む。「うん、すごく美味しい。」「君はまた食べないのか?」いつも私以外は誰一人としてこのパスタに手をつけない。「まぁいいだろう。きちんと食べるように教育しないとな、」まぁそういうところも可愛いのだが、いつものことなので目を瞑る。私は何ていい男なのだろう。

私は爪を切る。

第一話 (爪)

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まさかの男の人とは! 小説は最近読むようになって小説家になろうでははしめて読ませていただきました。
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