↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
罪と英雄(SIN-HERO)  作者: 三川三山
第3部 霧島蓮編
PR
51/51

エピローグ 新しい冒険

結局。


霧島蓮は大学を買うことができなかった。


「国立大学だから無理です」


と、法務部に半笑いで言われてしまったのである。


少しだけ本気だっただけにショックは大きかった。


しかし。


落ち込んでばかりもいられない。


人生は冒険なのだから。


宇宙粒体生物との戦いは終わった。


山田真は家族の元へ帰った。


博樹とHEROは大学で研究を続けている。


福島まどかも順調に回復していた。


皆、それぞれの未来へ進み始めていた。


そして霧島も。


自分の進むべき道を見つけていた。


白血病患者支援団体。


それが霧島の新しい挑戦だった。


自分の私財を注ぎ込む。


イデア社からの支援も取り付ける。


全国を回る。


講演活動も行う。


骨髄バンク登録推進キャンペーンも始める。


なぜそこまでするのか。


理由は簡単だった。


俺が犯人だからだ。


吸血鬼事件。


世間では未解決事件として語られている。


だが霧島は知っている。


犯人は自分だ。


誰かを救いたかった。


その一心だった。


だが。


犯罪である事実は変わらない。


「罪は消えないよな」


執務室の窓から夜景を眺めながら呟く。


誰も答えない。


だが。


それでも前へ進まなければならなかった。


妹のためにも。


洋子。


最後まで笑顔だった妹。


「お兄ちゃん」


と呼んでくれた妹。


自分はあの日。


彼女を救えなかった。


だからせめて。


同じ悲しみを味わう人を減らしたかった。


ゼロにしたかった。


その想いだけが。


霧島を突き動かしていた。


しかし現実は簡単ではない。


骨髄バンク登録者数は思うように増えない。


若い世代への浸透も十分ではない。


広告を出しても。


映画を作っても。


ドラマを支援しても。


なかなか変わらなかった。


「難しいなあ」


頭を抱える。


そんな時。


ふと思いついた。


スマートフォン。


今や誰もが持っている。


もし。


もっと手軽に登録できたら。


もっと簡単に適合可能性を調べられたら。


登録者は増えるのではないか。


「面白いかもしれない」


研究者の顔になる。


手汗。


呼気。


生体データ。


AI解析。


ナノテクノロジー。


イデア社なら実現できるかもしれない。


人を監視するためではない。


救うために使う。


今度こそ。


正しい方法で。


そう強く思った。


ある日曜日。


霧島は家族を連れて群馬県へ向かった。


故郷。


旧六合村。


子供のころ駆け回った山々。


赤岩の集落。


尻焼温泉。


チャツボミゴケ公園。


野反湖。


どれも変わらない。


車窓から見える景色に懐かしさが込み上げる。


「パパの故郷なの?」


娘が聞いてくる。


「ああ」


霧島は微笑んだ。


「世界で一番好きな場所だよ」


そして。


一行は墓地へ到着した。


洋子の墓。


周囲には山野草が咲いている。


妹が好きだった花たち。


風に揺れていた。


霧島は静かに手を合わせる。


家族は少し離れた場所で待ってくれている。


墓前には。


兄と妹だけだった。


「洋子」


静かな声で語りかける。


「報告があるんだ」


遠くで鳥が鳴いた。


「宇宙人との戦いは終わった」


少し笑う。


文字にしたら馬鹿げた話だ。


だが本当だった。


「真も帰ってきた」


「博樹も元気だ」


「まどかさんも助かった」


風が吹く。


まるで返事のようだった。


霧島は続ける。


「それから」


「俺は次の冒険を見つけた」


少しだけ空を見上げる。


青空だった。


「骨髄ドナーを増やす」


「誰もお前みたいな思いをしないように」


「誰も俺みたいな後悔をしないように」


「それを人生をかけてやる」


涙は流れなかった。


もう泣くだけの時間は終わった。


今は前へ進む時だった。


「だから見ていてくれ」


優しく笑う。


「今度の冒険は」


「人を救う冒険なんだ」


山の風が吹き抜ける。


花々が揺れる。


その光景が。


妹の微笑みに見えた。


霧島蓮はゆっくり立ち上がった。


人生は冒険だ。


楽しいこともある。


苦しいこともある。


間違えることもある。


罪を犯してしまうことだってある。


それでも。


人は前へ進める。


未来へ向かって歩いていける。


だから。


霧島蓮は再び歩き始めた。


新しい冒険へ向かって。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。