第十話「本体判定」
ゴォォン……
その音が鳴った瞬間、重なっていた二つの彼の境界が“線”になる。
これまで曖昧だったものが、急に区切られ始める。
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彼は動けない。
しかし“もう一人の彼”は動いている。
こちらへ向かっている。
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白い影が言う。
「本体判定が始まる」
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彼は問い返す。
「判定って何を決める」
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影は答えない。
代わりに空間が割れる。
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そこに現れるのは、鐘でも都市でもない。
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“評価の場”。
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何かを測るための構造だけが存在している。
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逆側の彼が、ゆっくりと前に出る。
その動きは滑らかだが、人間的ではない。
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彼は気づく。
あれは自分ではない。
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選ばれなかった自分の総体。
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ゴォォン……
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音が鳴るたびに、二人の情報が交換されていく。
記憶
感情
選択の履歴
未選択の可能性
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白い影が静かに言う。
「どちらが“継続しているか”を決める」
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彼は息を呑む。
「つまり……勝った方が俺になるのか」
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影は否定しない。
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逆側の彼が口を開く。
しかし声は一つではない。
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無数の“もしも”が重なった音。
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『俺は全ての選択を持っている』
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彼は震える。
「全部の……俺?」
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ゴォォン……
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空間が一瞬だけ止まる。
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白い影が言う。
「それでも一つしか残れない」
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彼は理解する。
これは戦いではない。
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統合前の最終選別だ。
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二人の距離がゼロになる。
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その瞬間。
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評価の場が“問い”を出す。
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『どちらが“継続する観測者”か』
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ゴォォン……
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音が消える。
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完全な無音。
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そして次の瞬間。
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彼ともう一人の彼が、同時に答える。
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第四章・第十一話
「観測者決定」へ続く。




