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『鐘哭(しょうこく) ― 山奥に響く死の音 ―』  作者: こうた
第四章 「残響起動(ざんきょうきどう)」

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第十話「本体判定」

ゴォォン……


その音が鳴った瞬間、重なっていた二つの彼の境界が“線”になる。


これまで曖昧だったものが、急に区切られ始める。



---


彼は動けない。


しかし“もう一人の彼”は動いている。


こちらへ向かっている。



---


白い影が言う。


「本体判定が始まる」



---


彼は問い返す。


「判定って何を決める」



---


影は答えない。


代わりに空間が割れる。



---


そこに現れるのは、鐘でも都市でもない。



---


“評価の場”。



---


何かを測るための構造だけが存在している。



---


逆側の彼が、ゆっくりと前に出る。


その動きは滑らかだが、人間的ではない。



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彼は気づく。


あれは自分ではない。



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選ばれなかった自分の総体。



---


ゴォォン……



---


音が鳴るたびに、二人の情報が交換されていく。


記憶


感情


選択の履歴


未選択の可能性




---


白い影が静かに言う。


「どちらが“継続しているか”を決める」



---


彼は息を呑む。


「つまり……勝った方が俺になるのか」



---


影は否定しない。



---


逆側の彼が口を開く。


しかし声は一つではない。



---


無数の“もしも”が重なった音。



---


『俺は全ての選択を持っている』



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彼は震える。


「全部の……俺?」



---


ゴォォン……



---


空間が一瞬だけ止まる。



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白い影が言う。


「それでも一つしか残れない」



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彼は理解する。


これは戦いではない。



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統合前の最終選別だ。



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二人の距離がゼロになる。



---


その瞬間。



---


評価の場が“問い”を出す。



---


『どちらが“継続する観測者”か』



---


ゴォォン……



---


音が消える。



---


完全な無音。



---


そして次の瞬間。



---


彼ともう一人の彼が、同時に答える。



---


第四章・第十一話


「観測者決定」へ続く。

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