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『鐘哭(しょうこく) ― 山奥に響く死の音 ―』  作者: こうた
第四章 「残響起動(ざんきょうきどう)」

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第三話「未完成観測」

ゴォォン……


その音は、もう“聞くもの”ではなかった。


世界の読み込み速度そのものになっている。



---


裂け目の奥。


再起層のさらに内側。


そこに、ひとつの“観測点”が浮かんでいた。



---


彼はそこを見ている。


しかし同時に、“見られている”ことにも気づく。



---


「ここは観測する場所じゃない」


彼は呟く。



---


白い影が答える。


「逆だ」



---


ゴォォン……



---


音が鳴るたびに、観測点が増殖する。


一点だったものが、無数の目になる。



---


それぞれの観測点が、別々の現実を映し始める。


鐘が鳴らない世界


鐘が鳴り続ける世界


鐘そのものが消えた世界


鐘が人間を観測する世界




---


彼は眉をひそめる。


「全部、違うのに全部同じか」



---


白い影は頷く。


「未完成だから同時に存在できる」



---


ゴォォン……



---


音がひときわ強くなる。


観測点のひとつが揺れる。



---


そこに“平”の断片が見える。


だが人格ではない。


選択の残像。



---


次に“木村”。


それも人ではない。


分岐の記録。



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そして“鈴音”。


それは最も不安定だった。


境界の揺らぎそのもの。



---


彼は理解する。


「これは人じゃない」


「選択の痕跡だ」



---


白い影が静かに言う。


「未完成とは、固定されていない状態」



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ゴォォン……



---


観測点が一斉に彼を見る。



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その瞬間、彼の中に違和感が走る。



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「……俺もか」



---


沈黙。



---


そして影は答える。


「あなたも観測結果の一つだ」



---


裂け目が揺れる。


再起層が軋む。



---


世界の奥で、鐘が“微かに組み替わる音”がする。



---


彼は一歩踏み出す。


「なら、完成はどこだ」



---


白い影は裂け目の奥を指す。


そこには、まだ形のない中心がある。



---


ゴォォン……



---


音が静かになる。



---


代わりに“空白”が広がる。



---


白い影が言う。


「そこが次の未完成」



---


彼は目を細める。



---


第四章・第四話


「未定義の観測者」へ続く。

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