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『鐘哭(しょうこく) ― 山奥に響く死の音 ―』  作者: こうた
第三章「鐘哭都市(しょうこくとし)」

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第九話「収束点」

未定義領域が、ゆっくりと“形”を持ち始めていた。


それは建物でも空間でもない。


もっと根本的な、意味の配置だった。


ゴォォォン……


鐘の音が鳴るたびに、揺らぎが一点へ集まっていく。



---


青年は立っている場所を見失っていた。


さっきまで足元だったものが、今は天井のようにも感じられる。


距離の概念が崩れている。



---


白い影が静かに言う。


「ここが収束点」



---


「収束点……?」


青年の声は空間に吸い込まれる。



---


影は続ける。


「すべての選択が重なった場所」


「すべての時間が折りたたまれる場所」



---


ゴォォォン……



---


その音とともに、無数の“青年”が再び現れる。


だが今度は違う。


彼らは個別ではない。



---


一つの群体として動いている。



---


その中に、平の影がある。


木村の影がある。


鈴音の影がある。



---


すべてが“収束の途中”にある。



---


青年は息を呑む。


「これが……全部の結果か」



---


白い影は首を振る。


「まだ途中」



---


その瞬間、核鐘が見える。


完全な形に近づいている。


しかし中心にまだ“穴”がある。



---


そこだけが、決まっていない。



---


ゴォォォン……



---


鐘の音がその穴に吸い込まれる。



---


青年は理解する。


収束とは終わりではない。



---


選択の圧縮だ。



---


影が言う。


「この穴を埋めるものが、最後の世界になる」



---


青年は震える。


「埋めるって……何で」



---


返答の代わりに、空間が割れる。



---


そこに見えるのは三つの像。


平の記憶


木村の記憶


鈴音の記憶




---


それらは均等に揺れている。



---


影は続ける。


「どれか一つでは不完全」


「だが、全部は存在できない」



---


ゴォォォン……



---


音が一段深くなる。



---


青年の中に理解が落ちる。


これは“選択”ではない。



---


融合だ。



---


平の声。


『戻れ』


木村の声。


『進め』


鈴音の声。


『止めて』



---


三つの声が重なる。



---


青年は一歩踏み出す。


そして、穴の前に立つ。



---


白い影が最後に言う。


「ここで、鐘は完成する」



---


ゴォォォン……



---


第三章・第十話


「完成する音」へ続く。

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