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『鐘哭(しょうこく) ― 山奥に響く死の音 ―』  作者: こうた
第三章「鐘哭都市(しょうこくとし)」

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第七話「選択核」

核鐘は止まっていない。


むしろ“止まるという概念”を拒否しているようだった。


ゴォォォン……


その音は、もう周期ではない。


思考のように断続している。



---


青年の前に、二つの空間が並ぶ。


右は“外側”。


左は“内側”。


しかしどちらも同じ形をしていた。


円。



---


「……違いがない」


青年の声はかすれていた。



---


白い影が答える。


「違いは、観測者だけ」



---


核鐘の中心がわずかに開く。


そこから、声が漏れる。



---


平の声。


『選べ』


鈴音の声。


『まだ戻れる』


木村の声。


『もう遅い』



---


すべてが同時に響く。



---


青年は気づく。


これは助言ではない。


干渉だ。



---


ゴォォォン……



---


音が一段階深くなる。


駅、都市、神社、すべての層が“同期”し始める。



---


青年の視界に、さらに重なりが現れる。


崩壊前の都市


鐘が初めて鳴った村


まだ誰も死んでいない世界




---


それらが同時に存在している。



---


白い影が言う。


「選択は未来ではない」


「確定の分岐だ」



---


青年は一歩踏み出す。


しかしその瞬間、足元の円が割れる。



---


“記憶の層”が露出する。


そこに見えるのは、無数の青年自身だった。



---


選ばなかった青年。


選んだ青年。


壊れた青年。


鐘になった青年。



---


青年は息を呑む。


「俺は……一人じゃないのか」



---


ゴォォォン……



---


核鐘が鳴る。


それに合わせて、すべての“青年”が一斉にこちらを見る。



---


白い影が静かに言う。


「選択はすでに繰り返されている」



---


青年は叫ぶ。


「じゃあ意味ないだろ!」



---


影は首を振る。


「違う」


「繰り返すたびに“鐘の形”が変わる」



---


核鐘の中心が脈動する。


そこに、三つ目の空間が現れる。



---


“どちらでもない選択”。



---


青年は言葉を失う。



---


平の声が割り込む。


『そこだ』


鈴音の声。


『それが最後』


木村の声。


『それしかない』



---


ゴォォォン……



---


核鐘が完全に開く。



---


選択は三つになった。


外側へ戻る


内側へ沈む


どちらでもない第三の構造へ行く




---


白い影が最後に言う。


「決めろ」



---


青年は目を閉じる。



---


第三章・第八話


「未定義領域」へ続く。

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