エピローグ「雪解けの季節」
あれから数年が経ち、北部は大きく様変わりした。
私の薬草学の知識と、ヴォルフガングの統治能力によって、領地はかつてない繁栄を迎えている。特産の薬草や魔石を利用した暖房器具は王都でも高く評価され、交易が盛んになった。
今では「北の楽園」と呼ばれるほどだ。
オメガに対する偏見も、少しずつだが変わり始めている。私が自ら矢面に立ち、オメガの職業支援や教育を行う施設を作ったからだ。「能力に性は関係ない」という実例を示すことで、社会の意識を少しずつ溶かしていったのだ。
執務室の窓辺で、私は外の景色を眺めていた。
夕焼けに染まる街並み、活気ある人々の声。
「何を考えている」
背後からヴォルフガングが抱きしめてくる。年月を経ても変わらない、安心する匂いと体温。
「昔のことを、少し。……あの日、父に捨てられて本当に良かったなって」
「俺もだ。王都の連中には感謝状を送りたいくらいだな。お前という最高の宝をよこしてくれたのだから」
彼は私の首筋に残る噛み跡に口づけを落とす。
その愛の証は、生涯消えることはない。
「冬は必ず終わる。そして春が来る」
彼がつぶやいた言葉は、私たちの人生そのものだった。
厳しい冬を耐え抜いたからこそ、この暖かな春がある。
「ええ。これからもずっと、あなたと春を歩んでいきたいです」
私は振り返り、彼の首に腕を回した。
黄金の瞳が、優しく微笑んでいる。
二人の影が夕日に長く伸び、一つに重なり合う。
物語はここで一区切りだが、私たちの愛の旅路は、この先も永遠に続いていくのだ。




