秒読み(カウントダウン)の罠
新天地の古代遺跡を探索していたクロノたちの前に、前文明が残した防衛機構――魔力式の自爆装置が突如として起動した。壁に浮かび上がった光の数字が、凄まじい速度で減少していく。残り時間はわずか数分。
「おいおい、この魔力の脈動……まともに炸裂したら、この遺跡ごと跡形もなく吹き飛ぶぞ!」
ガイルが冷や汗を流し、ルナも障壁魔法を構えるが、あまりのエネルギー量に顔を青くする。
システムによる『完全看破』のスキルはもうない。しかし、クロノの瞳は冷静だった。彼はこれまでの旅で得た知識と経験だけを頼りに、自爆装置の複雑な魔力回路を凝視する。
「焦る必要はありません。システムのアシストがなくても、この回路の構造はかつて天界の演算機で見た基礎的な数式と同じです。――ルナ、右から3番目の魔力線を、あなたの魔力で優しく『相殺』してください。千代さんは左の術式を刀の鞘で物理的に遮断を」
「わ、わかったわ……!」
「御意」
二人がクロノの正確な指示通りに動くと、激しく明滅していた赤色の光が、一瞬だけ緑色へと変化した。
「ジードさん、中央のコアが露出した瞬間に、影の棘で魔力の供給源を同時に3箇所突いてください。1ミリでもズレると暴走します。タイミングは……今!」
「ははっ、スリル満点だねぇ!」
ジードの影が正確無比にコアを貫いた。
カチリ、と静かな音が響き、遺跡を震わせていた不気味な駆動音が完全に停止する。浮かび上がっていたカウントダウンの数字が「00:00」でピタリと止まり、周囲に安堵の空気が広がった。
「ふぅ……。スキルがなくても、みんなの確かな技術があれば、どんな罠もただのパズルですね」
クロノは額の汗を拭い、いつも通り涼やかに微笑んだ。力を失ってもなお、彼らの絆と知略はどんな絶望をも看破していくのだった。




