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第二十二話 おっさん、ホムラにリリの村を案内する 六 帰路

 教会で「奥さん」と言われたのが余程嬉しかったのか、スキップしながら横を歩くダリア。

 そして長い説教が終わりげんなりするオレ。

 何故か目を輝かせて「あの場」を心底楽しんでいた様子のホムラ。


 疲れた……。


 村社会の悪い点である。

 情報が——例え誤情報であれ——すぐに村中を()け巡る。

 なら他の村や町に行けば良いだろうという話になるが、もう住み慣れてしまった自分がいる。


 二人を連れて、軽く溜息をつきながら家に帰ろうとしたら——


 気配感知。


天誅(てんちゅう)!!! 」


 言葉と共に後ろから殴りかかるのを回避して、その小さな体を荷物を持つように片腕で()きかかえた。


「ガリザック。またいたずらか? 」

「くそぉ! 何でいつも(かわ)せるんだよ! 」

「馬鹿ね、ガリザック。幾らおじさんとはいえ現役の冒険者よ! あんたが一本でも取れるはずがないでしょ! 」

「う、(うるさ)い! リナ! 完璧に見えない所からだったじゃないか! 」


 声がする後ろを振り向くとそこには二人の男の子と女の子がいた。

 リナと呼ばれた女の子はオレに荷物のように(あつか)われているガリザックを見て笑い、その隣にいる男の子——ジグルはおどおどとした感じでリナとこちら側を交互にみていた。


「悪ガキ三人組。オレだからいいものを他の人にはやるなよ」

「うっせぇ! いつか打ちのめしてやるんだからよ! 」


 いつもオレにちょっかいを掛けてくる悪ガキ三人組。

 ガリザックだけでなく一括(ひとくく)りなのは、ガリザックとつるんでいるのと少し頭を使ったちょっかいをしてくるのがあのジグルだからだ。

 よって三人組。


 彼らを見て横からため息が聞こえる。

 ダリアが「いつものことですが」と前置きをしてガリザックを見た。


「そろそろ親御(おやご)さんに報告をしないといけないと思うのですが」

「げっ! そ、それがどうした! 」

「私は嫌よ! 報告するならガリザックだけにしてよね! 」

「ぼ、ぼくもなのですか?! 」


 ダリアの言葉に強がるガリザックに青ざめる二人。

 どうも、巻き込まれたくないらしい。

 しかしこいつらの行動を見ていると昔不意打ちのようにいつも殴りかかってきたやつを思い出す。のめしたが。


「当たり前です。同罪です」

「い、いや……流石に悪いとは思ってるわよ? 」

「今回ぼくなにもしてないのですが」

「流石に、ね。ほら、自警団(じけいだん)の怖い人達じゃ……ね」

「だからと言ってゼクトさんにかかっていっていいわけではありません。弟子(でし)ならともかく」


 ピシャリと言われ「ぐっ! 」と()まる子供達。

 そこまでして親に怒られたくないか。

 誰だって怒られたくないだろうが、ならばやらなければいいというわけで。

 まぁいたずらをしたくなる気持ちは分からなくもない。

 オレ達は訓練でそれどころじゃなかったが。


「ま、その(あま)りある元気は他に使ってくれ」


 そう言いながらジタバタもがくガリザックを解放する。

 大人しく二人の方へ行ったらこちらを向いた。


「今度こそ絶対に一撃を加えてやる!!! 不倫(ふりん)野郎! 」


 ぐはぁ!!!


 オレが崩れ落ちる中、三人はその場を去った。


 ★


 強烈(きょうれつ)な精神的ダメージを受けながら家につき、さも当然かの(ごと)くついて来たダリアを、さも当然のように通してオレは調理室へ。

 もらった肉をどう使うか考えつつも一先ず加工済みの肉を(いた)に置く。

 包丁で切り分け皿に()る。

 木の机の上にそれを持っていくと、上にあったベリーで(かざ)ってこれは終了。

 他にも幾つか作って食堂へと持っていくのであった。


「出来たぞ」


 昼。

 腹をすかせたダリアとオレの料理に興味津々なホムラの前に出来たものを運んでいった。


「余ったベリーは」

「もちろんある。ほら」


 といい別の更に盛ったベリーを持ってきた。しかしまだ手は出させない。

 手に取ろうとする手を「パシン! 」と(はた)いて()ける。

 ヒリヒリとするのか軽く手を見るダリアだがこれはデザート。

 果実類なんてあまり出せないんだから、今日ぐらい我慢して欲しい。


 机の上にはベリーで(かざ)った肉に、保存用の魔道具に入れていた昨日のスープ。

 スープは自分で温熱(ヒート)を使って温め、出しているためか湯気(ゆげ)が出ている。


「いい匂いだ」

「ええ。流石ゼクトさんです」

「いや、これが出来ないダリアは相当(そうとう)だぞ? 」


 芳醇(ほうじゅん)(かお)りの中そう言うと、ダリアが軽く気まずそうに顔を()らした。

 ダリアの料理は毒物以上の何かだ。

 魔道具を使うと少しはましになるのだが、何故かおかしな色になったりする。


 ある時何がいけないのか様子を見ながらやっていたが、ふと目を離した瞬間に色が変貌(へんぼう)するという魔法も真っ青なことをしでかした。

 恐らくだが何か入れているのだろうが、それでもあの変化は今でも恐ろしい。

 なのでオレの調理場には彼女は絶対に入れないようにしている。


 ダリアが目を()らした先には、彼女とは逆に昨日と似たようなメニューというのにも関わらずどこかウキウキとしているホムラがいた。

 その目線の先を見ると加工された薄切りの肉とベリーを行き来していた。


 ……。ここに来るまでに一体何を食べてきたんだ?


 彼女の精霊人形(エレメンタル・ドール)時の食生活が気になるが、聞かない方が良さそうだ。


「さ、食べよう」


 そう言いながら祈りの言葉を口にして、料理を食べた。


「そうえいばホムラさんはこれからどうするのですか? 」


 食後、そう切り出したのはダリアであった。

 壮絶(そうぜつ)なるベリー獲得戦を()てたのだがホムラの今後が気になるらしい。

 オレも気になる。


「一先ずは冒険者として働いてみようと思う」

「それが良いと思います」


 軽く指を(あご)に手をやり上を向いて考え、ホムラがそう言うとすぐさまダリアが全押しした。

 オレとしても——例え歩く国家機密だとしても——冒険者ギルドの人手が増えるのは助かる。

 しかし……。


「では恒例(こうれい)通りゼクトさんが彼女の講習(こうしゅう)係ですね」

「……。やっぱりか。実践(じっせん)は良いが」

「分かっています。座学(ざがく)はいつも通り他の人に任せましょう」


 オレがそう言うと同意するダリア。

 オレは座学(ざがく)を教えるのが苦手だ。戦闘や実践ならともかく、それこそダリアの料理の(ごと)壊滅的(かいめつてき)


「だがホムラに講習は必要なのか? 」

「? というと? 」

「座学は分からないが戦闘においてはオレ以上に強いぞ? 」


 そうなのですか? と隣を見るダリア。

 見られたホムラは少し恥ずかし気に「確かにいい戦闘はした」とだけ言った。


「なら座学だけか……一層のこと講習なしにするか、だな。あれって確か自由参加だったよな? 」

「そうですね……。しかし両方ともやってもらいましょう」

「? まぁ本人が構わないのなら、オレは構わないが」


 ホムラの方をみると「構わない」と少し目を輝かせて頷いた。


「単なる戦闘と冒険者業は違います。それこそ自警団と冒険者の違いくらいには」

「まぁ確かに」

「なので受けてもらいましょう」


 いざ冒険者のことになると真剣になるダリア。

 この後もホムラがどうするか考え、ダリアを (強制的に)家に帰して、今日は終わった。

ここまで如何だったでしょうか?


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