第二十一話 おっさん、ホムラにリリの村を案内する 五 各所案内 三
「ここがこの村の市場だ」
「おお! 活気があるな」
「そうですね。他の村や町と比べても遜色がないほどだとおもいます」
治療院の次に市場に来た。
ホムラを各所で紹介するのに時間が経ったせいか、食べ物を売る人達が店を並べてそれぞれの家の奥さんが食べ物を買っている。
それと同時に世間話に花を咲かせているのは御愛嬌。
小物を売る店はもう少し後から店を開くだろう。
まだ開いていないようすだ。
「さて……何か買って帰るか」
「昼は久しぶりに果実系が良いと進言します」
「何故にオレに言う? 」
「それは一緒に食べたいからです」
何を当たり前な、という表情をしてきっぱりというダリア。
ダリアの顔が少し動いたかと思うと、ホムラがそれに便乗して口を開く。
「そうだな。この辺の果実は食べたことがない。何か美味しいものでもあれば食べてみたいのだが」
「……オレは質素が基本なのだが」
「金はある」
そうでしたね。
ホムラさん。貴方はお金持ちでしたね。
「だがこの辺と言ってもこの村の果実は違う村から仕入れた物が殆どだぞ? 」
「構わない。と、いうよりもこの国に来て果実というものを食べていない」
「いや。普通は果実は食べないから。高級品だから」
するとダリアが横から顔を覗かせる。
「それは分かっていますとも。しかしあるでしょう? 庶民である私達でも食べれる果実は」
「ま、まぁ……あるが」
「ならそれが良い! そして三人で食べよう! 」
盛り上がる二人を横目に軽く嘆息し「果実以外の食べ物も探さないと」と考え市場を探索した。
「あら? あらあらあら! ゼクトちゃんじゃない! 」
そう声をかけてきたのは狼獣人の肉屋さんだった。
いつも以上にテンションが高い彼女に嫌な予感を覚えながらも、足を止め挨拶を。
「おはようございます」
「はい。おはよう。あら! ダリアちゃんも! そして噂の子も! 」
だから噂ってなんだよ!!!
「おはようございます。こちらはホムラさん。この村に住むことになりましたので私共々よろしくお願いします」
「ホムラだ。よろしく頼む! 」
「ダリアちゃんもホムラちゃんもよろしくね。にしても大変ね。二人共」
その言葉に首を傾げるダリアとホムラ。
「だって、ねぇ。聞いた時は吃驚しちゃったわ」
「なにを、でしょうか? 」
「ダリアちゃん! ちょっとこっちに! 」
そう言われダリアが肉屋さんに引っ張られて行ってしまった。
何やらこそこそ話している。
「……え。そうなの?! 」
「ええ。実は……」
「あんらぁまぁ! それはそれは」
「なので出来れば」
「いいわよ。任せなさい」
「よろしくお願いします」
……。
「二人は何の話をしてるんだ? 」
話している二人から目を逸らしオレの方をみて心底わからない風の顔をするホムラ。
十中八九、ホムラとオレの事だろう。
だが、言わない方が、良いんだろうな。
「さぁ? さっぱりだ」
「この村の事で貴君にもわからない事があるんだな」
「分からない事ばかりだよ」
肩を窄めてそう言っていると二人が帰ってきた。
ダリアは何も無かったかのような顔で、狼獣人の奥さんはニコニコとした表情で。
……。不安だ。
「誤解しちゃってごめんね。皆に言っておくわ」
「なにが、ですか? 」
「はい、これおまけのお肉。沢山食べて頑張ってね」
「ありがとうございます」
内容を聞こうとするとダリアが肉を受け取りお辞儀をしてオレ達を引っ張ってその場を離れた。
お肉をアイテムバックに入れ、さっきのやり取りが気になるも「これ以上聞くな」という雰囲気を出しているダリアに聞けずそのまま果実店へ。
「おや。色男のゼクトじゃねぇか」
「誰が色男ですか」
「朝から美の結晶たるダリアと美しき新人を引き連れて何を言う」
悲しきかな。そう言う熊獣人の店主に言い返せれない。
悔しく、顔を歪ませていると店主が豪快に笑いながら口を開いた。
「ガハハハハハ! ま、女共の噂好きにも困ったもんだが……気にするな」
その言葉が——染みる。
「で、今日は何にする? 」
「……ベリーを一袋」
「あいよ」
店主が小さなスコップで紫色のベリーをすくい、袋に詰めてこちらに渡す。
受け取ったら、「あ、そう言えば」と何やら言い出した。
「なぁ何か最近ものの仕入れが遅くなってるんだが、何か原因知らねぇか? 」
「? それこそ初耳なのですが」
「そうか。知らねぇか。冒険者やってるゼクトなら何か情報がねぇかと思ったんだが」
「仕入れ先の商人から聞いたらどうです? 」
「どうも遠回りしているらしいんだ。もしかすっと値上げするかもしれねぇから覚悟してな」
「勘弁してください」
「はは。わりぃな。こればっかりはどうにもならねぇ。しっかし何なんだろうな」
その後首を傾げて考える熊店主と話し合うも結論が出なかった。
店を離れて女物を扱う店に行ったが、まだ開いていなかった。
結局、その足で最後の場所へと向かうのであった。
★
「おや。ゼクト君ではありませんか」
「エリック助祭。おはようございます」
「おはよう。そしてダリア君に……」
オレの方をみて笑顔で挨拶するエリック助祭。
どうやら朝の祈祷が終わった後のようで、丁度教会の真ん中を歩いてこちらに来ている所だった。
教会は他の建物と違い石造り。
そして中はというと開いている大きな窓から差し込む光が神像を照らしている。
教会も清潔そのものだが治療院のように薬草の臭いがするわけではなく、清楚な——澄んだ空気が流れている。
こちらに来る助祭にダリアはまず挨拶し、隣を向いた。
「おはようございます。エリック助祭。こちらは本日よりこの村に住むことになりましたホムラさんと言います」
「ホムラだ。よろしく頼む」
「ホムラ君ですか。こちらこそよろしくお願いしますね」
と、にこやかに話すエリック助祭。
紹介していると外から音が聞こえてきた。
「どうやら修道士の者達が外での務めを果たしてきたようですね」
「務め? 」
「ええ、ホムラ君。私を含め朝は朝、昼は昼そして夜は夜にそれぞれ行うべき習慣があるのです。と言ってもそんなに厳しいものではなく、単に祈りを捧げ、今日もまた村の者が無事一日を過ごせるように祈るくらいですが」
そう説明してる間に男女入り混じった白い修道士の服を着た人達が教会に入ってきた。
そしてこちらを見る。
「おはようございます。不倫殿」
「おはようござ……え? 今何と」
「不倫殿。おはようございます」
また違う修道士からそう言われた。
不倫なんてしてないぞ?!
すぐさまエリック助祭の方をみた。
が、首を横に振り何もなかったかのように神像の方へ行き祈りを捧げていた。
逃げやがった!!!
「不倫殿。不倫はいけませぬ。せめて奥さんと話し合ってから出ないと」
「左様。いくらこの国が一夫多妻とはいえ不倫はいけませぬ」
「……オレ恋人すらいないんだが」
「そのようなことを言ってはダリア嬢が悲しまれるじゃないですか」
「奥さんは大事にしないと」
「せめてダリア嬢に説明した後、籍を入れるべきでは? 」
後ろで……エリック助祭の祈りが強くなった気がした。
どうにか無事にオレが帰れるように、と。
ここまで如何だったでしょうか?
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