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第二十話 おっさん、ホムラにリリの村を案内する 五 各所案内 二

 ガンツさんの家、というか工房を出たオレ達はその足で次の場所、治療院へと向かっている。

 ちらりと横を見て思い返す。


 正直あそこまでガンツさんとホムラの気が会うとは思わなかった。

 しかもバレずに、だ。

 途中でバレるかもしれないと冷や冷やしていたオレが馬鹿なようだ。


 ふぅ、と息を吐きホムラから目を()らして前を向いた。


「お。なんか大きな建物が見えてきたな」

「ああ。あれがこの村の治療院だ」


 周りよりもがっしりとした白い建物が目に入る。

 そしてオレ達は扉を叩き、中へ入っていった。


 中に入ると薬草の臭いが(ただよ)ってきた。

 軽く左右を見たが流石冒険者ギルドの受付嬢に精霊人形(エレメンタル・ドール)

 表情一つ変えずに周りを見渡している。


「ホムラさんは治療院に来たことは? 」

「あまり怪我とは無縁(むえん)だったのでな。来たことはない」

「にしては、臭い、気にならないのですか? 」

「それに関しては大丈夫だ。国で薬草を採っていたりしていたからな」


 何とか誤魔化せたようだ。

 人形である彼女だが味覚や触覚があるのならば嗅覚もあると思う。

 しかし表情一つ変えないのは本当に気にしていないのか、嗅覚を担っている魔法を切っているからだろう。

 彼女が人形であることがバレないか様子を見ながら少し進む。


「いつきてもそうだが綺麗(きれい)掃除(そうじ)されてるな」

「女性が多い職場なので」

「掃除が行き届いている、と。しかしその言い方だと男性が綺麗好きではないと言っているようなものなんだが」

「事実では? 」

「ほぅ……。ならばオレが家の片付けに行かなくてもダリアの家はゴミ屋敷にならないと」

失言(しつげん)でした。謝りますのでこれからも来てください」

「分かればよろしい」


 そう言いつつ先に進む。

 右に左に見てみると椅子に座った人族や獣人族のご老人が談笑(だんしょう)していた。

 患者はいないようだ。珍しい。

 受付まで行くと、そこには看護師がオレ達に気が付いたようだ。


「あら。ゼクトさんじゃない」

「おはようございます」

「皆~。ゼクトさんが来てくれたわよ! 」

「え、あ、ちょっと」


 止める間もなく受付から離れ同僚(どうりょう)を呼びに行った。

 間を空けることもなく足音が聞こえ、控室(ひかえしつ)のようなところから数人の看護師達が見えてくる。


「おう。この前は助かったぜ」

「それはよかったよ」

「本当よ。あんなにスタミナ草が必要になるとは思わなかったわ」

「最悪この男に頼もうかと思ってたわよ」

「やっぱりゼクトさんじゃないとだめね」


「にしても……噂は本当だったのね」

「噂? 」


 嫌な予感しかしない!


「あ、いや何でもないのよ? オホホホホ」


 不安を(あお)るような、高飛車(たかびしゃ)な笑い方をする看護師。


 オレと看護師達が話していると後ろから少し冷たい空気が流れた。

 タタタ、と足踏みをする音が聞こえる。

 ダリアが不機嫌なようだ。だが今回はオレは悪くない!

 彼女の雰囲気に少し当てられているとまた違う部屋が開く様子が見えた。


「……騒がしいと思ったらお前か、ゼクト」

「ルック院長」


 オレと看護師達が話していると少し気難しそうな人族の男性がやってきた。

 彼はこの村の治療院の院長のルックさんだ。


「ゼクトがくると騒がしくなるから(かな)わん」

「院長。なんですか、その態度。セクトさんはこの前ものすごい量のスタミナ草を持ってきてくれたじゃないですか。お礼を言うくらいいいじゃない」

「そうよ! 」

「それに関して、なにも()めていない。むしろボクも感謝している。だが場所を選んでほしい」


 そう言いつつ周りを見た。

 だがそこにいるご老人達は「気にしないでねぇ」と言いつつまた会話に戻った。

 ルック院長は少し溜息をつき、再度こちらをむいた。

 そんな院長に聞いてみる。


「ルック院長。あんな大量のスタミナ草、誰か怪我人でも出たのですか? 」

「いや、そうじゃない」


 ぶっきらぼうな顔でそう言い、「君達ははやく仕事に戻り(たま)え」と指示を出す院長。

 渋々(しぶしぶ)と言った感じで全員移動し、仕事に戻る。

 それを確認した後院長が違う部屋に案内してくれた。


 移動するとそこは受付とは(こと)なり少し豪華なソファーがある部屋だった。


「ここは応接室だ。ま、座ってくれ」


 (うなが)されるままに座るオレ達。

 オレとダリアが座り、何故かホムラは後ろに立った。

 確かに狭くはあるが三人座れないことはないのだが。


 良い(かお)りが(ただよ)う。

 きっと密着(みっちゃく)するように隣にダリアが座ったせいだろう。

 オレ達の様子を見て(あき)れた顔をしながらもルック院長が口を開く。


「あのスタミナ草で傷薬を作ったせいか寝不足だ」


 (ひじ)を足につき、(ささ)えられる院長の顔をよく観察すると(くま)が出来ていた。


「まさか全部一夜で使ったのですか?! 」

「ああ。全く迷惑この上ない」

「? その言い方だと、他の人に頼まれたとかでしょうか? 」


 それに溜息をつき、頷く院長。


「いつも来る商人に頼まれた。どうもここから少し離れた村で使用するとか」

「隣村ではないので? 」

「あそこは自分の所で(まかな)えるだろう。単にスタミナ草が無いだけで」

「そう言えば隣村だけでなく少し遠い村の依頼もありましたね。スタミナ草の依頼」

「……誰かがかき集めているのか? いや。どこかの村で大量のけが人が出たとか、か」


 腕を組み考える院長。


「土木系の事故……が一番わかりやすいが」

「大量に必要となると今の所そのくらいしか思いつきませんね」

衛兵(えいへい)や騎士ならば、そもそもお(かか)えの薬師がいるだろうしな。わざわざ村から買い取るような方法はしないだろう」

「で、結局渡せたのですか? 」

「ああ。徹夜(てつや)で作って、早朝に出した。向こうも相当(あせ)っていたようで、商人も徹夜(てつや)で治療院に張り付いていたな。なんでこんな量が必要なのか聞いておくべきだったか」


 そう言うと疲れた顔をして「ふぅ」と息を吐いた。


「まぁ考えていても仕方ない。この村で使わない分だけマシというものだ。で、今日は本当に何用だ? 結婚報告、ではなさそうだが……」

「……後ろにいる新しい住人——ホムラの紹介に来ました」

「なるほど。見かけない顔がいると思ったら新顔(しんがお)だったか」

「私はホムラだ。よろしく頼む」

「ああ。こちらこそ頼む」

「彼女は冒険者ギルドにも登録したのでスタミナ草の採取が(はかど)りそうです」

「それは助かる。だが、採り過ぎないようにな」


 分かっていますって、と言いながらもオレ達は院長と別れ、話を終えて次の場所へ向かった。

ここまで如何だったでしょうか?


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