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クズ勇者が優秀な回復師を追放したので、私達のパーティはもう終わりです  作者: 江本マシメサ
第三章 大森林の大問題

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26/90

食事の時間にしたい

 勇者様が魔法学校で習ったと言う、キュア薬草を使った魔法薬の作り方を教えてくれる。

 

「材料はキュア薬草、水、魔力、以上だ」

「キュア薬草の魔法薬は、聖水でなくてもいいんですね」

「ああ。キュア薬草の場合は、あとから魔力を付与しないと、薬効がなくなるんだ」

「へー」


 勇者様はいつになく真剣な様子で、魔法薬作りを教えてくれた。


「まず、キュア薬草を手で千切り、水に浸す。続いて、魔力を付与し、よく練るのだ」


 すると、水分が蒸発し、粘りがでてくる。これを丸めたら完成のようだ。

 念のため、千里眼で調べてみる。


「なるほど。これがキュア丸薬、ですか」

「ああ、そうだ」


 無事、成功したようだ。

 キュア丸薬はヒール丸薬よりも遥かに高い回復力があるようだ。

 大森林の散策できっと薬に立つだろう。


「よし。魔法使い、お前も作ってみろ」

「無理です」

「なぜ、やる前から諦めるのだ!?」

「私、魔力の付与の仕方を知りませんので。混ぜるだけだったヒール丸薬であれば作成可能ですが、キュア丸薬は作れないですね」

「付与魔法は初歩的な技術だろうが!」

「魔法学校に入学して入門編から魔法を習った勇者様とは違って、私は独学で習得したものですから、できることとできないことに差があるのは当たり前です」


 勇者様から呆れたようにため息を吐かれてしまう。

そんな私と勇者様の言い合いを、イッヌとぶーちゃんはハラハラした様子で見ていたようだ。

 これは通常営業なので、そこまで心配する必要はない。

 しかしながら次の瞬間、ぶーちゃんが思いがけない行動に出る。


『ぴいいいいいいっ!!』


 辺りに生えるキュア薬草の上に魔法陣が浮かび上がる。もう一度『ぴいいいいい!!』と鳴くと、風の刃みたいなものでキュア薬草が切り裂かれた。

 さらに『ぴいいいい!!』と鳴き声をあげると、空気中の水分を集め、刻まれたキュア薬草と混ざる。

 最後のひと鳴きで、魔力が付与された。

 あっという間に、十個ほどのキュア丸薬が完成させる。


「おお! お前はそんな芸当ができたのか! さすが、私が見込んだ非常食だ!」

『ぴい!』


 さすが、聖猪グリンブルスティである。魔法薬の同時作成は極めて容易なことなのだろう。勇者様はぶーちゃんの頭を撫でながら、優秀な非常食だと褒めちぎっていた。

 勇者様が喜んでいるので、イッヌも跳びはねて喜んでいる。なんとも平和な光景であった。


「キュア丸薬を作ったら、腹が減ったな」


 ぶーちゃんが空腹をアピールするならばまだしも、勇者様はたった一個しか作っていなかったのだが。

 勇者様は腕組みし、どっしり構えた様子で宣言する。


「よし、食事にしよう!!」


 勇者様は尊大な様子で、私に食材を寄越すように言う。


「おい魔法使い、一刻も早く食材を出すのだ!」

「いや、食材なんてありませんが」

「なんだと!? 市場でたくさん買っただろうが!」

「あの、勇者様、市場で購入した食材のすべては、ぶーちゃんに与えるために買ったものです。今回、私達が食べるための食材は買っていないですよ」 


 勇者様は目を見開き、ガーン! と言わんばかりの表情を浮かべていた。

 

「いや、あんなにいろいろ買って、私達の食材がないとは!?」


 勇者様は腰に吊していた食材が入った革袋を下ろし、ひとつひとつ確認していく。


「このイモは――!?」

「ぶーちゃんの餌です」

「こっちのナッツは――!?」

「ぶーちゃんのですね」

「蜂蜜も!?」

「ぶーちゃんの嗜好品ですね」

「岩塩は!?」

「ぶーちゃん専用です」

「うわああああああ!!」


 つまり私達は、ぶーちゃんの餌しか所持していないわけである。


「こうなったら、早速ぶーちゃんをいただくしかないのか……!!」

「待ってください。まだ、ぶーちゃんを早速食べなければならないような、差し迫った状況ではありませんから」


 仕方がないと思い、提案してみる。


「勇者様、ぶーちゃんの餌をわけてもらいますか?」

「この私が、ぶーちゃんの餌を食らうというのか?」

「ぶーちゃんの餌というのは表向きの名称で、普通の食材ですから」


 念のため、ぶーちゃんに餌を貰っていいか聞いてみる。


「あの、これ、少しいただいてもいいですか?」

『ぴい!!』


 ふたつ返事で了承してくれる。なんて優しい豚畜生なのか。


「勇者様、ぶーちゃんが食べてもいいって言ってくれたので、いただきましょう」

「あ、ああ、そうだな」


 勇者様は意を決したようにイモを掴むと、ごくんと生唾を飲む。

 イモを熱心に見つめるほど、お腹が空いていたようだ。

 そういえば、聖都に運び込んでからというもの、勇者様は食事を口にしていない。

 何か食べさせてから大森林へやってくればよかった。


「では、いただこうか」

「はい?」


 勇者様は想定外の行動にでる。

 なんと、イモを生のままかじりそうになったのだ。


「うわーーーーーー!!」


 さすがの私も驚いて、長い杖スタッフで腕を殴ってしまう。

 金ぴかの籠手ガントレットを殴打する、カーン! という金属音が辺りに鳴り響いた。

 その衝撃で、勇者様の手からイモがコロコロ転がる。

 超高速でイモを回収した。


「い、痛いぞ!! 何をするんだ!!」

「イモの芽には毒素が含まれているって、習いませんでしたか!?」

「知らんぞ!!」


 堂々と言うので、「そうでしたか」とあっさり返してしまった。  

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