表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クズ勇者が優秀な回復師を追放したので、私達のパーティはもう終わりです  作者: 江本マシメサ
第二章 新しい仲間(?)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/90

食事の時間にしよう!

 この世界はマナの塊である月から降り注ぐ月光を世界樹が浴び、魔力へ変換させて各地へ供給して成り立つ。

 人の命の源も魔力と言われており、月と世界樹と人は切っても切れない関係にあった。

 そんな中で、マナを悪用する魔王が現れた。

 マナが枯渇すると世界樹は枯れてしまうという。

 いにしえの時代から魔王はたびたび表舞台に現れ、勇者に討伐されてきた。

 時は流れ、二百年ぶりに魔王がこの世界に下り立ったのである。

 神は世界を守るため勇者となる資格を持つ者、勇敢なる者バリアント唯一の才能ユニーク・ギフトを人間の子どもに与えた。


 ただ、勇者は万能ではなく、魔王を討伐する前に倒れる者もいたのだ。

 世界は滅びかけたものの、新たに立てた勇者が倒してくれた。

 このような事態を受けた神は、先手を打っておく。

 ふたりの子どもに、勇敢なる者バリアント唯一の才能ユニーク・ギフトを与えたのだ。

 より適性があるほうが、真なる勇者。

 真なる勇者が死んだときに代わる予備スペアが、補欠勇者なのだ。


 私と旅する勇者様は誰がどう見ても、完全無欠の補欠勇者である。

 彼は生まれたときに、聖司祭から才能ギフト託宣オラクルを受けたさい、勇者の適性を示す勇敢なる者バリアント唯一の才能ユニーク・ギフトがあると教えられたのだ。

 親族の誰もが、彼が真なる勇者だと信じて疑わなかった。

 さすがの神官も、補欠の文字までは見えなかったのだろう。


 補欠勇者について知っているのは、神話時代について研究をした学者のみだろう。

 私は偶然、その情報を知っていたに過ぎない。


 勇者様の自尊心を折ってはいけないので、今後も勇者様が補欠だと言うつもりはない。

 もしかしたら勇者様(本物)が志半ばで倒れた場合は、勇者様が本物になる可能性だってある。

 まあ、勇者様(本物)のパーティーには優秀な回復師がいるし、ハイエルフの賢者だっている。勇者様(本物)本人も、不死者に勝てるほどの実力者なのだ。

 彼女らのパーティーならば、魔王を討伐できるだろう。

 しかしながら万が一のこともあるので、世界を救うために、私達は旅を続けなければならないのだ。


 ◇◇◇


 今日も今日とて、モンスターに急襲される。

 現れたのは鋭い牙を生やした猪系モンスター、フォレスト・ボアだった。

 かなり巨大な個体で馬より一回りほど大きい。

 フォレスト・ボアは牙を槍のように突き出し、私達に襲いかかってくる。

 勇者様が金ぴか剣を引き抜くよりも先に、私は魔法を発動させる。


「――噴きでよ、大噴火イラプション!」


 大地が裂け、そこから高温の岩漿マグマが噴射される。

 巨大なフォレスト・ボアの毛皮は燃え上がった。


『グルルルルル!!』


 全身に火を纏ったまま突進してきたものの、勇者様の金ぴか剣による一撃を食らって倒れた。


 無事倒せたので、ホッと胸をなで下ろす。

 イッヌも勝利を跳び上がって喜んでくれた。


 勇者様はすぐに回れ右をし、ツカツカ歩いて接近してくる。

 干したエイのような表情を浮かべているので、勝利の喜びを分かち合いに来ているわけではないのだろう。


「おい、魔法使い! お前はバカのひとつ覚えみたいに、大噴火イラプションしか使わないな! さっきも魔法に巻き込まれそうになって、岩漿マグマを全身に浴びるところだったぞ!!」

「それはそれは、申し訳ありません。一応、気をつけていたのですが。ちなみに私、大噴火イラプション以外の魔法は使えません」

「なんだと!?」


 勇者様の額に浮かんだ血管が切れそうなくらいの叫びだった。


「勇者様、私もパーティーから追放しますか?」

「それくらいでするか!」


 私よりも確実に優秀な回復師はすぐに追い出したのに、私に関しては妙に寛大なところがある。

 おそらく私は彼にとって、〝気の毒な存在〟なのだろう。

 なんせ、もともとは道ばたに捨てられた死体で、自分の名前どころか親の顔も覚えていない。

 大した知能もなく、ある意味では世間知らずだった。

 勇者様に捨てられてしまったら、あっという間に道ばたに転がる死体に戻ってしまうだろう。


「それよりも空腹だ! 食事にするぞ!」

「はいはい」


 今日は酷く冷える気候だったが、全身が火まみれだったフォレスト・ボアの近くは暖かかった。

 フォレスト・ボアの亡骸で暖を取りつつ、食事の時間にしよう。

 まずは敷物を広げ、腰を下ろす。

 その辺で摘んだ薬草をお皿代わりにして、メインとなる干し肉を置いた。


「さあ、勇者様。食事の準備が終わりました。どうぞ、お腹いっぱい召し上がってください」

「おい、どこに食事があるんだ?」

「こちらにあります、干し肉ですが?」

「は? これは犬畜生の餌だろうが」

「失礼ですね。干し肉は立派な冒険の保存食ですよ」


 お坊ちゃま育ちの勇者様は、干し肉なんて食べたことがないのだろう。

 回復師を追放する前は、彼女が食事を担当していた。

 ホカホカのシチューに、肉汁滴る串焼き肉、ふかふかのパンケーキ――回復師が作る料理はどれもおいしかった。

 彼女を追放したら、食生活が貧相になるのを勇者様は想像できていなかったようだ。


「勇者様、しっかり食べないと、次の街まで体力が続きませんよ」

「……」


 革袋の水筒に入れた水も出してあげた。

 それを一口飲んだ瞬間、勇者様は叫ぶ。


「なんだこれは!! 獣臭い!!」

「水筒の水はそんなもんです」


 私なんて泥水をすすったこともあるので、水筒の水なんて贅沢品だと思ってしまう。


 続けて、勇者様は干し肉を食べた。


「これは、犬畜生の餌だ! 間違いないぞ!」

「勇者様、犬畜生の餌を食べたことがあるのですか?」

「いや、ないが、ここまで味がなく、硬くて生臭い食べ物は犬畜生しか食わんだろうが!」


 干し肉に対する悪口の羅列を聞きつつ、黙っていただく。

 おいしいとは言えないものの、冒険に必要な糧となるだろう。


「他に食料はないのか?」

「ないですね」


 勇者様の眦に涙が浮かんだが、すぐに顔を背ける。

 その先に何か発見したようで、嬉しそうな顔で振り向いた。


「おい、いい食材があるではないか!」


 勇者様が指差したのは、先ほど倒したフォレスト・ボアだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ