3-17 岬の遺跡5
魔王になるだと?
アルフレッドめ、今まで騙していたのか?
いや、しかしメダルに執着はしていなかった。
それに我々から殺して奪うならいつでもできたはずだ。
だからその線はないと。
今までは本当にそのつもりはなかったと。
じゃあこの塔でなにが?
あの冠。
あれは!
いや、私にはわかる、あれは本物だ!
本物の次期魔王の冠だ! 恐ろしいほどの魔力を秘めている。
では本当に魔王妃ヴィクトリア様から託されて?
執政を手伝えと?
ベアトリス様が本当に魔王になって、メリーアン様の身の安全を保障してくれるなら、大臣にでもなんにでもなろうではないか。
やれるものならやってみるがいい。
しかしメリーアン様を危険に巻き込めばただでは済まさんぞ。
睡眠魔法は弾かれたが、あれはまだ本気じゃなかった。
私の”睡魔”はあんなものじゃない。
単調な声で羊の数を数える、午後の歴史の授業、午後の古文の授業、午後の数学の授業、いろんな技がある。
覚悟しておけ。
ん? 無表情なようで、よく見たらアルフレッドがすごく嫌そうな顔をしている。
なるほど、アルフレッドにその気はなかったか。
実は前言通りに平穏に暮らしたかったと。
しかし主人がその気になってしまったので、泣く泣く従っていると。
ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。
思いを少しでも顔に出すとは、執事としてはまだまだ未熟よのう。
私はルカ。
アルパカ獣人でメリーアンお嬢様の乳母をしている。
メリーアンお嬢様のお姉様のベアトリス様が魔王を目指すという。
そんなことよりメリーアンお嬢様の召喚魔法がすごい。
私とシルブプレ様、ふたりがかりで魔力を押さえ込んでいるのに、気を抜くとすぐに封印を破って召喚する。
私はお嬢様に気に入られているので、私がどこにいようとかまわずに召喚するのだ。
食事や寝ているときには、まあいい。 よくないけど、いい。
お風呂やトイレのときには、すごく困る。
シルブプレ様の前にハダカで呼び出されたこともあった。
枯れているおじいさんなのが、不幸中の幸い。
鼻血を出したシルブプレ様がお小遣いをくれたので、この事件はないことになった。
あの事件以来、お風呂やトイレもお嬢様と一緒に入る。
ここでは、ベアトリス様やクランベール様がメリーアン様のお相手をしてくださって、とても助かる。
メリーアン様がご機嫌なので、しばらく魔力の暴走もないだろう。
今のうちに立ったまま、体の左右半分ずつ寝ようと思う。
おやすみなさい。
Zzz




