2-7 キサラの街
キサラの街までお嬢様とクランベール様はくっついたままだった。
貴族を隠しての旅なので、街の門の入口では一般の列で長く待たされた。
お嬢様が暴れださないかと冷や冷やしたが、どうやら寝ていたようだ。
クランベール様はお嬢様をずっと撫でていたようだ。
全員が冒険者カードでの身分証明なので、冒険者パーティ扱いとなった。
パーティ名の申告が必要ということで、頭文字を集めて勝手に『チームABCD』と申告した。
まあ次に使用する機会はたぶんないだろう。
ひとまず宿屋に向かった。
明日はこの街で食料や消耗品を調達して、また旅立つとしよう。
と、思ったら、宿屋でトラブルが起こった。
部屋割りである。
私とお嬢様、クランベール様とドロシーの2室で決まりだと思っていたのだが、クランベール様がどうしてもお嬢様と一緒の部屋がいいという。
お嬢様2人と執事2人の2室の意見や、女性3人と男性1人の2室の意見も出たが、お嬢様のお世話ができないので自分が却下。
無理を言って4人部屋にしてもらった。
これはこれでまた問題がある。 いつもは空間を広げてお嬢様の天蓋付きベッドを出していたのだが、これでは無理だな。
お嬢様のご機嫌が悪くならないことを願う。
「アル、はやくいつものをたのむのじゃ。」
「ニャー(かしこまりました)」
ああ、やっぱり。
しかしご主人様の命令は絶対だ。 いかにして誤魔化すかに命を削ろう。
部屋を広げ、お嬢様のベッドを出した。
当然クランベール様とドロシーが騒ぎ出した。
「ニャー(は? ネコリーヌ公国では部屋を広げられないと有能な執事とは言えないのですが?)」
「待ってください。 大きな収納袋を使用すればベッドが入ることはわかります。 でも部屋を広げるなんて理解の範疇を超えてます。」
「ニャー(空間を収納するのです。 ベッドが収納できて空間を収納できないことがあるでしょうか)」
「はあ、アル様は、すごいテクニックをお持ちなんですね。」
よし、誤魔化せた。
翌日は買い物を兼ねて街を散策した。
前にお嬢様二人が並び、後ろに執事二人が控えての移動は、人目を引いた。
屋台からおいしそうな匂いがするたびに誘蛾灯のようにそっちに吸い寄せられていく。
そして幼虫のように餌を食べつくすのだ。
きっと二人はもうお昼ご飯は無理だろう。




