1-20 フローリー草原2
「ちがうのじゃ。 いまのはちがうのじゃ。 れんしゅう、そう、まほうのれんしゅうをしていただけなのじゃ。 だからさわぎになってりょこうのちゅうしはこまるのじゃ。」
人族が馬車の周りで右往左往していた。
そばに戻ってきたアルが言った。
「ニャー(馬車が盗賊に襲われています。 関わって騒ぎになるのは避けたいところですが)」
は? ということは。
さっきの魔法は関係なかったのか。 てへペロ
「とうぞくというのはひとのものをぶんどるやからであろう? なぜそんなことをするのじゃ?」
「ニャー(最初は食べるに困って。 それで手を染めたら善悪が麻痺して楽なほうに流れるのです)」
「アルにたのめばなんでもたべれるのに。 わるいやつはせっかんじゃな。」
「ニャー(かしこまりました)」
アルが魔法を使わず、剣で盗賊を蹴散らした。
何やってんだと思ったが、そうか、目立たないためだな。
馬車の護衛の人が怪我をしていたので、指輪の力でヒールをかけてあげた。
ら、アルからジト目で見られた。 だって痛そうにして目障りなのじゃ。
「助けていただきありがとうございます。」
「ニャー(いえ、私たちはたまたま魔法の練習をしていて居合わせただけです。 それでは失礼します)」
「あ、待ってください。 ぜひお礼を。」
「ニャー(いえ、急ぎますので)」
「なにをいそぐのじゃ?」
アルがまたジト目をしている。 主人にジト目をするとは再教育が必要じゃな。
「どこへいくのかしらんがおくってやるのじゃ。 のりかかったふねなのじゃ。」
「ありがとうございます。 我々は王都へ向かっていたのですが、盗賊に進路を曲げられ人気のないこのような場所に。」
「アル、おうととやらへあんないするのじゃ。」
「ニャー(かしこまりました)」
御者台にアルが座り、私は馬車に乗り、王都へ向かうことになった。
アクシデントも旅の醍醐味、予定外は旅のスパイスじゃ。 同じか。
「改めてお礼を。 私はこの国の西端に領土を持つラズベール男爵です。」
「われはまおうのむすめ「ニャー(ゴホン! ゴホン! 失礼)」
「ニャー(私たちは辺境の小国、ネコリーヌ公国のマオー男爵の娘ベアトリスとその護衛を兼ねた執事アルフレッドです。 諸国漫遊の旅をしております)」
アルは何を言っておるのじゃ?
もしかしたら騒ぎにならぬように身分を隠すのじゃな、なるほどなるほど。
「ああ、だからあのようにお強かったんですのね。」
「申し遅れました。 私はラズベールの娘、クランベールです。」
「ベアトリス様はおいくつですか?」
「ん? としか? ななつじゃ。」
「まあ、かわいい。」
「うむ、よくいわれる。」
「うふふ、私ベアトリス様のような妹が欲しかったわ。」




