6-10 ミズル村3
「いいんだよ! 好きなことして酒が飲めれば!」
いくら好きとはいえ、わかる人がいない世界で、機会をずっと待ち続ける不毛さをツッコむと、キレられた。
爺さんは、転生したら、飲んべえの爺さんながら、凄腕の情報屋になりたかったらしい。
マスターも、転生したら、いぶし銀で、凄腕のバーテンダーになりたかったらしい。
凄腕のバーテンダーってなんだ?
あ、戦闘力高いのね。
自分は凄腕の執事です。 戦闘力高いのです。 猫なのは望んでじゃないです。
自己紹介しつつ話が弾む。
しかしこれでは儲からないでしょ?
え? 元の世界と貿易ができる? 異世界貿易株式会社?
こちらの素材を売って、むこうからお酒を仕入れている?
バーテンダーなんて、やってる場合じゃないのでは?
あくまでも趣味の範囲? どっちが? あ、貿易ですか、そうですか。
爺さんは、どんな情報でも答えられるような能力を望んだらしい。
ただし、全てが頭に入っているわけではなく、知りたいことに関係する歴史上の真実をそのときに把握できる という能力だそうだ。
ふたりとも、そんなすごい能力をもらって、やることが バーテンダー に 情報屋 って。 うぷぷ。
え? おいらはすごい戦闘力を持った、お嬢様のお世話をする執事ですけど? それが何か?
あ、そうだ。 聞く事があったんだ。
「ニャー(爺さん、獣人の国の第26王女が命を狙われているのは、どうして?)」
「んー? ああ、あの子の母親は、おまえと同じ 魔獣人 だからだよ。 あの子には魔族の血が入っているからと、王以外の王族はみな排除しようとしている。 すでに母親は病気にさせられ殺された。」
オレって魔獣人 (ハーフ)だったのか。 そういや、魔族で猫だもんな。
いや、いや、病気にさせられ殺された? 病気って尻尾癌? 尻尾癌って感染るの?
「表向き獣人の国にはいないことになっちゃいるが、実は王族が秘密裏に病移師を囲っている。 ベルちゃんと母親はそいつに尻尾癌を移された。 つまり暗殺だな。」
貴重な病移師をそんなくだらないことに使うなんて、獣人の国、クソだな。
いや待て、落ち着け、国が悪いわけじゃない、悪いのは王以外の王族。
王族の純血主義も悪いわけじゃない、悪いのは暗殺に関わったやつ。
ってか、殺さなくてもよくない? どうしてそこまで?
「それはベルちゃんに魔法師の才があるからだよ。」
魔族の血を受け継いでいるんだから魔法の才能があるのは理解る。
でもだから?




