EP44 現実は非情である
そう、明らかに少ない。至るところに倒れている兵士を見れば、正面突破班もかなりの大仕事を成し遂げたことが分かる。
「さぁ、喧嘩の時間だ。かかってこい、国の狗ども」
マルガレーテは強い語気でそう言い放った。
「私としちゃ、貴方たちが大人しく普段の仕事へ戻ってくれるのなら、別になにもしませんけど」
どうせ聴いてはくれない。舐められっぱなしで終われないと。
そして、その答えは、
「それはつまり、宣戦布告というわけで良いんだよなァ!?」
ついに、
強盗側・主戦力
ランクAAA(年齢36歳)
マルガレーテ・アクス
&
推定ランクD(年齢22歳)
ラーキ・パケット
VS
軍隊側・主戦力
ランクAAA(年齢47歳)
ロブスタ・ノキ大尉
この陣営での闘いが始まる。
サンダードーム空軍基地は全滅状態。正面から装甲車で真正面から突撃してきたマルガレーテ、ジーター、アーキー、リミの4人。マルガレーテはさっさと車から降りて、炎の槍みたいな現象で敵を潰していったのは目に見えるが、残った3人は大丈夫だったか。更にいえば、ジーターはあのマルガレーテの最強の子分であり、生き残るのに苦労はしないはず。なら、ジーターがあのふたりをテレポートさせてくれたのかもしれない。
と、少しホッとしていれば、
「……ラーキ。この男は私が殺る。他のザコは任せたぞ」
並々ならぬ覚悟に圧され、
僕は、「うん」としか言えなかった。
「おれらがザコだとォ!? なら、オマエらは銃弾けるのかよ!!」
「あぁ、弾いてごらん」
余裕にあふれた笑みを浮かべ、他の軍人たちが一斉に射撃を開始する。的は僕だ。
やがて、的になった僕の眼前に、大量の銃弾がへばりついていた。
「すごい速さで来るものだね。多少慣れていたけども、こんなに撃たれるのは始めてだ」
まだ銃弾は、僕に張り付いていた。軍人たちは頬やデコから脂汗を垂らす。
「さぁ、銃弾も高いっていうからね~。返すよ」
そう言い、僕は弾丸を彼らへ返す。
先ほどまでの運動量が残っているのなら、更にいえば保存されているのなら、それらは恐ろしい。しかし、まさかそんなはずがないだろうと。そんな不条理、ウィング・シティで乞食する孤児からでも笑われてしまう。
そうさ、なにも起きない。
*
かわせない。現実は非情である。
「目が、歯が、指が……全部消し飛んでるんです!!」
「それらだけならまだマシさ、見ろ」
「どういうことですか? まさか、あんな小娘始末するのにこんな弾丸使ってしまったんですかいな!!」
「はーっ。これでこの空軍基地の一般兵用の全銃弾は、来年になるまで買えませんねェ!! どうして軍人はまともな思考回路を持たないのですかねェ!?」
そんな末期感が漂っていた。一般兵士に銃の大きさ問わず、それに詰める弾丸をまた購入する余力なんてものは最初からない。むしろ、他の兵器を壊さないでいてくれることが愛らしく思えてくるだろう。
「で、皆さんこれからどうします?」僕はレーダー管理室の最上階にて、座る「なんかさー、ここにはほしいものがふたつあって侵入させてもらったんだけど、ないんだよねぇ」
僕は首をかしげ、どうせ見られるわけでもないのに、頬をふくらませる。
「やっぱり、こういう秘密事は当然だけど、そもそも私が知っているほうがおかしいわけで。それでもって、蓋開けてみると良いものは出てこない。アニメで良くある、あれですね」
そう言い、ふざけた態度のまま僕はレーダー管理室の最上階につけられていたマイクを握り、
「こういうときって暇ですよね。子どものとき、なにになりたかった暴露会でもします?」
朝9時に侵入したこの街も、昼間に突入していた。
米軍はサンダードームと全く連絡がつかないことに疑問を思いつつも、そこは雇われる代わりに仲介へ入ったレイ・ウォーカーとかいう、完全なる知識チートのおかげで乗り越えられた。彼はどうも、VR世界という拡張現実をうまく使い、そこで起きている事態に異常なし、として近くの空軍基地が飛んでくることもなかった。




