EP42 マルガレーテVSロブスタ
「ハッ、吠えてくれるじゃねェか。ブラッドハウンズの二代目……いや、元二代目」
「あぁ!? ブラッドハウンズはあたしの組織だ!」
「だが、今やふんぞり返ることもできず現場戦闘員に戻っちまった。いやー、惨めなモンだねェ。所詮オマエにァ、初代ボスほどの求心力がないってことじゃねェか」
「そのボスを暗殺したのは、てめぇの弟だろうが。あたしには義務があるんだよ。ブラッドの親分の意志を受け継いで、4000人の子分が空腹に苦しまないよう働くと」
「オマエら社会のゴミ箱が、飢えて死んでも悲しむヤツはいねェよ。むしろ喜ばれるくらいだ」
「良く言うねぇ。この街で一番喜ばれたのは、オマエの弟の死に決まってるだろうが。命日にはみんなで踊り明かしてたさ」
「あぁ、そうかよ」
マルガレーテとロブスタはしばし至近距離で睨み合っていた。
が、なにか合図でもあったかのごとく、互いに互いの身体に拳をにじませた。マルガレーテは彼の腹部に、ロブスタは彼女の顔面へと。バチバチッ、と電気のような現象が起きる頃、ふたりは質量の重たさに耐えられなくなってよろける。
「おう。大層な能力を持ってるようだが、使い方が分かっちゃいないなぁ?」
が、明らかにマルガレーテのほうが優勢だ。顔に思い切り右ストレートをくらったのに、鼻血を垂らすだけで彼女はその場に立っている。対して、ロブスタは炎のまとわれた拳をもろにくらったことで、内蔵そのものへもダメージが行ったのか、口からも血を垂らす始末だった。
「要するに、酸素に偽装した現象をねじ込めるってことだろ? 細工を仕込んであるから、あたしの炎すら反射してしまうラーキがまともにダメージをくらったってわけだ。酸素をすべて馬鹿正直に反射したら、ラーキは呼吸困難で死ぬ。けど、こうやってインファイトになっちまったら……!!」
マルガレーテの目が妖しく光る。
「いちいち不条理を生み出す余裕も作れねぇ。おら、一発でノビてるんじゃねぇぞ。立て」
「ケッ、待ってくれるのか? 甘めェヤツだな、おい……!!」
「全力のオマエをぶち殺せば、アラビカのゴミ箱野郎に殺られた親分も子分どもも成仏できるんだよ。それに、カルエがいなければアラビカを消すこともできなかった。アイツの仇も獲らせてもらうぞ!!」
ロブスタも身体改造はしているのだろうが、マルガレーテの言ったことが事実だったようで、接近戦では彼の能力の片鱗すら見受けられない。ただ、喧嘩慣れしているマルガレーテと軍人であるロブスタが殴り合うだけだ。もっとも、どちらかがどちらかを殴る度、青白い閃光が走る状況だが。
血の塊を吐き捨てたロブスタが言う。「喧嘩屋がプロの軍人に白兵戦で勝てると思ってるのか!? ましてや、オマエは女だろう!? 同じランクAAAで身体改造をびっしりしてあっても、その差は埋まらねェよなぁ!?」
ロブスタはマルガレーテの胸倉を掴み、彼女を地面から放り投げた。「ぐおッ!」という喚き声を出すが、彼女は首をゴキッと曲げてさも当然のように立ち上がる。
「喧嘩十段、舐めるなよ……!?」
マルガレーテは腕より炎を繰り出す。それを拳にまとわせ、ロブスタの腹部にくらわせる。
「ぐあッ!?」
「ギアの分だけ、オマエのほうが不利だろうが!! それに、オマエら軍人どもはお行儀の良い格闘技しか学んでいないはずだ!! あたしはこの手でヒトをぶち殺せる! おら、気張れよ! 地獄のアラビカが泣いてるぞ!?」
そんな戦闘の最中、僕の耳につけられたインカムより連絡があった。声の主は、ニーナだ。




