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虫なんて食べません!〜異世界メシマズ昆虫食村顛末記〜  作者: 地野千塩


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第27話 昆虫料理コンテスト

 特設ステージは、聖女レベッカのパフォーマンスが終わり、この村のご当地キャラ・コオちゃんのパフォーマンスが始まっていた。


 もちろん、コオちゃんは架空のキャラクターだ。着ぐるみに村役場の職員が入り、コオちゃんのパフォーマンスをしているらしい。ゴキブリ のG君と、バッタのバッター君と一緒に食糧危機に立ち向かうというストーリーの劇をやっていた。村役場職人のパフォーマンスの割には熱が入っている。素人臭さが全くない出来だった。


 その間、涼子は保冷バッグを抱えて唐揚げを配っていた。アランには盛大に懐かれてしまったので、引き剥がすのが大変だったが、どうにかあしらい、唐揚げを配る。


「アシュリー、唐揚げ食べない?」


 特設ステージの最終列にいるアシュリーの唐揚げを渡す。


「え、これ日本食? 美味しそう。絶対食べるよ!」


 アシュリーには唐揚げが好評だった。アシュリーの隣にいるジョンにも唐揚げを勧めたが、コオちゃんのステージに熱中していた。


「俺は虫が好きなんだよ。唐揚げなんて不味いもんは食わん」

「あ、そ」


 ジョンはそう言うと思った。ジョンはアシュリーには「痩せた?」と聞いていた。アシュリーは顔を真っ赤にしていた。もしかしたらアシュリーは、ジョンの為にダイエットをしていたのかも。そう思うと辻褄が合ってしまうが、人の恋愛事情は放っておこう。ジョンが好きなんて異性の趣味がユニークだとは思う。確かにジョンは面白い人だがアランの方がイケメンではないかと涼子は感じる。


 次に休憩ブースにいるモニカ、サミーおばあちゃんにも唐揚げを配った。この二人には唐揚げは大絶賛されたが、「昆虫料理コンテストでは負けない!」と宣戦布告されてしまった。


 その後、屋台に並ぶ村人達にも唐揚げを配ってみたが、昆虫食ガチ勢も多くいて、唐揚げは思ったより絶賛はされない。コローナにも配ってみたが「不味い」と一刀両断されてしまった。ちなみにボード家のご主人や奥様、村長には料理コンテストの賄賂になってしまうので、唐揚げはプレゼント出来なかった。ただ、ボード家の奥様は、日本食に興味深々でルースのカフェがリニューアルオープンしたら行きたいとまで言っていた。自分達は昆虫ファームを経営している癖に……とイラっともしたが、お祭りの楽しい雰囲気に飲まれて文句を言う気分にもなれなかった。


 そうこうしているうちに、料理コンテストの時間になった。ルースと合流し、特設ステージの最前列に並ぶ。名前が呼ばれたら、ルースと一緒に出品したコンテストの料理を説明するつもりだ。


 ステージの上にはには、審査員としてボード家のご主人と奥様、それと村長が座っていた。初めて見る村長は、一見優しそうな老人だった。眉毛も白髪になっているので、ちょっと仙人っぽい。聖女レベッカと不倫中とは信じられない容姿だった。


 昆虫料理コンテストが始まると同時に、ステージの上には大きなモニターも写し出されていた。ボード家の昆虫ファームの職員が司会を担当し、昆虫食がいかに地球に優しいかプレゼントしていた。聖女レベッカやコオちゃんのパフォーマンスと比べ地味なステージだったが、賞金の行方が気になるのか、意外と客席は盛り上がっていた。


 司会者の昆虫料理への熱いプレゼンが終わると、さっそくジョンの料理から審査が始まった。ステージ上のモニターにジョンが出品した芋虫のタコスとアリのサラダがアップになって映し出された。一見普通のタコスだが、生地から芋虫がはみ出していてゾッとしてしまう。


 いつものように野良姿のジョンがステージにあがり、「俺は昆虫食ガチ勢だ。芋虫は森で採れたての新鮮なもんじゃ!」と吠えていた。これには客席の村人もドン引きしていたが、優しいアランはただ一人拍手を送っていた。やはり、ジョンはアランにとって友達だ。応援したい気持ちも強いのだろう。


「こ、これは……」


 村長もボード家の夫婦も、顔を引き攣らせながら芋虫のタコスやアリのサラダを試食していた。明らかに不味そうだ。これは勝てるかもと希望が出てきた。


 次は、聖女レベッカの出品料理だ。ゴキブリのフィリッターと缶ビール。「缶ビールなんてずるい!」と客席のアシュリーからヤジが飛んだが、レベッカは被害者ぶって泣いていた。


「ひっどーい。コンテスト応募要項ではお酒がダメだって書いてないもん!」


 アラフォー女性のぶりっ子にステージ上のボード家のご夫婦はドン引きしていたが、村長は缶ビールだけ飲み干し「美味い!」と太鼓判を押していた。


 次はコローナの出品料理だ。カメムシのペーストとクラッカーを出品していた。ペーストはドブみたいな色をしていた。


「夜なべしてカメムシを擦り潰してみました。秘伝のレシピで、味もマイルドですよ。どうぞ召し上がってください♪」


 ドブ色のペーストだったが、審査員のボード家夫婦や村長にはやけに好評だった。村長によると、匂いは独特だがレバーの味に似ているらしい。


 次にサミーおばあちゃんとモニカのコンビによる出品料理だった。野菜たっぷりのすいとんとイナゴの照り焼きだった。イナゴは串の刺してあるので、一見焼き鳥みたかった。そういえば鶏皮の焼き鳥もよく見るとなかなかグロい。見かけだけで昆虫食を批判するのは、ちょっと浅い気もしてきた。


「今は戦時中だと思って食べてみてください」


 モニカが力説し、サミーおばあちゃんが涙ながらに戦争の悲惨さを訴えていた。


 この妙なムードに押され、審査員の面々は涙を流して食べていた。これは、ちょっと負けそうかもしれない。涼子もこういった演出をすれば良かったと後悔するほどだった。


 そして最後に涼子とルースのイナゴの佃煮弁当だ。二人でステージに上がり、涼子は司会者からマイクを受け取る。


「私は異世界転移してきた日本人です。日本ではお弁当文化とうのがありまして」


 日本の弁当文化を説明しようとした時だった。


 銃を持った男がステージに乱入してきた。


「お前ら、撃つぞ!」


 男は涼子の身体を掴み、人質にしてしまった。客達の悲鳴が響き、聖女レベッカやコローナは一目散に逃げて行った。客やコンテスト出品者の大半も逃げ、ジョンとアラン、アシュリーしか残っていない。


 村長、 ボード家の夫婦、ルースはステージの端に逃げ、固まっていた。ショックで動けないようだ。


「ブラッドリー、どうして?」


 男はコンテストの受付をしていたブラッドリーだった。いくら涼子は筋肉質とはいえ、相手は自分より大きな若い男。身体は固まり、口しか動かない。銃が涼子の頬の側にあり、額から冷や汗が流れていた。


「こんな下らないコンテスト開きやがって! 許せない!」


 ブラッドリーの絶叫がステージ上に響いた。


 頭が混乱して何もわからない。一つ解る事は、昆虫料理コンテストは滅茶苦茶になったという事だった。賞金への道はかなり遠いかもしれない。


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