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虫なんて食べません!〜異世界メシマズ昆虫食村顛末記〜  作者: 地野千塩


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第18話 お腹減ったー!

 スーパーで買い物をした後、涼子はクリケット村まで歩いていた。行きは走りながら軽快に向かったわけだが、帰りは結構大変だった。両手にスーパーで買ったもののエコバッグを持ち、2・5キロメートルの距離を歩いていた。一応舗装された道だが、周囲は荒地というか、砂埃の舞う空き地だった。


 そういえばクリケット村では、昔は酪農や農業をやっていたらしいが、その跡地かも知れない。時々墓標のようなもの見え、疫病や飢饉、伝染病に本気で怖がっていたというのも間違いないようだった。墓標にはドラゴンライト教のものと思われる護符がびっちりと貼り付けられており、不気味な雰囲気だった。


 このままサミーおばあちゃんの家なで直行すべきだったが、少し疲れてきた。いくら身体を動かす事の好きな涼子だったが、この土地は気温が高く日差しも強い。疲労感は、日本にいる時より増した。


 公園の広場に行き、木陰のベンチの腰をおろした。


 広場の方は、今日も聖女レベッカがパフォーマンスをやっていて、騒がしい。音楽を流し、珍妙な踊りを披露したかと思ったら、病気の人の手当てをして治していた。


 見るからに胡散臭く、涼子の表情は白けていく。レベッカが昆虫食を根付かせた元凶だが、その割には色艶がいい。二の腕はタプタプで、腰回りも肉付きがいい。綺麗な白いワンピースを着ていてが、それでもスタイルの悪さは滲んでいる。猫背というにもマイナスポイントだ。筋トレを教え込みたい気分になるが、本当に虫を食べているのか疑問だった。むしろポテトチップス、ピザ、ケーキ、アイスなどが好きそうな体型だった。


「あら、涼子! 何してるの?」


 そこに昨日、服や下着を貸してくれたモニカが現れた。今日はプライベートなのか、ラフなシャツに半ズボンという格好だった。麦わら帽子もよく似合ってるいた。


「こんにちは、モニカ。昨日は下着や洋服ありがとう。とっても役立ってるわ」

「あら、そんな事はどうでもいいのよ。ふふ、でも感謝されると嬉しいね」


 モニカは30歳ぐらいだったが、おばさん臭く涼子の肩や背中をバシバシと叩いていた。


「涼子はこれからどこ行くの?」

「実はサミーおばあちゃんの家に行くんです」


 涼子は、サミーおばあちゃんの家で食事の用意などをする事になった経緯を話した。


「そうなの。私もサミーおばあちゃんの事は心配していたのよね。私も何か手伝える事ある?」

「モニカも手伝ってくれるの?」

「いいよ。今日は私も仕事が休みだしね!」


 という事で、モニカと一緒にサミーおばあちゃんの家に向かった。その間、モニカは聖女レベッカの悪口ばかり言っていた。


「あの聖女って好かれてないの?」


 てっきり村人たちの崇拝対象かと思った。


「そうでも無いよ。結構いい歳のはずなのに、ぶりっ子というか、男好きっていう噂もあってね。噂ではボード家のご主人さんにも色仕掛けしていたとか、色々噂があんのよ」

「うそ。でも噂でしょ?」


 涼子は、おばさんがする様な噂についていけない。腐っても女子高生という事か。


「本音では、私も昆虫食なんて食べたくないのよね。でも、そうじゃ無いと私の家の仕事もなくなるし」

「どういう事?」

「本当は肉屋をやってたんだけど、なぜかすごい税金を課税されてね、廃業するしかなかったの。村長も聖女の言いなりだし、昆虫食を推し進めるために仕方なかったみたいだけどね。おかげで今は、ドラゴンライト教のグッズや昆虫を委託販売やってるわけ」

「そんな事情があったのね」


 やはりこの村は政治とカルトが深く結びついているようで、涼子は気分が悪い。そういえば現代日本も似たような問題はあった。どうもこの異世界、日本の悪いところに似ている。


「あー、虫なんか食べたくない。肉食べたーい、鶏肉、牛乳、卵。マトモなタンパク質くださーい!」


 最初は愚痴を吐いていたモニカだったが、涙目になりながら弱音を吐いていた。


「これから、サミーおばあちゃんの家で肉料理作るけど、一緒に食べる?」


 恐る恐る提案してみた。どっぷりとカルトに洗脳されている人には、安易に提案するのは気が引けたが、モニカを見ていると、助けたくなってしまった。モニカは、服や下着をかしてくれた恩もある。何かお礼をしたい気分もあった。


「いいの? 本当にお肉食べていいの?」

「うん。一緒にお昼ご飯食べよう。みんなで食べたら美味しいよ」

「虫を食べないで、悪い事起きないかな?」

「サミーおばあちゃんは、元気そうだったよ」

「だったら、安心かも」


 モニカの腹の方から情け無い音が聞こえてきた。その音を聞いていたら涼もお腹が減ってきた。さすがの重い荷物をもち、強い日差しの中で2・5キロ歩いたのは疲れてきた。


「お腹すいたね」

「そうだね、涼子。マトモなものを食べたいよ」


 二人は深く頷いていた。

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