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第16話 別のもので例えないでくれます?

 涼子はサミーおばあちゃんの家で朝食の後片付けをし、食器を洗っていた。食洗機はないようだが、洗剤は普通に使える。文明は昭和末期か平成初期といったところだろう。まだ涼子は生まれていない頃なので、不便といえば不便だがったが。


「サミーおばあちゃん、お皿は片付け終えたよ。他、やって欲しい事ない?」

「そうね、ありがとう。冷蔵庫にある昆虫を捨ててくれないか。イナゴは食べられるが、ゴキブリ やコオロギ、うじ虫は食べたくないね」

「同感!」


 サミーおばあちゃんと二人で冷蔵庫の中を片付けた。冷蔵庫は扉が分厚く、色もミントグリーン。現代日本のものと比べるとちょっと垢抜けないが、機能としては十分だった。


 コオロギや蛆虫の入ったタッパーは頑張ってゴミ箱に捨てたが、ゴキブリ の入ったタッパーは扱うのに勇気がいる。サミーおばあちゃんは平然とた顔で扱っていた。やっぱり慣れって怖い。


「ち、ちなみにゴキブリ ってどんな味なの? っていうかどんな風に調理するの?」


 恐る恐る聞いてみた。古く狭いキッチンに緊張感が張りつめる。


「ゴキブリは小麦粉と片栗粉をつけてフリッターにするわ。まあ、味はカニっぽい」

「ひー」


 こんな話は聞きたくないが、もしかしたら元いた世界に帰るヒントになるかもしれない。


「蝉もカニっぽくて、ちょっとアスパラガスっぽい」

「いやいや、普通にカニかアスパラガス食べたら?」

「ハエはスナックぽい味だな。蚕はちょっと美味しかった。蝉は幼虫の方が美味しいね。これに限ってはいける。カメムシは香水みたいな味がした。カメムシは上級者向けだね」

「ひー」


 虫の味など聞きたくなかったが、サミーおばあちゃんは意外と昆虫料理を楽しんでいた面もあるようだった。ただ、虫の味は何かと例えている事が多く、独自性も感じず、だったら、その例えている食品を普通に食べればいいんじゃないとは感じる。元々昆虫好きなジョンと比べると熱量は伝わってこない。


「っていうか、健康に悪くなかったの?」


 恐る恐るゴキブリ のタッパーをゴミ箱に入れ、一番気になる事も聞いた。


「よくはないな。今思うと昆虫を食べ出してから、お金がなくなり、体調も悪くなった。妙に聖女のレベッカを信頼するようになった気もする。特にコオロギパウダーは食べると調子悪くなるんだ。本当はグリーンパウダーも食べたくなかったが、なし崩しというか」


 昆虫を食べる事によって健康を害するのは、だいたい予想がついたが、金運や聖女への依存していったのは、どういう事か引っ掛かる。まるで虫が呪いになっているみたいではないか。


 そんな事が気になった所で、元いた世界に帰れるヒントも得られなかった。サミーおばあちゃんの家にある護符やシーサーのような像の片付けを手伝うと、涼子は隣町のスーパーに行くことになった。


 サミーおばあちゃんから地図、お金が入った小銭入れ、買い物リストをもらい、さっそく出発した。


 隣町へ行く道は単純で、この村の広場や商店街から大通りを出て、そこからひたすら歩くだけだ。地図には書いてなかったが、2、5キロぐらいある感じだった。


「走るか!」


 元々身体を動かす事が好きな涼子は、隣町の道のりを走ってみた。


 汗を流しながら走っていると、サミーおばあちゃんの冷蔵庫にあったコオロギ、蛆虫、ゴキブリ の話題などは忘れられそうだった。


 今日もいい天気だ。


 確かに昆虫を食べているなんて気持ち悪い。帰る方法もわからないし、よく考えれば不安ばかりだ。


 それでも、全く希望が無いわけではない。走っていると、未来の事などは、どうでも良くなってきた。

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