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第三百三十八話 周りの反応の方が凄すぎて俺はかえってひいたくらいだけどな。いや、かなり大ごとなのはわかってるよ、こんな対応をされたらさ

連続更新中。この話でこの章は終わります。

楽しんでいただければ幸いです。



 カロンドロ王が即位して既に六ヶ月が経過した。その間にはいくつも大きな事があったけど、俺にとっての一番大きな出来事はやはりヴィルナの懐妊だ。どうやら聖魔族が子を授かる期間というのは、五年で約四ヶ月。最低二年は間隔が空き、そこから五年目までいつ来るか分からないという本当に運ゲーらしい。


 今回は約束していた通り、女神ユーニスが事前に教えてくれていたからよかったけど……。いや、今の頻度でしてたら教えて貰ってなくても授かってた可能性は高いか。


「周りの反応の方が凄すぎて俺はかえってひいたくらいだけどな。いや、かなり大ごとなのはわかってるよ、こんな対応をされたらさ」


「旦那様の立場から考えれば当然かと。これでもかなり抑えている方だと思われます」


 俺が以前住んでいた家を改造されてそこに助産婦というか、この世界の産婦人科の医者が数名待機している。それだけじゃなくて治療専門の魔法使いとか、教会から治癒術に長けたシスターも数名派遣されてるんだよな。


 シャルの相手とかはソレイユたちがしてるし、食事の用意とかは俺がしてるから問題ないんだけどさ。


 今日は雷牙(らいが)も顔を出してきた。こいつも以前と違って忙しいだろうに。


「そう言えばエヴァも妊娠したらしい。俺の家にもここと同じように医者が送られてきてるんだ」


「おお、それはおめでとう。お前もそろそろギリギリだろうし、普通に子を授かるのは無理だと思ってたぜ」


「先日の異世界救済の褒美でね。お前の言う通り、まともな方法だと子を授かるのは無理らしい」


 (ヴリル)神力(プラーナ)が一定レベルを超えると不老不死化が始まるが、その影響でいろんな悪影響もある。子供を授かれなくなるのもその一つだ。


 雷牙(らいが)は女神フローラや女神ユーニスの頼みを聞いて後輩女神見習いの世界救済を手伝っている。すでに十以上の世界を救ってるって話だが……。まさかその報酬まで使ってるとはな。


「望んで得た力じゃないが、俺もこの力は世界平和の為に使いたいと思ってる。俺の方は異世界を一度救った時点で割と警戒されたしね」


「お前はそのアイテムボックスの力をフル活用しすぎだ。世界を救うだけじゃなくて世界そのものを変えてくるだろ? この世界みたいに」


「食うに困らない世界っていいと思うんだけどね」


 農地改革や食糧事情の改善。治水工事から街道の整備に至るまで様々な公共事業をハイレベルで行ってみた。


 雷牙(らいが)は世界を脅かす存在を討伐して世界を救うだけだが、俺の場合アフターフォローまで完璧にしちまうから勇者というより神に近い崇められ方をするんだよな。


 その一回で女神ユーニスが呆れて、次からはなぜか雷牙(らいが)に頼むようになったんだよね。ちなみに、土方(ひじかた)も俺に近い事をして一回で世界救済のお願いが来なくなったらしい。


「何事も程々がいいんだよ。ある程度以上はその世界の住人に任せるべきだ。俺たちにおんぶにだっこじゃ成長しやしないだろ?」


「流石にお前はその辺りシビアだよな。それが正しいのは分かるんだけどね」


 俺の場合はオリジナルの魔法とかも使いまくったのが原因らしい。


 死者蘇生に近い事も何度も行ったしさ。


「教会以外の場所での死者蘇生はあまりやらない方がいいみたいだぞ。俺も流石にエリクサーは滅多に使わん」


「国の重要人物とかがヤバい時には仕方がないと思ったんだけどな。やり過ぎたのは反省してるよ」


 女神ユーニスはそれでも俺の力が必要なケースの時は俺に依頼するって言ってたしね。


 力押しじゃダメな場合もあるし。


「しかし、お前の屋敷なのに移動制限って酷くないか?」


「俺が入れる場所は厨房とこの和室エリアだけだしな。今はヴィルナの体調の方が一番大事だし仕方ないさ」


「勇者で聖者で賢者で公爵なのにずいぶんな扱いだ。そこがお前らしいといえばらしいんだが」


「形だけの公爵なんて意味がないとは思ってるけどね。基本的に領地はこの屋敷がある敷地だけだし」


 そう、カロンドロ王の即位後、俺は子爵から公爵に格上げされた。雷牙(らいが)達も侯爵だが領地は持っていない。その代わりにいろいろと特別扱いされてるんだけどね。


「なにをしても罪に問われないというのは破格の待遇だと思いますが……。王に資格なしと見た時には討つ許可まで出されていますし」


「アレは俺達が動かない限り王の地位や治世は絶対に揺るがないってことにする為だよ。俺達が手出ししないのに他者が動く訳にはいかないだろ?」


 そう、カロンドロ王は俺……、というか俺たちがほぼ不老不死に近い事を知ってるからこの国の未来を託してきたんだよな。


 王の子孫が悪政を行っていると判断した場合には俺や雷牙(らいが)がこれを討てと宣言したんだよね。


 そのおかげで俺たちが手を出さない限り誰かが王を討とうとする訳にはいかなくなった。特に俺が動かないという事は、女神ユーニス達が認めているという証拠だし。


「後は俺が必要と判断した場合はカロンドロ王の権限を飛び越えてこっちで好きに話を進めていいっていう許可? 裏の国王とか第二の国王とかいろいろ言われてるけどさ」


「あれだけ信頼されていますし、戦闘行為に関してはライガ様も同様の許可を貰っていますよね?」


「それは敵対勢力の排除に関してだな。流石にこの国に戦争を仕掛けてくる馬鹿はいないぞ」


「他の国も大体女神シルキーか女神フローラを信仰してるしね。女神ヴィオーラだけはやや信仰が薄れてるみたいだけど……」


 元々この世界を管理する神じゃないしね。


 どうしてあの子が信仰されてたのかが不思議だ。


土方(ひじかた)がアメーリアと正式に結婚したらしいが、これで土方(ひじかた)は玉の輿か。この場合は逆玉になるのか?」


「あいつの場合元々仕事で物凄く儲けてたんだし、ここから先は王家の一員としてただでこき使われるだけだと思うぞ。勇者の血を王家に入れるって意味でもあの結婚はいろんな思惑が交差してるんだろうけどさ」


「俺たちが結婚してなけりゃ本気でアメーリアの婿候補だったんだろうけどな。俺が旧王家のエヴァと結婚してるのは口には出さないけど問題なんだろうぜ」


「いや。それも旧王家を弾劾してないって言う証拠になるしな。それだけでも公明正大な王としての証になる」


 旧王家……、というか元王族に連なっていた貴族たちの中にはいずれその事を理由に僻地への領地替えや降格があるのではないかとささやかれていたりした。


 しかし、勇者の一人である雷牙(らいが)がエヴェリーナさんと結婚したからその辺りの風当たりが弱くなったと考えてるんだよな。


 ダリアも元王族だし、弾圧なんてしたら流石に俺が黙ってる訳ないけどね。カロンドロ王もそんな事は承知してるし。


土方(ひじかた)が次期国王でルッツァが将軍、スティーブンが宰相、大臣クラスにも知り合いの名前がずいぶん並んでたな。軍務大臣さんよ」


「勇者の誰かが任命されるのは分かってたしな。俺たちの中でも一番扱いに困ったのはお前だろうぜ。絶対に謀反を起こさないってわかってるからどんな権力でも与えられるが、お前はたまに独断でいろいろやらかすだろ?」


「失礼な。ちょっとこうしたらいいかなを実行しただけだぞ。お前や土方(ひじかた)も元の世界の文化や技術をこっちに持ち込み始めただろう?」


「ライガ様がひろめたというと和服屋ですか? 最近は浴衣なども人気だそうで」


「秋祭りの際の浴衣の着用。義務でも何でもないのに物凄い数の浴衣の女性であふれてるそうだが?」


「反物の出所は殆どお前だろ? デイビット商会のクーパーにも卸してるそうじゃねえか」


 ファクトリーサービスで織らせた反物をデイビット商会のクーパーに割と格安で卸してるんだよな。


 織機などの設計図なんかはスティーブンに渡してあるし、この街の職人が量産し始めたから数年後にはこの街で織られた反物の浴衣が出回るだろう。それまでのつなぎなんだけどさ。


「他にもいくつかの商会に卸してるよ。俺があまり何処かを贔屓にすると問題があるしな」


「お前が出入りしてるのを見られただけで商会の格が幾つも上がるって言われてるぞ。間違っちゃいないが」


「おかしな物を扱ってる商会にはいかないしな。今は店に入る前にある程度分かるから」


 予知能力でな。なんか入る前に当たりはずれが分かるんだよね。


「今の所はこの街だけで済んでいるが、そのうちアレが完成したらこの国規模になるだろう」


「魔導鉄道か。世界を縮める技術だよな。飛行機より維持しやすくて、こんな世界で運用するにしても安全で便利だ」


「最初にマッアサイア方面とこの街を往復する線路を建設中だろ? あれが出来ると世界が変わるぞ」


「だろうな。本当の意味での新時代の幕開けさ」


 物流が変われば各街で取り扱いできる物の量も変わるし、一発当てれば大儲けできる商会も増えるだろう。


 魔法と科学、これがうまく世界を回せば環境にあまり悪影響を与えずに世界を変えていける。


 その為に魔法学校に魔法工学なんて部門を新設する訳だしさ。


「十年後。この国はどうなってるんだろうな?」


「もしかしたらこの国だけじゃなくて、この世界から飢えが無くなるかもね」


 ここから先は各国の王や賢者たちが知恵を出し合っていい方向に導いてくれるだろう。


 俺はその時に知恵を出せる者を魔法学校で育てていく。この世界が人の手でより良い方向に向かっていけるようにな。




読んでいただきましてありがとうございます。

誤字報告ありがとうございます。とても助かっています。

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