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第三百三十三話 今年のうちに入学させないと来年以降は入学のハードルが上がると思ってるんだろうけどさ、うちの学校に関しては完全に能力主義だから爵位とかその他は一切考慮しないのにね

連続更新中。

楽しんでいただければ幸いです。



 三月中旬。俺が理事長をしている魔法学校とカロンドロ男爵が理事長をしている学校の入学試験が無事に終わり、四月から通う事になる四百人の生徒が決まった。


 魔法学校の方は俺が去年強引に五人捻じ込んだ実績があるから、最後の最後まであの手この手でなんとか入学させようとする貴族もいたけど、その貴族には全員また来年頑張って試験を受けるように言っておいたよ。別に年齢制限が厳しい訳じゃないから、その気があるんだったら何年でも挑戦できるんだしさ。


「今年のうちに入学させないと来年以降は入学のハードルが上がると思ってるんだろうけどさ、うちの学校に関しては完全に能力主義だから爵位とかその他は一切考慮しないのにね」


「王立になったら流石に貴族以外の入学って厳しくなると思うよ~。理事長先生はその辺りを考えてないだろうけどさ」


「今年の筆記試験は難しいと思うけど、あれ以上難しくしたりはしないよ。いや~、常識問題に引っかかって落ちる貴族のなんと多い事か」


「理事長先生の正解率が半分位だっけ?」


「むしろ半分も正解したんだぞ。褒めて欲しい所だ」


 貴族に一般常識を求めるのが間違っているのか、試験に不合格だった貴族の多くが一般常識のテストで赤点を叩きだしていた。なお、一般的な領民はほぼ満点だったという。


 ただ、実技や魔力測定でそのマイナスを挽回する貴族も多く、逆に普通の領民が魔力測定や実技で落第する事も多かった。


 そして特別というか自由課題的な試験もあり、独自の魔力回路や魔法構築などの一芸を示した者は無条件で合格としたんだよな。今回はひとりしかいなかったけど。


「あの自由課題の試験とエルフとかの亜人種枠。この二つが少しずつ問題になるかもね」


「自由課題に合格したのもドワーフだしな。でも亜人種枠を潰しただけで合格人数は変わらないだろ? 逆にあの枠がないとエルフとドワーフが半数を超えるぞ」


「そこなんだよね~。それがわかってない人は亜人種が優遇されてるとか言ってるけどさ、魔力量とか実技試験はドワーフとかエルフの独壇場だったよ」


「元々の種族特性として人ってのは割と劣ってるんだ。その代わりに全体的に万遍無く平均的な能力を有している。後は繁殖力と数だな」


 この世界の多くの国は人間が支配している。エルフは森単位でしか集落を作らないし、ドワーフも基本鉱山の近くでしか活動しない。


 だから草原や平地に国を作って勢力を拡大するのは人間なんだよね。どこでも変わり者はいるからドワーフやエルフでも小さい国を作る事があるみたいだけどさ。


「でもエルフとかドワーフの技術や知識は貴重だからね~。もう少し枠を拡大したいところだけど」


「これ以上亜人種の数を増やす必要はないよ。一定の数がいれば知識の共有はできるし、お互いに交流も増やせるからね」


 知らないという事は拒絶に通じる事もある。


 鉱山が存在しない地域ではドワーフと交流を持つ人間はいないし、エルフの住まない森に暮らしているとエルフと交流を持つことは無いだろうしね。エルフの場合は住んでる森の近くにいても敵対し合ってる可能性まであるし。


「近くに鉱山が無い貴族でも、ドワーフの建築技術とかは欲しがってるからね~。この学校に入学させたがってるのもこの国でも最先端の技術とか知識を扱ってるからなんだよ?」


「確かに高い能力を持った教師は集めたけど、まだまだ教える能力が高い人材はいるだろ? 自分の領地で魔法学校を開けば一石二鳥だろうに」


「カロンドロ男爵は特に規制してないんだけど、建設費用や運営費用がね……」


「そこまでは面倒見切れないな」


 そりゃ魔法なんてものを扱ってるんだから建設費用や運営資金は莫大な額になるし、魔法を教える人材に払う報酬もそれなりの額を用意しなけりゃいけない。


 人を育てるって事は未来を良くする事とほぼ同義だ。様々な考えを持つ人材がいれば何が不足して何が必要なのかが見えてくる。


 その人材を育成する場所にかける予算が無いんだったら、身の丈に合った教育環境を整えりゃいいんだよ。


「侯爵辺りは魔法学校の設立に踏み切ると思うよ。でも、侯爵クラスでもここまで大規模な魔法学校は無理だと思う」


「千人規模の魔法学校なんて異常だろうしな。精々一学年二十人くらいの学校になるかな? 五年も育てるのは大変だから三年で卒業させたりね。侯爵クラスだと生徒数が倍でもいけるかもしれないけど」


「反省文の枚数も少なくなるしね」


「それはうちの生徒が異常なだけだ!! カロンドロ伯爵の学校で反省文なんて滅多に書かせないって言うぞ。しかも、内容がうちだと笑って見逃されるレベルだし」


「のびのびと育てたいんだからいいでしょ? 常識とかにとらわれてたら新しい魔法とか技術なんて出てこないよ?」


「だから反省文だけで終わってるだろ? 向こうの学校で同じ事したら生徒数って半分以下になってるぞ」


 壁を壊したらほぼ確定とか言ってたよな。


 今は黒龍種アスタロト対策で物凄い強化してあるから壊せないけど、以前は酷かったからね~。新築の校舎がどれだけ破壊された事か。


「そのおかげで優秀な生徒も多いよ? やっぱり実践って大事だしさ」


「一年の時点でいろんな商会が目を付けてる生徒もいるしな。そのほとんどが問題児だけどさ」


 色々とやらかしてても目を引く人材ってのは多い。


 行動力ってのも割と評価されてるし、ここでやらかしてればそれが教訓として生きるだろうって考えだ。


「もう全生徒卒業まで面倒を見るしかないよ。みんな大切な事は忘れないと思うしさ」


「誰かをむやみやたらに避けたりしないし、誰かを傷つける為に魔法は使わない。避けられない戦いは仕方ないけどね。思いやりを持ってくれればいいよ」


 あのやんちゃ共が卒業時にどんな感じに育ってるのかは俺も楽しみだ。


 もう世界が滅びる可能性は無いんだし、ゆっくりといろんな物を吸収して巣立って欲しいな。


◇◇◇


 月が変わって四月になった。


 入学式には当然上級生も参加する事になる。毎年恒例のアレが開催されるからな。今年は一年の担任になる教師以外は準備に参加したから、今年は参加する教師の数が少ない。


「理事長の鞍井門(くらいど)です。この世界を滅ぼそうとしていた邪神が討伐され、平和となったこの国は大きく変わろうとしています。様々な技術が広まって生活が豊かになり街は大きく成長し、食べる物や仕事なども大きく変貌していくでしょう。ここで皆さんが学ぶ知識はこれからの生活をさらに豊かにし、多くの人を助ける力となります」


「討伐したの勇者先生じゃん」


「世界最強の勇者先生」


 そこの上級生。


 しっかり聞こえてるからな。この位で反省文は書かせないけどさ。


「教頭のダリアだよ~。理事長先生の言う通り、五年という期間でできるだけ多くの事を学んでほしいかな? 頼りになる先輩もたくさんいるから、いろんなことを教えて貰うといいよ。あと、うちの学校は割と自由な校則にしてあるから、いろんなことにチャレンジして貰いたいかな」


「やんちゃは程ほどにして欲しいけどね。さて、二年生は既にこの後に何があるのか知っているはずだ~。第二回、探せ校内大宝探しゲーム!!」


「よっしゃぁ!! 今年は絶対一番高いのを見つけるぞ」


「去年の分布状況は把握済み。今年はたくさんもらう!!」


「え? なに? そんなのどこにも……」


 流石に今年入学したばかりの一年生は殆ど驚いてるな。中には既にこの情報を入手してたのか落ち着いてる生徒もいるけどさ。今年も偽物の予定表にはこの後説明会って事にしてあったからね。


「ルールは簡単。各教室、廊下、この体育館、校庭、運動場にこのカードを隠してあります。見つけたカードは一人三枚まで保有する権利があり、ゲーム終了時に書かれている番号に対応した賞品が与えられます。今年も終了時に四枚以上持っていた場合は反則で失格になる場合もあるからね。トイレや学食にはないから、故意にそこに入らない様に」


「よし、頑張るぞ!!」


「年に一度の宝探し」


「今年は一年から先に探しに出かけて、その後に二年がスタート。新一年生に去年の情報を教えるもよし、その情報を独占するもよし。新一年生も先輩に話を聞くもよし、協力してカードを探すもよし、ひとりで推理能力を発揮してカードを探すもよし、その辺りの判断は任せるぞ。三枚見つけたら体育館に集合。三枚目を見つけた時点でおとなしく体育館に戻って後は発表を待つこと。制限時間は昼食前のお昼の十二時ジャストだ!!」


 イベントは楽しまなきゃね。


 今年も景品は豪華だぞ。


「今年も半数以上はシェルとの引換券です。いろいろ問題があるし今年も学生証や教師の資格証にチャージする形になります。ほんのちょっとだけ賞品の一覧を……」


「今年も豪華だな!!」


「一万シェルの数が増えてる!! 全体的に額が上がってない?」


「枚数が去年の倍だ。さて大量のカードの中からお宝が見つかるかな? ではイベントスタート!! 一年から探し始める事!!」


 大半の一年がドアから出ていくが、今年も体育館を探し始める生徒がいる。


 やっぱり毎年いるんだな。


「よし一年に後れを取るな!! 先輩の実力を見せつけてやれ!!」


「最高額のカードの場所は予想してる。今年は一枚も見逃さないわ」


 しばらくして二年も参加し、そして十二時ジャストに全生徒が体育館に集合した。


 今年は本当に二年が最高額のカードを独占し、九千シェル迄のカードはすべて二年生が勝ち取る結果となったぞ。来年からはもう少し隠し場所を考えるか。


 こうして去年と同じように宝探しが終わり、昼休憩を終えてこの日の授業は終わった。


 意外に面倒見のいい生徒が多く、これだったら今年は反省文の枚数が少なくて済みそうだ。あいつら絶対に自分の武勇伝も話すだろうしな。




読んでいただきましてありがとうございます。

誤字報告ありがとうございます。とても助かっています。

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