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第三百三十話 神界への報告も終わったし、これではれてこの世界の救済系の仕事は完了って事だ。後はこの世界を良くしていく人材の育成と、自分の子育てに集中できるぞ

連続更新中。

楽しんでいただければ幸いです。




 神界召喚から帰還後、なぜか寝室にヴィルナが突入してきた。部屋の中に俺が一時的にいなかった事に気が付いていたらしく事情を説明したら一応納得はしてくれた。うん、納得はしてくれたんだ。


 でも納得する事と焼きもちを焼かないでいる事はイコールじゃないんだよね。次の日の昼まで行動不能になる位しっかり搾り取られたよ。魔力も馬鹿みたいな量になってるから多少吸い上げて貰わないといけないんだけどさ。


 今はとりあえず動けるようになった翌日の昼過ぎだ。


「神界への報告も終わったし、これではれてこの世界の救済系の仕事は完了って事だ。後はこの世界を良くしていく人材の育成と、自分の子育てに集中できるぞ」


「ソウマは本気でそうなると思っておるのか? カロンドロ男爵から使いが来ておるのじゃが」


「そうだよな。他にも仕事っていくらでもあるしな……」


 メインの仕事は俺しか持っていない建材関係の販売。晩餐会などの料理、各種教会やドワーフ関係の調停などだろうな。


 魔法学校の理事長って肩書もあるけど、あっちは資金提供と育成方針の決定くらいしか関われないしね。


「ここ一年位は本当に忙しいかもしれないな。やらなきゃいけない事も山ほどあるし」


「ほとんどソウマが関わっておるからの。仕方が無かろう」


「二年くらい前は平和だったのにな」


 自分で言っておきながら二年前ってどんな感じだっけ?


 まだ雷牙(らいが)と出会ったなかったころか? 新年会の料理を頼まれた最初の頃の様な気がするね。


「使者を待たせるのも悪かろう。身支度を整えてゆくがよい」


「わかったよ。今日は何の話合いだろうか? もう大きな問題は無い筈だけどな」


 この世界を脅かす邪神の残滓は倒したし、即位式は四ヶ月後だ。


 一番近い何かは祝勝会か? もしかしてその日程が決まったのかもしれないな。


◇◇◇


 毎度おなじみになったカロンドロ男爵の屋敷での会議。


 男爵の屋敷も色々増改築されて王の間というか玉座の間みたいな物まで作られてるって話なんだよな。そのうちこの近くに城を建てるかどうかは知らないけど、アレって無駄だと思うから建てない可能性は高いよね。


 今回も集められたメンツは俺、雷牙(らいが)土方(ひじかた)、スティーブンの僅か五人。他では話せない重要案件ってのはこれだけで分かる。


「さて、今日集まって貰ったのは他でもない。勇者クライドに先日の一件の説明を聞きたいからなんだが?」


「先日の一件? ああ、邪神の残滓と呼ばれていた前王妃クリスタッロ。正確にはクリスタル男爵の討伐絡みですか?」


「その通り。それとあの女神の一件だ」


「女神ユーニスのやらかしは単に引き継ぎのついでだと思いますよ。今までは女神フローラがこの世界を仮で管理していたんですが、今後は女神ユーニスが管理するようになったみたいですし」


「女神関係の話をそんな近所の噂話程度に扱うんじゃねえ!! あの一件で俺たちがどれだけ教会関係者から質問攻めにあったか……」


 今後女神ユーニス教が出来て、女神ユーニス教会が建てられる可能性もあるしな。


 というか、女神フローラ教は女神ユーニス教に看板やり替えた方がいいんじゃないの?


「神界の方でもその辺りはいろいろややこしいんだよ。女神シルキーのすぐ後輩が女神ユーニスでその後輩が女神フローラなんだけど、女神に昇格したのは女神フローラの方が先でとかいろいろと……」


「神の事情をそう簡単に話すんじゃない」


「女神ユーニスに関しては割と長い付き合いだし、割りと気心知れた仲だからいろいろ情報が入って来るんだよ。あの宣言もこの世界の管理を引き継いだ報告だろうけど、その理由として俺が邪神の残滓を倒したって事を広めたかったんだと思うよ」


「その宣言が問題でな。レオナルド・モルビデリが前王妃クリスタッロに利用されていた悲劇の王という話が広がりつつあるのだ」


 見方によっちゃあの王さんも被害者だしな。


 でも、黒龍種アスタロトの悪事を見て見ぬふりをしていた事は擁護不能だ。


「黒龍種アスタロトの暗躍を止められなかった時点で愚王確定ですよ。雷牙(らいが)はかなり昔から王都にいた訳ですし」


「確かに俺は王都にいた。黒龍種アスタロトには逃げられちまったけどな」


雷牙(らいが)は初対面だし、向こうが覚えてたから仕方がない。その位の時期に動いてりゃかなり多くの不幸は防げたはずなんだ。少なくとも南方の村や町は壊滅せずに済んだし、マッアサイア方面で塩食い(ソルトイーター)に多くの冒険者が食われる事もなかった」


 ナイトメアゴートもあいつの仕業だしな。


 他でも色々魔物を生み出していた可能性はある。


「ライガも勇者としては有名だが王都周辺ではそこまで活躍していないからな。割と遠い貴族領とかでは活躍したが」


「近くにライジングブレイブがいるのに黒龍種アスタロトも魔怪種を仕掛ける真似は出来なかったんだろう。あの時点で仕掛けられたら流石に黒龍種アスタロトでもただじゃすまないしな」


 完全に倒しきるのは無理でも、再生に長い年月が必要なダメージくらいは与えられる筈。


 そうするとあいつの計画は完全に破綻するし、クリスタル男爵を倒してこの世界を滅ぼす計画も水の泡だ。


「それはすべてを知っている者だから言える言葉だろう? あいつにそこまで要求するのは酷ではないか?」


「王とは、何をしようとしたかではダメです。黒龍種アスタロトや前王妃クリスタッロの暗躍を止めようとした、しかし力不足でできなかった。これは通用しません。すべての権力と自分の頭脳をフル稼働させて最低でもどちらかの力を削ぐべきだったんです」


「少々厳しくないか?」


「最低でも聖魔族の保護は行うべきでした。あのまま禍々しい魔素が世界に満ち溢れれば、あいつらを倒しても最終的にこの世界は魔界化したでしょう」


「ヴィルナが生き残ったのは偶然だからな。お前と出会ったのもある意味運命だったのかもしれないが」


「春になったら各地に聖域を作って、そこで魔素の浄化を行わなければいけません。聖魔族がいなければそれすら不可能だったわけですよ」


 本当に俺たちは運がよかった。


 ヴィルナと俺が結婚して一緒にいなければ、この広い世界のどこかにいるヴィルナを探すところから始めなければいけない所だったしな。


 それどころか西の森とか穀倉地帯とかは禍々しい魔素に汚染されたままだった訳で、食料の生産計画にも大きな問題が起きていたはずだ。


「聖魔族の保護か。それどころか悪評を流しておったからな」


「たとえ力及ばずとも先の先を見据えて手を打っていれば良し、しかしあの王は何一つ未来の為の手を打つでもなく王族に質素倹約を強いる事しかしませんでした。アレは単なる自己満足です」


「お前はあの王に対して本当に厳しいな。確かに無能な王は有害ではあるだろうが」


「全国民の未来を託されてるんだぞ? 例えば俺たち勇者と呼ばれる者は敵を倒して人を救うのが使命だ。その俺たちがちょっと勝てそうにないからその敵は放置して見て見ぬ振りしますとかありえるか?」


「ないな。最後の一欠けらの力が尽きるまでその敵をどうすれば倒せるか考え、ありとあらゆるものを計算に入れて勝負を挑む。なるほど、お前の言いたい事が分かった」


「王妃と王子はどうでもいい。でも、この国を治めている王だけはそれじゃ許されないんだ。最低でも世界中の人の中からあいつらを倒せる存在を探しだし、その勇者たちに未来を託す必要がある」


 雷牙(らいが)はブレイブの力を持ったままこの世界にいたし、土方(ひじかた)だってこの世界の人間に比べたら規格外の力を秘めていた。


 あったんだよ、あの王が自己満足の質素倹約生活と財政再建をする前にやらなきゃいけない事が山ほど。


「なるほど。ではお前はあくまでもあの王は加害者側だと言いたい訳だな」


「王である以上傍観者では許されないでしょう。何かあった時に首を差し出すのも王の役割です。その事はあの王も承知していると思いますが」


「覚悟というものは鈍るものでな。ここで監禁されておるとはいえ割と優雅な暮らしをしておると命が惜しくなるらしい」


「最後の晩餐のメニューを変更させるくらいですからね。一枚のパンとワイン。これだけ口にして潔く首を差し出すかと思えば……」


「本当にお前は厳しい所があるんだな」


「この世界を破滅に向かわせていたクリスタル男爵を倒してめでたしめでたしで終わるわけにはいかないからな。それにこのままあの王を解き放てばこっちについた貴族がどう出るか」


 カロンドロ男爵は人格者だしできれば誰も殺さずに収めたいのかもしれないけど、こちらについた貴族連中に厳格な面は見せるべきなんだ。


 でないとここから先の国家運営で絶対に影を落とす。舐められたら終わりってのはある意味真実ではあるのさ。


「お前が儂の所にいる以上、反旗を翻す馬鹿はおらぬだろうがな」


「この世界の担当女神が変わったから宗教関係は今しばらく混乱するでしょう。そこに乗じる誰かがいないとも限りません」


「なるほど。あの王の首ひとつでそういった連中を黙らせようというのか」


「そりゃ、誰も殺さずに済めばそれが一番でしょう。でも、今回はそれが許される場じゃないです」


「王としての責任か。儂もその言葉は胸に刻んでおこう」


「カロンドロ男爵は大丈夫ですよ。俺が……、いえ、ここにいる全員が全力で支えていきますし」


 少なくともカロンドロ男爵が国王になれば本当に英雄クラスの人材がこの国を支えていく。


 それも一人や二人じゃないしね。


「儂ほど恵まれた王はおらぬだろうな。まだ正式には王ではないが」


「もう王だろう? 今やっている国家再建計画はいち領主の仕事じゃねえよ」


「ここにいる英雄がいればこその計画だ。誰一人欠けても実現不可能な計画だろう?」


「それはそうだがな。少なくともクライドとヒジカタがいなければどうにもならない。ライガにも仕事が山ほどある」


「俺がしているのは衛兵の訓練だぞ。逃げ出す奴も多い」


「将来の近衛兵候補だ。逃げる奴はそれまでの奴でいい」


 ルッツァと同レベルの人材の育成。


 それが終われば雷牙(らいが)は割と暇になるだろうな。おそらく将軍か何かの役職を任されるだろうけど。


「元国王レオナルド・モルビデリの処罰に関しては今まで通りの計画で行く。そして各宗教関係者への説明はクライドに任せることとする」


「了解しました。女神ユーニス教会の建設が必要かもしれませんが」


「そこは任せる。お前であれば女神とも連絡が出来るのであろう?」


「今まで散々話してきた仲ですしね。色々相談しながら話をすすめますよ」


「本当に恐ろしい男だ。お前に逆らえば神敵にできる訳だな」


「そこまで狭量じゃありませんよ。平和を大きく乱す奴は許しませんけどね」


 私利私欲も多少はいいさ。


 人の生き血を啜る様な行いをした時は俺も動かざるを得ないけどね。


 さて、宗教関係者への説明は割と面倒な事だぞっと。



読んでいただきましてありがとうございます。

誤字報告ありがとうございます。とても助かっています。

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