第三百二十八話 ようやく玄関までたどり着いたな。王城に向かったのは今朝の事なのに、まるで何百年も経ったような気分だぜ
連続更新中。
楽しんでいただければ幸いです。
家の敷地内に入ると帰ってきたって気にはなるけど、元の世界基準でいうと敷地内に入ってもでっかい団地の入り口に辿り着いただけで家までもう少し歩くって感じなんだよな。
いつもはバイクで玄関先まで乗り付けてるんだが、今日は何となく歩いて戻ってきたんだよね。家に戻るまで道で出会った人に散々拝み倒されたけどさ。
「ようやく玄関までたどり着いたな。王城に向かったのは今朝の事なのに、まるで何百年も経ったような気分だぜ」
僅か半日程度の時間で本当にいろいろあったからな。
トドメが女神に昇格したユーニスのアレだけどさ。彼女が女神になれたのはこっちからも祝福するけど、あんな真似をされると今後本当に動きにくくなるんだよね。今はそんな事はいいか。
「ただいま」
「おかえりなさいなのじゃソウマ。約束通り帰って来てくれたのじゃな」
「約束通り無事に戻ってきたよ。ちゃんと邪神の残滓も倒してね」
「……無事というのは少し違う気がするのじゃが。わらわに嘘をつくのは感心せぬの」
流石にヴィルナ。雷牙すら気が付かなかったのに、即座に俺の変化に気が付いたみたいだ。
「これでもかなり抑えてると思ったんだけど。やっぱりヴィルナくらいになると気が付くのか?」
「そこまで身体から神力を発する人間などおらぬ。それでも抑えておるという事じゃが、魂が完全に神格化した訳じゃないんじゃろ?」
「まだ人の域は超えてないね。魔力とか氣と同じ位には制御出来てるし、もう一度アルティメットフォームにならない限り神格化が進む事はないよ」
魂の神格化。神力などを使って魔族などと戦っていると起こる現象のひとつ。
不老不死、様々な物に対する超強力な耐性、未来予知を含める人外の能力の発現など様々な恩恵を受けることはできるが、分類上は人類というより神に近い存在へと変わる。
当然、余程の事が無い限り誰かとの間に子を成す事などできず、人として生きる事は諦めなくてはならない。
「その力はもう二度と使わぬと誓って欲しいのじゃ。少なくとも、わらわと共に生きる間は」
「誓うよ。もうあの力は使わない。マキシマムフォームまでだったら問題ないし、余程の敵以外はあれで倒せるからね」
「本当に本当じゃな? ソウマは既にこの世界を救ったのじゃし、これ以上は他の誰かに任せればよいのじゃ」
「他の世界を救うのは、最低でもヴィルナとの間に子供が出来てからにするよ」
「……ソウマは少し気が早いのじゃ」
今年中って事だから、そこまで遠い未来の話じゃないんだけどね。
でも、ギリギリって言ってたから子供が生まれてくるのはおそらく来年だろうな。その頃にはシャルも色々成長するだろうし、いいお姉ちゃんになってるだろう。かといって、シャルにそれを強要はしたくないけどさ。
「そう言えばシャルはどうしたの? いつもだったら真っ先に飛び出してきそうなのに」
「今日はわらわに譲って貰ったのじゃ。居間でソレイユたちが相手をしておる」
「本当にソレイユたちはよく気が付くメイドロイドだよ。感謝してもしきれないな」
「シャルも色々察して譲ってくれたのじゃ。本当に良い娘じゃの」
ネコの時から賢い子だったからね。ちょっと悪戯をする事もあったけどさ。
この幸せな時間がいつまでも続けばいいんだけどな。もうこの世界を脅かす存在はいない訳だし。
「それじゃあシャルにもただいまを言いに行こう」
「その前にする事があるじゃろ?」
「んっ。行く時にも忘れてたからね。絶対戻ってくるつもりだったから」
「ソウマ。愛してるのじゃ。何処にも行ってはダメじゃからの」
「もうどこにもいかないよ。仕事にはでかけるけどさ」
俺が直接遠征する機会はかなり減るだろう。
俺には魔法学校の理事長って肩書と仕事があるし、この世界の魔物だと雷牙やルッツァ達でなんとかできる敵ばかりだろうしな。
女神ユーニスがやらかしてくれたから俺をむやみやたらに動かすのは危険だろうしね。
「シャルただいま。ソレイユたちもいろいろとありがとう」
「おと~さん、おかえりなさ~い♪ 悪い奴はやっつけたの?」
「ああ。もうこれ以上無いくらいに完璧にな。これでこの世界は平和になったよ……。って、シャル、どうかしたかな?」
「おと~さんからなんだか不思議な感じがするの。神様みたいな感じ?」
シャルも気が付いたのか。限界ギリギリまで俺のアイテムボックスに神力を流してるのに、それでも気が付くなんて相当に鋭い感覚を持っているんだな。
「今回の戦いで少しあってね。大丈夫、特に問題は無いよ」
「本当?」
「ああ。お父さんは別に今までと何も変わっちゃいないさ」
ほんのちょっと変わってはいるけどね。
未来予知の力とかいろいろ抑えるのに苦労してるんだよな。一定以上の範囲内に敵対勢力がいると感覚も鋭敏化するしさ。攻撃された時の反撃もほぼフルオートだからこの辺りは注意しないといけない。
「先ほど女神さまが色々と話されていましたが……」
「忘れてくれ。大した事じゃない。世界の救済なんて、そこまでめずらしい事じゃないだろ?」
「一生に一度ある確率の方が低いと思いますが」
「ブレイブの面子だったら年イチ位で救ってるよ」
あいつらって毎年どこかの勢力を潰してるしな。
世界の平和をかなり長い間守ってたし、もしかするとあの世界だと彼らは今もまだ守り続けているのかもしれないしね。
「そこまで気軽に救われる世界というのも終わっている気がしますが」
「世界を脅かす勢力がどの位いるかだよな。俺がこの世界に来た時には割とヤバめの状況だった訳だしさ」
カロンドロ男爵領もほぼ四方を敵に囲まれていたしね。
俺がいなかったら雷牙達がなんとかしたんだろうか?
流石に黒龍種アスタロトやクリスタル男爵戦は雷牙だけだと相当に厳しいと思うけど。……だから俺が来るまで世界の滅びが確定した状態だったのかな?
「ソウマはその脅威をほとんど討伐しておるじゃろう? 既にあの姿にならんでもこの世界でソウマに並ぶ者などおらぬはずじゃぞ」
「今の状態だとそうなるだろうな。流石に幾ら抑えてても俺が神力を使える以上勝負にすらならない」
「その力を使うのは反対なのじゃ。使おうとせずとも発動するのじゃろうが」
「抑えてるから大丈夫さ。この漏れてる分だけでも十分すぎる力だしね」
もともと強力過ぎる力だしな。
ライジングブレイブも最終フォームだと結構神力を発してる筈なんだよ。雷牙はその意味が分かってて多用してないみたいだけどさ。
「ソウマも無事に戻ってきた事じゃし、今晩は豪華な食事にするのじゃ」
「よし!! 俺が全力を出して料理するよ」
「ダメなのじゃ。ソウマは今日はそこでシャルの相手をしておるといいのじゃ。今日の晩御飯はわらわが作ると決めておったからの」
「そうか、分かった。今日の晩御飯はヴィルナに任せるよ」
「楽しみにしておるのじゃ」
ヴィルナの料理の腕も相当上がってるしね。どんな料理が出てくるか今から楽しみだよ。
◇◇◇
晩御飯のメニュー発表!!
メインの料理はスッポンの鍋。スッポンの唐揚げまで用意してあるぞ。更にウナギの蒲焼、ウナギ入りオムレツ、幻マグロの山掛け、牡蠣のおろしポン酢。清々しいくらいに目的が分かる料理のオンパレードだった。
俺の疲労回復とかの意味もあるんだろうけどさ。
「わ~、すご~い!!」
「ソウマには元気になって欲しいからの。今日はお疲れじゃろうし」
「鍋料理は胃にも優しいし、牡蠣もおいしいよ。これ、岩牡蠣か?」
「南方産の岩牡蠣じゃな。わらわもアイテムボックスを持っておるのでこの位は用意できるのじゃ」
ヴィルナのアイテムボックスもかなり大きくなってるから食材位は余裕で入る。一年分くらいの食材を入れてもかなり余裕の筈だ。
他にも色々入れてるみたいだけど、何を入れてるのか詮索するのは野暮だしね。
「美味しいよ。疲れが吹き飛ぶようだ」
「そこまでの事は無かろう。じゃが、ありがとうなのじゃ」
「仲睦まじいのはよろしいのですが、シャル様もいますので……」
「大丈夫だよ。シャル今日はソレイユたちと寝るんだ~」
完全に退路を断たれた気分だ。
流石に今日は後遺症が凄まじいと思うからいろいろと避けたかったんだけどね。
でも、こうしてヴィルナ達とご飯を食べて何気ない会話をする。これだけで戻ってきたんだって心に滲みるよ。この何気ない平和な時間を大切にしないとな……。
読んでいただきましてありがとうございます。
誤字報告ありがとうございます。とても助かっています。




