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第三百二十四話 裏口入学というか、金でなんとかって貴族もいるのか? ここは子供の才能を伸ばす学校だぞ? いくら金を積まれてもダメなものはダメに決まってんだろ?

連続更新中。

楽しんでいただければ幸いです。



 王都周辺御街道の封鎖が解けた為に王都よりも北の貴族領から魔法学校やカロンドロ男爵の学校の見学に来る貴族が増えてきた。


 といってももうすぐ試験なんだからその時にくりゃいいだろっておもったけど、魔法学校に入学させたいけど子供が魔力不足の場合はカロンドロ男爵の学校にとかっていう考えの貴族もいるらしい。試験の日は同じ日だからどっちかしか受けられないんだけどね。


 どっちの学校も見学希望者がスハイツ伯爵領やパスクアル伯爵領辺りからも来ているそうで、あの辺りから来る貴族はかなり魔道具で強化した馬車を使ってきたって話だ。そこまでする?


「流石に貴族だよね。金貨を積んだら何とかなるんじゃないかって人もいるみたいだね。うちの教師は給金もいいし理事長先生に恩義を感じてる人ばかりだから、どれだけ金貨を積まれても追い返してるけどさ」


「裏口入学というか、金でなんとかって貴族もいるのか? ここは子供の才能を伸ばす学校だぞ? いくら金を積まれてもダメなものはダメに決まってんだろ?」


「魔力測定をお願いしてくる貴族もいるけど、その位は受け付けてるよ? 有料にしたけど」


「……どの位取ってるんだ?」


「貴族側の言い値かな? 基本的には向こうが出すって言った額で引き受けてるよ? こっちが考えてた額より少なかった事はないかな~」


 有料魔力測定の費用は半分が測定した教師、残り半分が学校の資金源となる。


 そういえばエルフのナディーヌ先生が最近妙に上機嫌だ。購買にも超が付く高級化粧品などの発注が彼女の名義で届いているらしい。あの短期間でものすっごい稼いでるだろうからな。


「それで、特別待遇してもいい様な生徒はいたの?」


「残念ながらこっちからお願いしたいくらいに魔力が高い子はいなかったみたい。理事長先生クラスだと測定するまでもなく見るだけで分かるんだけどね」


「そんなに?」


「元々凄かったけどさ、王都から帰ってきた後はヤバいよ? ナディーヌ先生の眼には魔王か何かに見えてると思う」


「魔王か~。って、そこまで? どの位魔力があがってるんだ?」


「たとえるんだったら元の数値が生徒くらいで、戻った後があの時の理事長先生位? ナディーヌ先生が遠目で見てびくっ、ってなってたよ?」


 化け物じゃん。ナディーヌ先生は俺の魔力量に割と慣れてる筈なのに、それでもそこまでの反応なんだ。


 ……そういえば魔力測定できる教師が王都から戻った後は全然俺に近付いてこないよな。それが原因か。 


「それだけデカい魔力を前にすると魔力酔いじゃないけど気分が悪くなるよな。……もしかしてダリアも?」


「私は魔力が見える程度だからマシかな? でも、街のどこにいても理事長先生の場所は特定できるよ?」


「ははは。それは凄いな……。っ!!」


 いや。それに関しては笑い事じゃないぞ。


 王城にもう一度行って奴の居場所を特定しようとした時、あいつが俺の位置を正確に把握できるって事と同じだ。そりゃ魔力マーカーじゃないけど、これだけ馬鹿でかい魔力の人間が歩いてれば分かるよな。


「どうしたの?」


「魔力を抑える方法を考えないといけないなって思ってね。それも割と可及的速やかに」


(ヴリル)も駄々洩れだから抑えた方がいいかも。こっちの方はまだ見て分かるレベルじゃないんだけどさ」


「ん? 俺は男だから多分魔力より(ヴリル)量の方が多いよな? それなのに大丈夫なのか?」


「元々(ヴリル)は魔力より力としては弱いからね~。(ヴリル)が飽和状態になると全身から黄金色の粒子が溢れ出るっぽいよ」


 蛍かよ。しかもそれが体内から出てくるって相当だぞ。


 そんな人間がいる訳ないじゃん。割と人外化してる俺ですら全然そんな兆候が無いのにさ。


「そんな奴、本当にいるのか?」


「何かの本で読んだことがあるんだけどね~。って、本当は多分ほかの世界の話かな?」


「今は中身もダリアだよな?」


「あれだけ身体を貸してたら割と知識なんかも私に流れてくるんだよ? 人の身体だと思って好き勝手してくれてるしさ」


 天使ユーニスがダリアの身体使ってんのばれてんじゃん。しかも、割と怒ってるぞ。


「向こうに悪意はないっぽいから許してやってくれ」


「それは理解してるんだけどね~。向こうの気が緩んでるとさ、たまにいろんな知識が流れてきたりするんだよ」


 ダメじゃん。それ割とダメなケースじゃないの?


 神界の知識の漏洩とか一番ヤバいケースじゃない? 今は返事が無いだろうけどさ。


「その辺りは黙っててもらえるとありがたいかな。ヤバい知識も混ざってると思うし」


「大丈夫。おかげで助かったこともあるし、お互い様かなって思ってるよ。必要が無ければこんなことしないだろうしね~」


「そりゃそうだろうけどね。もうすぐその機会は減ると思うから」


「どういうこと?」


「この世界を滅ぼそうとしていた脅威が全部消えるからさ。綺麗さっぱりね」


 邪神の残滓を倒せば、天使ユーニスがダリアの身体を借りる必要はなくなる筈。後の問題は人類やこの世界に住む亜人種たちが自らの力でなんとかしていかないといけない問題の筈だから。


 全部神様にお願いってのは、世界に生きてる者としてどうかと思うしね。


「理事長先生が倒すんでしょ? 私って本当に世界を救う勇者と話してるんだね~」


「たまたま俺にあいつらを倒せる力があっただけさ。平和になった後は持てあますだろうけどね」


「他国に対する抑止力にはなると思うよ」


「戦争を完全に否定はしないけど、無くて済むんだったらそれに越したことはない。泣くのはいつも弱い者だしね」


 話し合いが不可能で、殴らないと分からない相手がいるのは分かるよ。


 この世界だとホントに相手を潰すまで交易なんかで締め上げるか、戦争以外のエグイ方法使ってるみたいだけどさ。


「それと異種族枠の話。エルフとかドワーフに各五パーセント程度。十人程の優遇枠を用意する話なんだけど」


「ああ、あれか。長い時間を生きてるエルフの知識もそうだけど、ドワーフとかの知識も凄いんだ。彼らには優遇して枠を用意するべきだ。といっても、全異種族合わせて最大で三十人までって制限があるけどね」


「それそれ。なんで制限まであるの?」


「ドワーフとかエルフは魔力が高い。まともに試験したら異種族だらけになっちまうんだ。ここは人族の魔法学校だからね。いくら魔力が高くても、必要以上に彼らは受け入れないよ」


 人口的な比率からいってもその辺りが妥当だろう。


 ハーフとかはカウントしないんだしさ。その辺りもあまり多くなり過ぎたら対策するけど。


「本当にいろいろ考えているんだね」


「基本的にはこの貴族領を良くするための学校だったからね。ここが王立になったらまた色々変わると思うけどさ」


「王立か~。そうなると大変だね」


「そうだな。今までみたいな反省文の山は勘弁してくれよ。対外的にイメージが悪い」


「努力はするよ。するんだけどさ、ついうっかりは勘弁してね」


 ここ最近は反省文の量が本当に減ってきた。


 自分の力を試したいって色々足掻いてた生徒が自分の力を理解してきたからだろう。高みを目指すんだったらそこから頑張らないとな。


「今年は退学も停学も無かった。俺としてはそれで十分だとおもってるよ」


「ありがとう。さっすが理事長先生、話が分かる~」


「今の俺を怖がらずに近付いてくる生徒は少ないだろうしな。来年度以降はホントどんな扱いを受ける事やら」


「救世の勇者で間違いなく侯爵以上になるでしょ? 教会関係者の最重要人物で、商会とかギルド関係の裏ボス? うん、失言ひとつで人生終わりそうだよね」


 改めて確認するととんでもないな。


 確かに俺でも近付きたくない奴だよ。それ。


「食べ物を粗末にしたり、故意に人を傷つけなけりゃそこまで怒んないよ」


「今の二つはもう一度全教師と生徒に通達しておくよ。私もその二つは言い聞かせてるんだけどさ」


「アレンジャーどもを特に迫害とかはしないけどさ、味覚の矯正はしっかりしてやってくれよ。将来、晩餐会とかの場で恥をかくのはそいつらだし」


「あはははっ、理事長先生が料理を作った晩餐会でそれやったら人生終わりそうだしね~」


 俺が許しても、他が黙ってないだろうしな。


 味覚を鍛えろとまではいわないけどさ、そこそこ味が分かる程度までは努力した方がいい。特にこれから先のこの国で暮らすんだったらね。


 授業でいろいろやってるから、将来料理屋とかを開く生徒もいるかもしれない。別に魔法学校だからって言っても、全員魔法関係の仕事に就く必要もないしな。



読んでいただきましてありがとうございます。

誤字報告ありがとうございます。とても助かっています。

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