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第三百十三話 それもありますけど学校なんかの問題もありましてね。王都方面の街道が封鎖されているにも関わらず入学希望者が多すぎて困ってる状態です

連続更新中。この話から新章が始まります。

楽しんでいただければ幸いです。


 王都。このアツキサトがそう呼ばれるようになるのはそう遠くない未来の話だろうけど、そう呼ばれる前にやらなきゃならない事は意外に多い。


 まずは王都にでっかい巣を作り上げた魔怪種アリギラスクイーンの排除。これを討伐した後で王城を攻略し、そこにいると思われる王族の身柄を拘束してカロンドロ男爵に引き渡さないといけない。すでに死んでた場合には首だけでも回収しないといけないんだけどね。


 黒龍種アスタロトと邪神の残滓の討伐。これに関しては男爵が王位に就いた後でもいいけど、出来れば黒龍種アスタロトだけでも先に討伐しておきたい。そうすれば後がかなり楽になる筈だ。残す問題は少ない方がいいし。


「わざわざ儂の屋敷に来たという事は王都関係なのだろう?」


「それもありますけど学校なんかの問題もありましてね。王都方面の街道が封鎖されているにも関わらず入学希望者が多すぎて困ってる状態です」


「その話か。いろいろと急いで進めてきた事が裏目に出た形だな。良い傾向ではあるが現状あれだけの希望者を学ばせる学校は用意できぬ。魔法使いは資質が必要な為に此方ほどではないのだろう?」


「誰でも魔法使いになれる訳じゃないですからね。資質もそうですけど魔力をどれだけ保有しているかも重要ですし」


 魔力をどれだけ有しているかは訓練次第で伸びるとは思うけど、それでも才能というか限界って物がある。種族特性もあるから断言はできないんだけどねハーフとかも多いし。


 俺やヴィルナみたいに無制限ってのは本当にレアっぽくて、人間なのに魔力の保有量が多すぎて魔族と誤解されるのは俺くらいらしいね。


「それで、この件で何か考えがあってきたのだろう? もうじきスティーブンも来る。少し待とうではないか」


「最初からあいつがいないのは珍しいですね」


「流石に連日ここで会合ばかりしておったのでな。リリがとうとうキレたという話だ」


「あいつも山ほど仕事を抱えてそうなのに、よく毎日顔を出せるなと不思議だったんですけどね。お、もうきたみたいですよ」


「すまん、待たせた。ちょっと仕事が立て込んでてな」


「サインをする書類が山ほどあったのか?」


「よくわかったな、いや~机の上に決裁待ちの書類が山積みだったぜ。ここ数年は方々に手を出してるからな、俺がサインしないと話が進まない仕事が多すぎるんだ」


 グレートアーク商会も超が付くほどの大商会だからな。俺もかなり仕事を増やしてるんだけどね。


 今からさらに増やす訳だしさ。


「ここに呼ばれたという事は覚悟はしておるのだろう?」


「また仕事が増えるのか?」


「最終的には増えるだろうね。ただ、これも未来への投資というかやっておかないと後々後悔しそうな話だ」


「儲け話ではないみたいだな。という事は学校関係か?」


「流石はスティーブン。情報位は仕入れていると思うけど、裕福な家庭が増えて子供に教育を受けさせたいって家が増えてな。入学希望の生徒数が想定をはるかに超えてるんだ。しかも、王都方面は街道が封鎖されてて来れないからあそこより南だけでね」


 王都周辺の街道には伯爵家とかも多いし、侯爵家まであるからあそこから入学を希望する生徒は多いだろうね。


 王都を開放してその辺りの貴族を受け入れないと、後々問題になりかねないのも大きな問題なんだが。


「今後の事を考えたらこの街の学校に通わせたいと思うだろう。家庭教師も優秀だろうが、やはり王立の学校を卒業したという箔は欲しいだろうしな」


「まだ王立ではないぞ? いずれそうなるとはいえ……」


「もう時間の問題だろう? 王都への侵攻はどんなに遅くても今週中だ。その後、この国の姿は大きく変わる」


「今週中? 俺はまだ何も聞いてなかったんだけど」


「今日話すつもりだったからな。こちらの防衛要因としてライガとヒジカタを残していくという話は変わらぬのか?」


「俺一人で攻めた方がいいでしょう。先日の様にどこかからか攻めてきた時、雷牙(らいが)土方(ひじかた)しかいない場合は動けないでしょう?」


 ここまで来たら向こうが逆転勝利するにはこの街を壊滅させるくらいしかない。


 その時、おそらくどこかほかの場所を攻めるだろうけど男爵領の街には結構な数の警備ロイドを配置してある。アレを壊滅させるには相当な戦力が必要だし、最低でも魔怪種クラスを送り込むしかない筈。流石にあの真魔獣(ディボティア)は残ってないだろうしな。


「こちらとしてもその方がありがたいのだが、お前は大丈夫なのだろうな? 万に一つでも負ける危険があるのであれば……」


「勝負に絶対はありませんが、負ける事は無いでしょう」


「本当だろうな? お前を失うとこの先の歴史が大きく変わるんだ。それに、お前にも負けられない理由があるだろう?」


「だから絶対に負けられない。たとえ、色々と反則的な力を使ってでも生きて帰るさ」


「あれだけ色々とヤバい力を持っていながらまだ何かあるのか?」


「本当に奥の手だけどな。使いたくない物も結構あるんだ」


 アルティメットフォームを使えば本当に敵は無いんだけど、たぶんあれを使った後の反動は今までの比じゃないだろうしな。


 マキシマムフォームまでは神力(プラーナ)を使ってはいたけど、ベースの力は(ヴリル)で構成されている。でも、アルティメットフォームだけはまじりっけなしの神力(プラーナ)で動いてるんだ。


 普通に攻撃しただけでアルティメットクラッシュを使ったのと同じ位の反動があるだろう。必殺技なんてつかえばどうなる事やら……。


「絶対に生きて帰れ。お前が負けるとは思わぬが、ここに戻らなければ負けたのと同じだ」


「男爵が即位する姿を見る為に戻りますよ。俺が戻るって事はそうでしょう?」


「そうだな。このアツキサトは新王都となり、この国の中心となるだろう。レイドラント王国という旧国名は廃止され、新しい名前を持つ国に生まれ変わるのだ」


「もう決まってるんですか?」


「幾つか候補はあるが、今のところ候補どまりだな。即位するその時までには決める手はずだ」


「その件も含めてうちの商会でも色々動いてるんでな。本当に仕事が多くて仕方がない」


 もしかして学校の件で動けなかったのはそっちが忙しかったからか。


 なにも無けりゃこいつや男爵が知ってて放置するとは思えないからな。


「という事は学校のは話を持ち込んでも無理か?」


「無理だな。うちの商会員にもかなり無理をさせている。商会の頭としてあいつらにこれ以上仕事は回せんぞ」


「で、お前の事だ。何か腹案があるのだろう?」


「各領都の教会に学校の運営をさせる方法。宗教色が強くなる恐れもありますが、問題は少ない筈です」


「元々学校の真似事をしておるからな。そこに任せるのか?」


 教会が大きいとはいえ、すぐに毎年多くの生徒を受け入れる体制は出来ないだろう。


 とりあえず領都内で学習意欲のある子供に勉強を教えるだけでもいいしね。


「寄付という形で各教会には予算を出します。新しい校舎などは現地で建設して貰います。同じ街から通うのですから寄宿舎は必要ないでしょう」


「領都以外の街はどうする? 小さな町もあれば領都に匹敵する街もあるだろう」


「勉強を教える教師の数には限りがありますので、とりあえず勉強を教える体制を整えるだけにしましょう。一度にこの街の学校と同じ水準まで求めるのは酷です」


「それもそうか。それぞれの貴族領が今まで学校を運営しようとしなかったのが問題だ。王立であるこの街の学校に通いたいという生徒の気持ちもわかるが、そこは成績で振り分けさせて貰う」


「それについては来年以降、各領都の成績優秀者の中から合計で二十人程を転校生として認める事にすればいいでしょう」


 学校っていう学習の場を男爵や俺達だけで運営すること自体が間違ってるんだよな。自分の所の領地なんかを豊かにするための人材だぞ。


「今からだと教会で学校を春までに運営させるのは難しいだろう。小規模で学問を教える場だけ提供させるか」


「この春までに校舎を新設して学校を開設する場合は、俺が全額費用等を負担すると持ち掛けてください。色々問題はあるかもしれませんが、早めに動かすにはその方がいいでしょう」


「とりあえず百人程度の生徒を目標にさせればそこまで大きな校舎は必要ないしな。今日中に各教会に話を通しておこう」


「今年は仮校舎というか教会の一角でもいい。来年の春までに校舎が完成すれば費用は負担しますよ」


「ほぼすべての街で学校が開設されそうだな。問題は教育の質だが……」


「それはこれからそれぞれが考えてよくしていく事ですよ。何が一番大事かは、その町で暮らす人しかわかりませんし」


「それもそうだな。儂らが全部決めてしまうというのは行き過ぎておった。では、そういう方針で話を進めるぞ」


「後の事はとりあえずお任せします」


 その町の基幹産業の為の教育にするか、それとも新たな産業を取り込む為の学習の場にするか。それは当人にしか分からない。


 自分の住んでる街を良くしていくんだ。いろいろ考えて自分たちなりの正解を出して貰おう。


 新しい時代の息吹が確かに聞こえてくるようだ。それを邪魔するあいつらには早々に退場して貰わないとな。




読んでいただきましてありがとうございます。

誤字報告ありがとうございます。とても助かっています。

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